私立学校の設置を目的として設立された法人であり、私立学校法(昭和24年法律第270号)第3章に詳細な規定がある。
現行制度においては、学校を設置できるのは国と地方公共団体以外は、原則として学校法人のみに限られている(学校教育法2条)。学校は、青少年の教育という公共性の高い重要な仕事を行う機関であり、個人の幸福のみならず、国家社会の発展にかかわるものであるからである。したがって、学校法人は、安定した基盤をもつとともに、その組織・運営においても公共性、教育性を十分に反映できるものでなければならない。そこで、学校法人には、役員として理事5人以上と監事2人以上を置くが、理事のなかには校長1人以上を加えて教育現場の意思を反映させるとともに、役員が同族によって独占されることを禁じ、さらに、諮問機関として評議員会を設置して、重要事項についてはその意見を聞くことを理事長に義務づけている。
また、専修学校ないし各種学校のみの設置を目的とした学校法人も認められ(私立学校法64条4項)、準学校法人とよばれている。専修学校専門課程への進学率は高い水準を示しており(2009年度で20.4%。ちなみに短期大学は6.0%)、この法人にも注目する必要がある。なお、規制緩和・民営化の動向のなかで、文部科学省は学校法人の学校設置要件を緩和する方策をとっている。
関連して、国立大学法人に目を向けておく。2003年(平成15)に国立大学法人法が成立、2004年度から国立大学法人が発足し、特色ある大学づくりに向けて自主的、積極的な大学運営を進めている。役員として学長、理事(定数は大学規模により法定。副学長として教育、学生、研究、国際交流、広報等の業務を担当)、監事(2名)が置かれ、このもとに経営協議会(委員の半数以上は学外者)と教育研究評議会が組織され、中期目標・計画(6年)を策定し、全学的にその実現に努め、文部科学省等の評価を受け、その結果によって運営費交付金が左右されるようになる。また、2003年には地方独立行政法人法が制定され、公立大学は2005年度以降の任意の時期に法人化できることとなった。なお、前述の学校教育法第2条の定める学校の設置形態では、前者は国、後者は地方公共団体という範疇(はんちゅう)に入る。
[津布楽喜代治]
『山口善久著『学校法人の寄付金と学校債』平成9年改訂版(1997・学校法人経理研究会)』▽『佐々木毅著『知識基盤社会と大学の挑戦――国立大学法人化を超えて』(2006・東京大学出版会)』▽『日本私立大学連盟編『私立大学マネジメント』(2009・東信堂)』▽『実藤秀志著『学校法人ハンドブック』第5訂版(2009・税務経理協会)』▽『小野元之著『私立学校法講座』(2009・学校経理研究会)』▽『高橋寛人著『20世紀日本の公立大学』(2009・日本図書センター)』▽『鈴木勲編著『逐条学校教育法』第7次改訂版(2009・学陽書房)』▽『私学法令研究会監修『私学必携』第14次改訂第2版(2010・第一法規)』▽『日本公認会計士協会編『学校法人会計要覧』各年版(霞出版社)』
私立学校法(1949)にもとづいて私立学校を設置し経営する主体として認められた特殊法人。私立学校の法律上の権利・義務関係を代表する組織。戦前の私立学校は民法上の財団法人が経営しており,役員が特定の同族に独占されたり,少数役員の専断に陥ったりすることも多かった。戦後はこの私的性格が反省され,私立学校をより民主的で公共的性格の強い教育機関とするために,まったく新しい経営組織として設置された法人である。この法人組織の特徴は,(1)理事5人以上,監事2人以上の役員定数の規定,(2)学校長の理事就任,(3)3親等以内の親族役員数の制限,(4)教職員・卒業生を加えた評議員会(諮問・審議機関)の必置,(5)解散した学校法人の財産帰属の限定(学校法人その他教育事業を行う者),(6)財政基盤を強めるための収益事業の承認などで,公共的性格を強めている。国・地方自治体は法律にもとづき,私学振興の立場から学校法人に対して私学助成を行っている。
→私立学校
執筆者:大沢 勝
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私立学校(日本)を設置・運営する主体。学校教育法によれば,学校は国,地方公共団体および学校法人のみが設置できるとされており(特別措置としての株式会社立を除く),学校法人はその設置者の一つである。学校法人を設立しようとする者は,法人の根本規則としての「寄附行為」において目的,名称,設置する学校の種類・名称等所定の事項を定めた上,所轄庁(学校の種類により,文部科学大臣または都道府県知事)の認可を受けなければならない。学校法人は役員として理事5人以上,監事2人以上を置かなければならず,公共性を高めるために配偶者や親族からの役員就任数に制限がある。業務は理事によって組織される理事会によって行われ,寄附行為に別段の定めがない場合には理事の過半数をもって決定される。当該学校法人が設置する学校の校長(学長を含む)は私立学校法の規定により,必ず理事となり,ほかの理事は寄附行為によって選任される。理事会のほか,学校法人には私立学校法の定めるところにより,評議員会が置かれる。なお学校法人は,法律に定める一定の事由が発生した時,解散によってその活動を終了する。
著者: 山本眞一
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…私学ともいう。現行学校制度では,私立学校法(1949)に基づく学校法人が設置した学校を指す。
[歴史と伝統]
空海の綜芸種智院(しゆげいしゆちいん)(828)は日本の私学の原点とみられる。…
※「学校法人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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