太陽スペクトル(読み)タイヨウスペクトル

化学辞典 第2版 「太陽スペクトル」の解説

太陽スペクトル
タイヨウスペクトル
solar spectrum

太陽光線のスペクトルは赤外から紫外に及ぶ連続スペクトルを示す.しかし,このなかのところどころに線吸収スペクトルとして光の欠けたところがある.これをフラウンホーファー線という.連続スペクトルの強度最大の波長 λm からウィーンの変位則によって計算すると,太陽表面の温度は5800 K となる.太陽表面も完全な黒体ではないから,実際の温度はこれよりやや高いと考えられる.一方,太陽の半径,それと地球の間の距離,地上における太陽定数からシュテファン-ボルツマンの法則にもとづき算出した太陽表面の温度は5700 K となり,よい一致を示している.キルヒホッフ放射法則から考えるとフラウンホーファー線の存在は,太陽光線を放射した諸元素が表面部よりはやや温度の低いガス状のものとなって太陽表面の周辺をとりまいており,表面から放射されてくる光を吸収してしまっていることを示す.したがって,これらから太陽にはHがもっとも多く,He,N,Neがこれにつぎ,Fe,Mg,Na,K,Caなどの金属元素も含まれていることがわかる.大気上層に存在するオゾンによる吸収のため,地表面に到達する太陽光線の短波長限界は約300 nm である.[別用語参照]オゾン層

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太陽スペクトル」の意味・わかりやすい解説

太陽スペクトル
たいようスペクトル
solar spectrum

太陽の光を,分光器を通して見たときにできる色の帯。スリットプリズムを通して得る太陽のスペクトルは,赤からすみれ色にいたる連続スペクトルで,これは光球表面からの熱放射である。これを背景に,フラウンホーファー線と呼ばれる無数の細い暗線が走っているが,これは太陽および地球の大気の吸収によるもので,地球大気による吸収線のほうは太陽スペクトルには属さない。太陽大気による吸収のうちでは,電離カルシウムによるH線およびK線が最も強く,その他水素,マグネシウムナトリウムなどの吸収が目立つ。総数は2万本以上に達し,その分析によって,太陽大気成分が分析できる。

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世界大百科事典 第2版 「太陽スペクトル」の意味・わかりやすい解説

たいようスペクトル【太陽スペクトル solar spectrum】

太陽の発する光を分光器にかけて7色に分けたとき得られる光の分布をいう。広義には,太陽は光のみでなくX線から電波に至る電磁波を放射しているので,それらを波長に分けた分布をいう。可視光線で太陽のスペクトルをくわしく調べたのはニュートンで1666年のことであった。太陽の可視域のスペクトルは図1に示すように温度約6000Kの黒体放射に近い。強度がもっとも強いのは青から緑色の0.44~0.5μmの波長間であるが,強度が1/2になる波長は0.35μmと0.84μm,また強度が1/10になる波長は0.27μmと1.7μmである。

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