安政五ヵ国条約(読み)あんせいごかこくじょうやく

百科事典マイペディア 「安政五ヵ国条約」の意味・わかりやすい解説

安政五ヵ国条約【あんせいごかこくじょうやく】

1858年(安政5年),幕府が米国,オランダロシア,英国,フランスの5ヵ国と結んだ修好通商条約。日米条約(日米修好通商条約)を皮切りにオランダ,ロシア,英,フランスと順次締結。鎖国体制を堅持していた日本は,資本主義世界市場の一環に組みこまれた。一連の条約は勅許を得ずに調印されたので(条約勅許問題),安政仮条約ともいう。各条約は自由貿易骨子として開港を規定,関税率協定制度,領事裁判権,片務的最恵国待遇の3条項は清がロシア,米国,英国,フランスと結んだ天津条約にも盛り込まれた不平等なもので,のちの条約改正まで撤廃されなかった。翌年から貿易が開始されると物価騰貴おこり尊攘派による攘夷運動や幕政批判が激しくなった。→開国五品江戸廻令
→関連項目永代借地権神奈川奉行居留地ハリス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安政五ヵ国条約」の意味・わかりやすい解説

安政五ヵ国条約
あんせいごかこくじょうやく

安政仮条約ともいう。安政5 (1858) 年,江戸幕府が,アメリカイギリス,フランス,オランダ,ロシアの5ヵ国との間に締結した修好通商条約。ペリー来航後,アメリカ総領事 T.ハリスのきびしい督促と,朝廷を中心とする尊王攘夷運動圧力との板ばさみになった幕府は苦慮の末,大老井伊直弼専断をもって,勅許を待たずに調印を断行した。まず,同年6月 19日アメリカとの間で外国奉行井上清直,同岩瀬忠震全権として,横浜沖の米艦『ポーハタン』号上で調印。次いで同年7月 10日オランダ理事官 J.ドンケル・クルチウス,7月 11日ロシア使節 E.プチャーチン,7月 18日イギリス使節 J.エルギン,9月3日フランス使節 J.グロとの間に,それぞれ同様な修好通商条約が調印された。条約の大要は次のとおりである。 (1) 江戸に駐在代表をおくこと。 (2) 下田,箱館,長崎,新潟,兵庫の5港を開港し,江戸,大坂を開市とし,それぞれ駐在領事をおくこと。 (3) 開港場における外国人の遊歩規程。 (4) 信教の自由を尊重し合うこと。 (5) 輸出,輸入に制限を設けないこと,など。特に,領事裁判権が規定され,関税率の自主的改定権が日本側にないことなどから,この条約は日本の主権を毀損する不平等条約であったといえよう。条約の発効は翌同6年6月5日とされている。この条約締結の結果,尊王攘夷運動が激化し,それが安政の大獄,井伊の暗殺を招くにいたった。慶応1 (65) 年 10月各国公使の圧力のもとに勅許。明治維新後,この条約を改正するため,日本政府は全力をあげたが,その成功は日露戦争後に待たねばならなかった。

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世界大百科事典 第2版 「安政五ヵ国条約」の意味・わかりやすい解説

あんせいごかこくじょうやく【安政五ヵ国条約】

1858年(安政5),幕府が,アメリカ,オランダ,ロシア,イギリス,フランスの5ヵ国と結んだ修好通商条約。58年7月29日(安政5年6月19日),神奈川でアメリカ総領事ハリスと幕府の全権井上清直・岩瀬忠震(ただなり)とが調印した日米条約(日米修好通商条約)を最初として,日蘭条約は8月18日(7月10日),日露条約は8月19日(7月11日),日英条約は8月26日(7月18日),日仏条約は10月9日(9月3日)に調印がおこなわれた。

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世界大百科事典内の安政五ヵ国条約の言及

【開国】より

…この条約は,天皇の勅許を待つということでその調印をひきのばしていた幕府が,第2次アヘン戦争(アロー戦争)で中国(清朝)を屈服させたイギリス,フランスの大艦隊がそのまま日本に転進して新条約の締結をせまるという情報をハリスからうけて,勅許を待たずにあわてて調印にふみきったものであり,ひきつづき幕府は同年中に,オランダ,ロシア,イギリス,フランスとも同様な修好通商条約の締結を余儀なくされた。これらのいわゆる安政五ヵ国条約では,外交関係のみならず締結各国との自由な通商貿易も規定され,ここに日本の開国は最終的に確定したのである。 これらの条約で日本は,まず首都(江戸)に公使を,開港場に領事を駐在させ,彼ら各国外交代表の職務上の国内旅行権を承認した。…

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