広義の家畜の中で鳥類に属するものをいう。野生の鳥類から人間の生活に役だつように飼いならし,遺伝的に改良したもので,鳥籠で飼う飼鳥とは区別される。おもな家禽とその祖先である野生種は次のとおりである。
(1)キジ科 ニワトリ(セキショクヤケイなどをインドで約5000年前に馴化(じゆんか)),ウズラ(野生のウズラを日本で江戸時代に馴化),シチメンチョウ(ヤセイシチメンチョウを北アメリカで原住民が馴化し,16世紀にヨーロッパへ紹介),ホロホロチョウ(野生のホロホロチョウを西アフリカで馴化)。(2)ガンカモ科 アヒル(マガモを北半球の各地で馴化),ガチョウ(サカツラガンを中国で,ハイイロガンをエジプトで馴化,ヨーロッパで改良),バリケン(ノバリケンをペルーで馴化)。(3)ハト科 イエバト(カワラバトをシリア付近で馴化)。
家禽はその飼育目的から,生産物を利用する実用種と,姿や声を観賞する愛玩用種に分けられ,実用種はさらに卵用種,肉用種,卵肉兼用種などに分けられる。卵用種に属するものにはニワトリの白色レグホーン種,ミノルカ種,アヒルのカーキーキャンベル種,インディアンランナー種などがあり,白色レグホーン種では年間産卵数365卵の記録もでており,300卵以上産むものもまれではない。これらの品種では就巣性は採卵に不利なので遺伝的に除去してあり,繁殖は人工孵化(ふか)によらねば不可能である。肉用種に属するものはニワトリのブラーマ種,コーチン種などがあるが,最近では兼用種と白色コーニッシュ種を交配した雑種を1350gぐらいに肥育して利用するブロイラー養鶏が盛んになっている。このほかアヒルのペキン種,ルーアン種や,ガチョウ,シチメンチョウ,ホロホロチョウ,食肉バトの各品種もこれに属する。卵肉兼用種としてはニワトリの横斑プリマスロック種,ニューハンプシャー種,ロードアイランドレッド種,名古屋種やアヒルのエールズベリ種などが代表的なものとしてあげられる。このほか特殊な実用鳥として通信用の伝書バトがある。
愛玩用種としては,ニワトリでは姿の優美な尾長鶏,小国(しようこく),チャボなどの日本鶏や小型でかわいらしい各種のバンタム,ときを告げる声を楽しむ東天紅,声良(こえよし),唐丸,クリューエル種など,そして闘鶏用のシャモなどがある。アヒルにも頭に羽冠のあるカンムリアヒルや,ガチョウにも逆羽が美しいセバストポール種がある。ハトにも尾がクジャクのように広がるファンテール種,首の羽が襟巻のようなジャコビン種,雄が嗉囊(そのう)を大きくふくらませる習性のあるパウダー種がある。またこのほかインドクジャクを改良したシロクジャクや,キンケイから作出されたキンイロキンケイなども,前記の定義から観賞用の家禽としてあげることができる。
執筆者:正田 陽一
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…農業生産は植物生産と動物生産の二つに大別されるが,養蚕を除く動物生産にかかわる農業が畜産である。畜産は家畜飼養を中心にした農業だということになるのであるが,人間生活にとけこんでいる家畜,家禽(かきん)のなかには犬,猫,小鳥といった愛玩用の動物も含まれており,畜産という場合はこれらの愛玩用家畜・家禽は含めない。役用に供する牛・馬,肉にする牛・豚・鶏・七面鳥,卵をとる鶏,乳を搾る乳牛,毛をとる羊など,生産目的に飼養する家畜が畜産の対象家畜である。…
…これとともに米価政策その他,国の農業政策が手厚い補助金政策・融資政策をとったためと,工業拡大政策をとったことによって,60年代以後農業は大きく変貌した。その変化は全耕作過程の機械化,農薬,化学肥料,除草剤の多量の使用,酪農その他家畜・家禽飼育の大規模化,果樹,野菜の専業化などにみられる。その過程で犂耕作の家畜飼養は喪失して,一般農家の家畜飼育は減少し,堆肥・厩肥使用は激減し,旧採草地利用はなくなっていった。…
※「家禽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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