宰相(読み)さいしょう

精選版 日本国語大辞典 「宰相」の意味・読み・例文・類語

さい‐しょう ‥シャウ【宰相】

〘名〙 (「宰」はつかさ、「相」は助ける意)
① 古代中国で、天子を助けて政治を行なった官。丞相(じょうしょう)宰輔(さいほ)。さいそう。
※東海一漚別集(1375頃)洞春庵別源禅師定光塔銘「魏国公之於大慧。以宰相位銘」 〔漢書‐平当伝〕
参議②の唐名。〔続日本紀‐神亀五年(728)〕
源氏(1001‐14頃)紅葉賀「源氏の君宰相になり給ひぬ」
総理大臣首相。また、内閣の諸大臣。
※海外新聞別集(1862)下「海軍事務宰相カッテンデイキ立派なる晩食を設け、日本使節を招きたり」
※西洋聞見録(1869‐71)〈村田文夫〉前「国王平日宰相 ミニストル輔佐に依て」

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デジタル大辞泉 「宰相」の意味・読み・例文・類語

さい‐しょう〔‐シヤウ〕【宰相】

総理大臣。首相。「一国宰相」「平民宰相
古く中国で、天子を補佐して政治を行った官。丞相じょうしょう
参議唐名
[類語]内閣総理大臣総理大臣総理首相

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宰相」の意味・わかりやすい解説

宰相
さいしょう

旧中国の官職。天子を助けて政治を行う最高の行政首長をいい、内閣総理大臣に相当する。ただし1人とは限らず、数人に及ぶこともある。宰相という名は、上古の天子側近の奴隷の長である料理番の類に由来するといわれるが、歴代その名を異にし、一王朝でもしばしば変更される。ごく大まかにいえば、前漢では丞相(じょうしょう)、太尉(たいい)、御史大夫(ぎょしたいふ)、後漢(ごかん)では太尉、司徒、司空で、これを三公という。唐の制では尚書令、またはこれにかわる左(さ)・右僕射(うぼくや)と、中書令、門下侍中であるが、のちに同中書門下平章事、略して同平章事が宰相の任となり、北宋(ほくそう)まで続いた。南宋(なんそう)では左・右丞相、明(みん)から清(しん)初までは内閣大学士で、清の雍正帝(ようせいてい)時代から軍機処大臣がこれにかわった。

 なお、日本では参議の唐名として使われ、現在は総理大臣の異称として使われることがある。

[宮崎市定]

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普及版 字通 「宰相」の読み・字形・画数・意味

【宰相】さいしよう(しやう)

百官の長。天子を輔佐する職。〔史記、陳丞相世家〕宰相は、上は天子を佐(たす)け、陰陽を理(をさ)め、四時を順にし、下は物の宜しきを(やしな)ひ、~は百姓を親附し、大夫をして各其のに任(た)ふるを得しむ。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「宰相」の解説

宰相(さいしょう)

中国における中央政府の最高責任者で,皇帝を輔佐するもの。このような大官の歴朝の呼称が同一でないため,便宜上宰相という。唐代には,尚書,門下(もんか),中書の三省の長官(尚書令,侍中(じちゅう),中書令)が宰相の職務を遂行した。ただ,尚書令は太宗が就任していたため任命されず,左右の僕射(ぼくや)が実質的な長官であった。唐代中期,中書省門下省とを合わせて同中書門下平章事(どうちゅうしょもんかへいしょうじ)を置き,これを宰相の任として,以後北宋中期まで続いた。北宋の神宗(しんそう)は官制を改め,唐の三省を復活,門下侍郎兼左僕射と中書侍郎右僕射の2名を宰相とした。南宋ではこれをさらに左右の丞相(じょうしょう)と改称し,元代にも引き継がれていく。

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旺文社世界史事典 三訂版 「宰相」の解説

宰相
さいしょう

中国で天子を補佐し,国務を総理する者の呼称
たとえば秦は相国,漢は相国・左右丞相 (じようしよう) を宰相とした。唐は中書・門下・尚書三省の長官を宰相としたが,太宗が即位前に尚書令となってから臣下はこれを避け,次官の尚書左右僕射 (ぼくや) などがその任にあたった。のち中書・門下両省を合わせて宰相を置く例が多くなった。遼は南北の二宰相府を置き,前者に漢人,後者に遊牧民族を治めさせ,左右宰相を置いた。元は中書省長官を宰相とし,明では1380(洪武13)年に中書省を廃し,中極殿・武英殿・文華殿・建極殿・文淵閣・東閣の六殿閣に大学士を置き,これらが内閣を組織して宰相となった。清は軍機処を置いて軍機大臣を宰相とし,末期には内閣総理大臣を置いた。

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世界大百科事典 第2版 「宰相」の意味・わかりやすい解説

さいしょう【宰相 zǎi xiàng】

中国における中央政府の最高責任者で,皇帝を輔佐するものをいう。古い官制を記した《周礼(しゆらい)》では,百官の長は冢宰(ちようさい)または大宰と称している。宰は料理人,相は歩行を助けるの意味で,ともに天子の家内的使用人であったと考えられる。秦・漢以後は官僚制度の上で最高責任者を意味する。秦・漢時代は中央政府最高官として丞相,太尉,御史大夫が置かれ,軍事をつかさどる太尉(一時大司馬という),監察官の御史を統率する御史大夫(のち大司空という)に対し,皇帝を輔佐し政務を総攬し百官を統率する丞相がまさに宰相に相当していた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「宰相」の解説

宰相
さいしょう

参議の唐名。唐朝初期の律令制では,門下・中書両省の長官(侍中・中書令)と尚書省の左右僕射(ぼくや)が宰相として国政を審議し,のちには他の高官も個別に朝政に参議する資格を与えられ国政にあずかった。日本の大・中納言の職掌に参議があるのはこれをうけついだもので,日本の参議制には唐の兼官宰相制の影響がある。ただし日本で宰相といえば通常参議のみをさす。

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世界大百科事典内の宰相の言及

【丞相】より

…旧中国において天子を補佐する最高の大臣を宰相と言うが,歴代その名称を異にする。丞相(〈じょうしょう〉とも読む)はその一つで,秦・漢に始まり,六朝を通じて,おおむね丞相が宰相の名であった。…

【宋】より

…かくして8世紀中ごろの安史の乱以後,2世紀以上にわたって分裂の状態がつづいた中国は,ようやくここに統一された。太祖は統一事業をすすめる一方で,唐末五代の混乱が武人の専横に起因したとの反省から,地方軍閥が握っていた軍事,財政,司法等の権限を取り上げて〈強幹弱枝策〉を推進し,さらに宰相等の職掌を分散して皇帝のみが全権を掌握するという君主独裁体制を築いた。しかも,武人をおさえて文臣を重用する文治主義を統治の基本方針とした。…

※「宰相」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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