精選版 日本国語大辞典 「宗教哲学」の意味・読み・例文・類語
しゅうきょう‐てつがく シュウケウ‥【宗教哲学】
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宗教の本質や意義を哲学の方法で究明し、宗教の真理性を哲学的に基礎づける学問。歴史や社会に現れた諸宗教現象を実証科学の立場で研究する宗教学や、特定の宗教内部でその宗教の教義や教典を検討する神学・教学などとは異なる。
古代ギリシアに始まった哲学は、一般に、人間の経験しうる現象世界を、経験を超えた形而上(けいじじょう)学的理念から説明しようとする試みであった。宗教が人間の感覚的、悟性的な経験を超え出た彼岸や神への通路を開くものとすれば、プラトンやアリストテレスをはじめとする古代哲学においては、哲学そのものが一種の宗教哲学であったといえる。また、キリスト教の神学を形成するにあずかったアウグスティヌス、トマス・アクィナスらの中世の教父哲学やスコラ哲学は、文字どおり宗教哲学を中核に据えた哲学であった。
しかし、近世に至って人間の理性に十全の信頼を置く合理主義の哲学が登場すると、哲学における宗教性の剥奪(はくだつ)の傾向が強まり、宗教哲学は改めてその存立が問われることになる。したがって、厳密な意味で宗教哲学が自覚的に哲学の一分野として確立されるに至ったのは、カントとそれ以降のドイツ観念論の哲学においてであった。
カントは、人間の理性に知的・理論的認識を超えた働きをも認め、道徳の場で働く善意志の実践理性に宗教の根拠を置く。ヘーゲルは、論理学や自然哲学から区別される精神哲学のなかの最高部門に宗教哲学を位置づけつつ、絶対精神の世界支配的展開を叙述する哲学の全体系は絶対的宗教として完成するという汎神論(はんしんろん)的宗教哲学を語った。
今日では、あくまでも哲学の立場から宗教一般の真理性を基礎づけようとするジェームズやヤスパースのような宗教哲学が説かれる一方で、キリスト教の啓示信仰を容認しながらこれにかなった哲学的思考を展開する宗教哲学が有力である。そのような宗教哲学者としては、人間の絶対的依存感情に宗教の本質を求めるシュライエルマハー、人間の根源的な不安と絶望を暴いて逆説の神に救いを求めるキルケゴール、歴史の相対性を神の絶対性で克服するトレルチ、科学の進展を終末論と結び付けて理解するテイヤール・ド・シャルダン、諸文化の底を流れる究極的関心を介して存在の根拠へ帰るティリヒなどをあげることができる。ユダヤ教徒のブーバーの対話原理に基づく宗教哲学も影響力が大きい。
[柏原啓一]
『波多野精一著『宗教哲学』(1935・岩波書店)』▽『藤田富雄著『宗教哲学』(1966・大明堂)』▽『J・ヒック著、間瀬啓允訳『宗教の哲学』(1968・培風館)』▽『P・ティリッヒ著、柳生望訳『宗教哲学入門』(1971・荒地出版社)』
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…ところが,とくにヨーロッパにおいて16世紀の宗教改革,17世紀の自然科学の興隆や近世哲学の展開にともない,宗教の本来のあり方を理性の光に照らして体系化しようとする動きがおこった。そこから生じた研究の流派を宗教哲学(たとえばI.カント)といい,さきの神学が一般に護教的であるのに対して,合理的で批判的な立場を鮮明にした。一方,15~16世紀のいわゆる大航海時代以降,世界の各地にさまざまな宗教の存在することが見いだされ,そこから諸宗教を比較研究する方法があらわれた。…
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