安東 次男(読み)アンドウ ツグオ

20世紀日本人名事典 「安東 次男」の解説

安東 次男
アンドウ ツグオ

昭和・平成期の詩人,俳人,批評家



生年
大正8(1919)年7月7日

没年
平成14(2002)年4月9日

出生地
岡山県苫田郡東苫田村沼(現・津山市)

別名
号=流火

学歴〔年〕
東京帝国大学経済学科〔昭和17年9月〕卒

主な受賞名〔年〕
読売文学賞(評論・伝記賞 第14回)〔昭和37年〕「澱河歌の周辺」,歴程賞(第14回)〔昭和51年〕「安東次男著作集」,芸術選奨文部大臣賞(第41回)〔平成3年〕「風狂余韻」,詩歌文学館賞(第12回)〔平成9年〕「流」,勲四等旭日小綬章〔平成13年〕

経歴
終戦まで海軍兵役についた。大学在学中、加藤楸邨について俳句を学び、「寒雷」に投句。昭和21年金子兜太らと句誌「風」を創刊。24年詩誌第二次「コスモス」に参加し、25年第一詩集「六月のみどりの夜わ」を刊行。以来、詩人として卓越した資質を広く認められる。41〜57年東京外国語大学教授。フランス文学の翻訳・紹介を手掛けるが、37年頃から古典和歌ならびに俳諧評釈に力を注ぎ、比較文化及び解釈学に新境地を開いた。詩集に「蘭」「CALENDRIER」「人それを呼んで反歌という」「死者の書」、句集に「裏山」「昨(きそ)」「花筧」「流」、詩批評・研究書に「澱河歌の周辺」「芭蕉」「百人一首」「風狂余韻」「与謝蕪村」「藤原定家」「花づとめ」「時分の花」「連句入門―蕉風誹諧の構造」「芭蕉七部集評釈」「風狂始末(正・続)」「芭蕉百五十句」、古美術随筆に「拾遺亦楽」「骨董流転」、翻訳に「エリュアール詩集」など。他に「安東次男著作集」(全8巻 青土社)がある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安東 次男」の意味・わかりやすい解説

安東次男
あんどうつぐお

[生]1919.7.7. 岡山,津山
[没]2002.4.9. 東京,大田
詩人,評論家。旧制第三高等学校を経て東京帝国大学経済学部を卒業。学生時代から加藤楸邨に師事して俳句を学ぶ。1950年『六月のみどりの夜わ』,1951年『蘭』の 2冊の詩集を刊行,思想的にも技法的にも前衛的な詩風により,第2次世界大戦後詩人としての地位を確立した。また,活発な評論活動,フランス文学の翻訳,紹介などを通じ,戦後詩の展開に重大な役割を果たした。駒井哲郎の銅版画との共同作業により 2冊の詩画集,『CALENDRIER』(1960),『人それを呼んで反歌という』(1966)を刊行,詩人としてその成熟を示した。その間,1962年刊の『澱河歌の周辺』(読売文学賞)により与謝蕪村解釈に新生面を開いていたが,後半生は詩作をやめ,古典評釈に心血を注ぎ,正続『芭蕉七部集評釈』(1974,1978)を刊行しながら,これらを絶版として全面的に評釈しなおし,正続『風狂始末』(1986,1989)などを刊行,数々の独創的な見解を発表した(→松尾芭蕉)。また,流火草堂と号して,句作に関心を向け,句集『花筧』(1992),『流』(1996)などを刊行した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安東 次男」の意味・わかりやすい解説

安東次男
あんどうつぐお
(1919―2002)

詩人、評論家。岡山県に生まれる。東京帝国大学経済学部卒業。在学中、加藤楸邨(しゅうそん)に俳句を学ぶ。1946年(昭和21)沢木欣一(きんいち)らと句誌『風』を創刊したが、1949年詩誌『コスモス』に参加、詩集『六月のみどりの夜わ』(1950)、『蘭(らん)』(1951)に鋭い政治意識と前衛的な詩法とを融合させた。ほかに駒井哲郎(こまいてつろう)との詩画集『CALENDRIER』(1960)などがある。以後、評論に力点を移し、『幻視者の文学』(1960)、『澱河歌(でんがか)の周辺』(1962。読売文学賞受賞)、『芭蕉(ばしょう)七部集評釈』(1973)などを刊行した。1966~1982年東京外国語大学教授。連句、俳句に関しては『連句入門』(1981)、大岡信(まこと)と共編の『現代俳句』(1990)、『連句の読み方』(2000)などがある。

[飛高隆夫]

『『安東次男詩集』(1970・思潮社)』『『安東次男著作集』全8巻(1975~1977・青土社)』『『鑑賞日本現代文学33 現代俳句』(1990・角川書店)』『『連句の読み方』(2000・思潮社)』『『連句入門』(講談社学術文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「安東 次男」の解説

安東次男 あんどう-つぐお

1919-2002 昭和-平成時代の俳人,詩人,評論家。
大正8年7月7日生まれ。加藤楸邨(しゅうそん)に俳句をまなび,昭和21年金子兜太(とうた)らと句誌「風」を創刊。24年秋山清らの詩誌「コスモス」に参加,25年「六月のみどりの夜は」,26年「蘭」を発表,戦後詩人としてみとめられる。38年「澱河歌(でんがか)の周辺」で読売文学賞。平成3年「風狂余韻」で芸術選奨。著作はほかに「芭蕉七部集評釈」など。41-57年東京外大教授。平成14年4月9日死去。82歳。岡山県出身。東京帝大卒。俳号は流火。

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