あん‐ねん【安然】
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日葡辞書(1603‐04)「Annen
(アンネン)〈訳〉内面的な平穏、安心。文書語」 〔
晉書‐簡文帝紀〕
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デジタル大辞泉
「安然」の意味・読み・例文・類語
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安然
あんねん
(841―915?)
平安中期の天台僧。最澄(さいちょう)の苗裔(びょうえい)。生地は出羽(でわ)(山形・秋田県)とも相模(さがみ)(神奈川県)ともいわれるが近江(おうみ)(滋賀県)の人か。慈覚(じかく)大師円仁(えんにん)、遍昭(へんじょう)僧正などより顕密の秘法を受け、884年(元慶8)元慶寺座主(がんぎょうじざす)となる。晩年は叡山(えいざん)五大院に住したので五大院先徳と称され、また阿覚(あかく)大師とも称される。示寂地にも諸説あり、餓死したともいわれる。『教時諍論(きょうじじょうろん)』2巻、『教時問答』4巻、『悉曇蔵(しったんぞう)』8巻、『普通授菩薩戒(ぼさつかい)広釈』3巻など100余部を著し、円仁、円珍の後を受けて天台密教を体系化し、真言宗の東密(とうみつ)に対する台密(たいみつ)を大成した。
[中尾良信 2017年5月19日]
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安然
没年:没年不詳(没年不詳)
生年:承和8(841)
平安初期の天台宗の僧,天台密教の大成者。一説に延喜1(901)年頃没。五大院大徳,後世に阿覚大師と尊称される。近江国(滋賀県)の人,最澄の俗系とも伝える。幼時に叡山に登り,円仁の弟子となって顕密を学び,のちに道海,長意,湛契(高向公輔)から三部大法(胎蔵界,金剛界,蘇悉地)を受け,悉曇を学び,元慶寺の遍昭のもとで研鑽をつんだ。入唐求法を志し,貞観19(877)年食糧と駅馬を給されて大宰府に向かったが果たせなかった。元慶8(884)年遍昭が朝廷に願い出て,元慶寺に伝法阿闍梨位が置かれることになり,惟首と共に任じられて密教を教授している。以後の安然は,叡山五大院を住房として,伝法と著作活動に専念したらしい。円仁,円珍の天台宗密教化を推し進めて,大日如来を諸仏菩薩の最高位に置き,一切の教法は真言の一教に摂取され,天台宗も包括されると説き,さらに空海の「十住心論」「顕密論」および諸宗の教学を論破して,台密を優位に置き,天台宗における密教の位置を明確にして教学体系を完成させた。入寂の地は叡山西塔,近江国近松寺,出羽国(山形県)立石寺,時沢などの諸説があって確定しない。<著作>『悉曇蔵』『教時問答』『菩提心義抄』<参考文献>虎関師錬『元亨釈書』,『園城寺伝記』,橋本進吉「安然和尚事蹟考」(『史学雑誌』20編8号),上杉文秀『日本天台史』
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安然【あんねん】
五大院大徳,密教大師とも。近江(おうみ)の人。最澄(さいちょう)と同姓の出身という。円仁(えんにん),遍昭(へんじょう),円珍(えんちん)について天台宗の密教を学び,その教義の大成に努力,台密(たいみつ)教学を完成させた。入唐(にっとう)を志したが不成功。元慶(がんぎょう)寺に住した。著書《教時問答》《菩提(ぼだい)心義抄》《悉曇蔵(しったんぞう)》《八家秘録》など。
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あんねん【安然】
841(承和8)‐?
平安前期の天台宗の僧。天台密教(台密)の大成者。五大院先徳,後世阿覚大師と尊称される。近江国の人。最澄の俗系とも伝える。幼時に叡山にのぼり,円仁の弟子となって顕密を学び,後に道海,長意,湛契(高向公輔)から三部大法(胎蔵界,金剛界,蘇悉地)を受け,悉曇(しつたん)を学んだ。入唐求法を志し,877年(元慶1)官符が下されて大宰府に行くための食料と駅馬が給されたが,入唐は果たされなかった。882年遍昭について受法し,884年遍昭の奏請で伝法阿闍梨(あじやり)が置かれることになり,門弟の中から惟首,安然の2名が任じられた。
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安然 あんねん
841-? 平安時代前期-中期の僧。
承和(じょうわ)8年生まれ。天台宗。近江(おうみ)(滋賀県)の人。最澄の同族。比叡(ひえい)山の円仁(えんにん)に師事,のち元慶(がんぎょう)寺の遍昭(へんじょう)にまなぶ。元慶8年元慶寺座主,伝法阿闍梨(あじゃり)。天台密教の教義を大成した。没年は延喜(えんぎ)15年(915)ごろともいわれる。通称は五大院大徳,阿覚大師。著作に「悉曇(しったん)蔵」「教時諍論(じょうろん)」など。
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普及版 字通
「安然」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の安然の言及
【悉曇蔵】より
…平安時代の僧,安然の著で,日本における古代悉曇学の集大成。8巻。…
【密教】より
…この課題は,弟子の慈覚大師円仁,智証大師円珍らに継承され,彼らは相次いで入唐して組織的な密教を将来した。安然(あんねん)は,天台系の密教の大成者といわれる。天台系の密教は,両部に《蘇悉地経》を加えた三部の相承を基本とする点を特色とし,東密に対して台密と呼ばれる。…
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