女房(読み)ニョウボウ

デジタル大辞泉 「女房」の意味・読み・例文・類語

にょう‐ぼう〔‐バウ〕【女房】

2原義
妻のこと。多く、夫が自分の妻をさしていう。にょうぼ。「女房に頭があがらない」「恋女房」「世話女房
女官の部屋。また、朝廷に仕える女官で、一人住みの部屋を与えられた者。出身の階級により、上﨟じょうろう中﨟下﨟に大別される。
「―の曹司には、廊の廻りにしたるをなむ割りつつ給へりける」〈宇津保藤原の君〉
貴族の家に仕える侍女
「かのふる里は―などの悲しびに堪へず、泣き惑ひ侍らむに」〈夕顔
中世近世、一般に女性、また、愛情の対象としての女性のこと。
「あひそめし―に、はらるれば、せく心出き」〈難波物語
[類語]つま家内細君かみさんワイフかかあ山の神さいベターハーフ押し掛け女房姉さん女房世話女房恋女房思い妻糟糠の妻愛妻良妻賢妻悪妻

にゅう‐ぼう〔ニウバウ〕【女房】

にょうぼう」に同じ。
「三十余人の―たちを始めとして」〈仮・恨の介・上〉
[補説]「にゅうぼう」と書いて「にょうぼう」の発音を表したもの。

にょう‐ぼ【女房】

にょうぼう」の音変化。

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精選版 日本国語大辞典 「女房」の意味・読み・例文・類語

にょう‐ぼう‥バウ【女房】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「房」は部屋(へや)の意 )
  2. 女官のへや。女官の曹司。また、朝廷に仕える女官で、一人住みの房を与えられている者をいう。身分や出身により上臈(じょうろう)、中臈、下臈に分けられて、宮中の雑事をつかさどる。また、院、諸宮、公家、武家などに仕える女、さらには、一般に侍女をもいう。
    1. [初出の実例]「廿貫、以十貫男方、十貫給女房」(出典:小右記‐寛和元年(985)四月三〇日)
  3. 中世、近世、一般に婦人、または愛情の対象としての女性をいう。女。
    1. [初出の実例]「青ばみたる衣着たる女房の裾取たるが、只独り立たりければ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二七)
  4. 中世以後、妻をいう。妻女。近世には、自分の妻を呼ぶとき「女房ども」ともいう。現代では、多少とも卑しめた気持をもっていい、自分の妻のことをいう場合に多く用いられる。
    1. [初出の実例]「光寂坊の女房并に殿人・資財・雑具、併ら可給候」(出典:米沢本沙石集(1283)七)
  5. 宮廷または摂関家の歌合(うたあわせ)などで、天皇や上皇、摂政関白などが、身分を隠すために歌に作者名として記す語。判者が気がねなく勝負の判をすることができるように、女房の作とする。
    1. [初出の実例]「二番 左〈略〉女房」(出典:類従本元永元年十月二日内大臣忠通歌合(1118))

女房の補助注記

( 1 )「にょうぼう」から変化した語に、「にょうぼ」がある。また、「ねうばう」「にうばう(にうぼう)」と表記されたものも見られ、それは一般には「にょうぼう」と読まれたものと考えられているが、「にうばう」は便宜別項とした。→にゅうぼう
( 2 )読みの明らかでない例は本項にまとめた。


にゅう‐ぼうニウバウ【女房】

  1. 〘 名詞 〙 「にょうぼう(女房)」の変化した語。→「にょうぼう(女房)」の補注。
    1. [初出の実例]「にうばうなどにも、四五人よりほかはみえ侍らねば」(出典:とりかへばや物語(12C後)中)

女房の補助注記

本項の複合語は便宜、「にょうぼう」の複合語に合わせた。


にょう‐ぼ【女房】

  1. 〘 名詞 〙 「にょうぼう(女房)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「節季に払の心あて違へば、女房(にょうボ)が髪おしみだし」(出典:談義本当世下手談義(1752)一)

女房の補助注記

本項の複合語は便宜「にょうぼう」の複合語に合わせた。


にょ‐ぼう‥バウ【女房】

  1. 〘 名詞 〙にょうぼう(女房)〔明応本節用集(1496)〕

女房の補助注記

本項の複合語は便宜「にょうぼう」の複合語に合わせた。

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改訂新版 世界大百科事典 「女房」の意味・わかりやすい解説

女房 (にょうぼう)

宮中に房すなわち部屋を与えられた上級女官の総称で,平安中期以降一般化した呼称。上皇以下諸院宮や摂関以下貴族の家に仕える女性も,上級の者は女房と称された。順徳天皇撰の《禁秘抄》などによれば,宮中の女房は,役職や出身によって上﨟・小上﨟・中﨟・下﨟に分けられ,上﨟は二位・三位の典侍(ないしのすけ)(尚侍(ないしのかみ)は事実上消滅)や大臣の女など,小上﨟は公卿の女,中﨟は掌侍・命婦(みようぶ)で殿上人・諸大夫の女,下﨟は侍や神官などの女であり,これらの区別により服装や職務に差が設けられた。また女房は本名をもってよばれず,官名や国名などをつけてよばれたが,それにも上記の身分に応じて差があった。すなわち大納言・左衛門督などは上﨟,中将・少納言などは小上﨟や中﨟,伊予・播磨などの国名は中﨟や下﨟のよび名で,これらは父や夫などの官名にちなむ場合もある。なお一条,近衛,春日など京の路による小路名は,内裏では用いられず,院や摂関家などの上﨟の女房につけられたものである。
女房言葉 →女房奉書
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百科事典マイペディア 「女房」の意味・わかりやすい解説

女房【にょうぼう】

女官(にょかん)の部屋。また,独立の部屋((つぼね))を与えられた高級女官。上臈(じょうろう)・小上臈・中臈・下臈の区別がある。本名で呼ばず,式部(しきぶ)・伊勢など官名・国名で呼んだ。また,貴族や将軍家に仕える女性の上級者の称で,北の方・春日局(かすがのつぼね)など方角や京の街路名で呼んだ。平安時代から十二単(じゅうにひとえ)のような女房装束を正装とし,鎌倉時代から女房奉書が,室町時代から女房言葉(女房詞)が始まった。
→関連項目竹むきが記たまきはる物語音読論

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「女房」の意味・わかりやすい解説

女房
にょうぼう

房は曹司(ぞうし)(部屋)、すなわち部屋を与えられて貴人に仕える女性。平安中期以後、内侍(ないし)や命婦(みょうぶ)など上級の女官や、院宮・上流貴族に仕える侍女を称する。それに対して蔵人(くろうど)や院宮等の侍臣に用いる「男房(なんぼう)」の語もある。公的地位をもつ女房はもちろん「女官(にょかん)」であるが、この称は女房以下の下級女官のみをさす場合もあった。女房は父・兄弟・夫などの官名にちなんだ「女房名」(伊勢(いせ)、清少納言(せいしょうなごん)など)でよばれるのが通例で、公式の任官や叙位等の記録がない限りほとんど本名は確認できない。『禁秘(きんぴ)抄』には宮中の女房の家柄による品格(上﨟(じょうろう)・小(こ)上﨟・中﨟・下﨟)を記している。なお後世「女房」の語は一般的に妻女をさして用いられるようになった。

[黒板伸夫]

『角田文衛著『日本の後宮』(1973・学燈社)』『須田春子著『平安時代後宮及び女司の研究』(1982・千代田書房)』『浅井虎夫著、所京子校訂『新訂女官通解』(講談社学術文庫)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「女房」の解説

女房
にょうぼう

宮中に部屋を与えられた女官の総称。院宮や上級貴族の家に仕える女性も女房と称した。宮中女房は出身の身分や女官の役職で,大上臈(おおじょうろう)(親王・摂関の女,尚蔵・尚侍)・上臈(大臣の女,二位・三位の典侍)・小上臈(公卿の女)・中臈(殿上人・諸大夫の女,掌侍・命婦(みょうぶ))・下臈(侍・神官の女)の品格に分類され,服装や職務が区別された。出仕にあたっては本名ではなく,品格により大納言以下の官名による召名(めしな),陸奥や常陸などの国名,鶴・亀などの候名(さぶらいな)でよばれた。これは父や夫などの官名や任国に由来する場合が多い。院や摂関家の女房の場合は,京の路に由来する殿名・小路名でよばれる場合もあった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女房」の意味・わかりやすい解説

女房
にょうぼう

もと女官 (にょかん) の個室の意。宮中,院などに仕え,部屋を与えられた高級の女官。上臈 (じょうろう) ,中臈,下臈の3種があり,また一般の貴族に仕える女性をもさした。武家言葉として,女,妻,内儀と同義に用いられて今日に及んでいる。

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