日本大百科全書(ニッポニカ) 「寄せ鍋」の意味・わかりやすい解説
寄せ鍋
よせなべ
鍋料理の一種。寄せ鍋は、関東とくに東京独特の鍋料理で、明治中期から盛んに用いられるようになった。そのころは家庭でも大いにつくられ、楽しみ鍋の別名がある。今日の鍋には何が入っているかなどと興味をもつのと、その味のよさがこの名のおこりであろう。関東の寄せ鍋に匹敵するのが、関西の魚(うお)すきである。主として瀬戸内海の新鮮で味のよい魚貝類を薄く切り、さっと水煮して食べるものである。寄せ鍋の材料は、脂肪が少なく、くせのないものがよい。においの強いものや身の柔らかすぎるものは向かない。寄せ鍋の材料は、皿に盛り付けた美しさを楽しんでから鍋に加えるので、その盛付けもたいせつである。ハクサイでホウレンソウを巻いたものを例にとると、ハクサイ4枚、ホウレンソウ半束を固ゆでにして水けを除き、巻簀(まきす)の上にハクサイを並べてホウレンソウを芯(しん)になるように巻いて6個に切る。大皿の中央に春雨(はるさめ)を水にもどして盛り、周囲にハクサイ巻きを置き、クルマエビと鶏肉(一口大に切る)の霜降り、下ゆでして渋皮をとったぎんなんなどを盛り合わせる。煮汁は、だし汁10カップ、酒半カップ、みりん大さじ3、塩大さじ1.5、しょうゆ大さじ6ぐらいを標準とするが、好みで適当に変えてよい。薬味としてユズの絞り汁、七味唐辛子、木の芽などを添えて供する。
[多田鉄之助]