中国の明王朝が滅びる直前の1637年(崇禎10)に江西省奉新県出身の宋応星によって書かれた技術書。全3巻。農業にはじまり,珠玉の採取に終わっており,その間,兵器の一部を除いて,中国の伝統技術の全般にわたって記述している。明末の時代は江南を中心に産業が発展したが,こうした社会情勢を反映したものといえよう。著者は地方官として各地を遍歴し,その間の見聞に基づく実証的記述を行い,また多数の挿図によって読者の理解を助けている。日本でも江戸時代には広く読まれ,1771年(明和8)に和刻本が出た。これに反し中国では一時見失われ,1926年に和刻本が伝えられてから,にわかにその価値が認められた。ついで中国でも明版が発見され,多数の翻刻や研究書が出版されてきた。なお近年宋家の〈族譜〉が発見され,潘吉星の《明代科学家宋応星》はそれに基づいている。それによると宋応星は1587年(万暦15)に生まれ,没年は不明であるが,80歳ごろまで生存したという。
執筆者:藪内 清
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中国、明(みん)代末の産業技術書。1637年に宋応星(そうおうせい)が書いた。すでに伝来していた西洋の科学技術についての記載は、火器を除いてきわめて少なく、中国在来の産業技術が3巻18部門に分けて記載されている。食品生産関係、衣服、金属加工とその関連部門が大きな比重を占める。製陶の項には登窯(のぼりがま)の記載もある。兵器に1項をあて、とくに火器を取り上げたのは、ヨーロッパの影響と、明末の社会情勢の反映と思われる。この書は読者対象をインテリ層に置いているが、技術の指導書の役割もいくぶん意識し、現場に立ち会って得られたと思われる細かな注意を記しており、例外もあるが、全般に宋代以来顕著になった実証精神で貫かれている。中国では民国の初めに丁文江(ていぶんこう)が高く評価するまでこれを引用する書物は少なく、影響は小さかったが、江戸時代の日本に大きな影響を与えた。
[宮島一彦]
『藪内清訳注『天工開物』(1969・平凡社・東洋文庫)』
中国の代表的産業技術書。3編18巻。江西省奉新県の学者宋応星(そうおうせい)著。明末の1637年刊。中国在来の技術を穀類・衣服・染色・調製・製塩・製糖・製陶・鋳造・舟車・鍛造・焙焼・製油・製紙・製錬・兵器・朱墨・醸造・珠玉の18部門にわけて記載。当時の重要産業を網羅し,その生産過程も詳しくのべる。知識人層を対象にした啓蒙書で,実証的精神につらぬかれ,方術書や本草書の記述を批判。各部門の製造風景や過程を多数の図で解説しており,江戸時代の日本で多くの人々に愛読され,1771年(明和8)には木村蒹葭堂(けんかどう)本をもとに和刻本が出版された。
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明末の17世紀につくられた図版入りの産業関係技術書。宋応星(そうおうせい)の著作。3巻。古来の産業技術を18部門に分類して集大成したもの。多数の図版や巧みな技術解説は理解に便利。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…〈学問・技芸・工芸の(des sciences,des arts et des métiers)合理的事典〉という副題はその内容をよく示している。しかし,これより100年以上前に中国では宋応星が《天工開物》という詳細な技術誌を著していたことは注目されよう。 ヨーロッパで最初の技術史の書物はJ.ベックマンの《発明史》(1780‐1805,邦題《西洋事物起原》)で,個別的に古代からの文献を広く渉猟してまとめた事典である。…
※「天工開物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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