寄せ(読み)ヨセ

デジタル大辞泉 「寄せ」の意味・読み・例文・類語

よせ【寄せ】

寄せること。寄せ集めること。「人寄せ」「客寄せ
囲碁将棋終盤戦の細かい詰め。
望みを寄せること。信任。信頼。
時世の―今一きはまさる人には」〈明石
一身上の力となる人。後見。
「一の皇子は、右大臣の女御の御腹にて、―重く」〈桐壺
ゆかり縁故。ちなみ。
「その―ありとて、後醍醐天皇とおくり名し奉る」〈太平記・二一〉
子細。わけ。いわれ。
「国を争ひて戦ひをなす事、数へ尽くすべからず。それもみな一ふし二ふしの―はありけん」〈増鏡新島守
歌論で、縁あるものに関連づけること。縁語。
「歌は―あるがよきなり、衣に、たつ、きる、うら」〈詠歌一体

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「寄せ」の意味・読み・例文・類語

よせ【寄・寄席】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「よせる(寄)」の連用形の名詞化 )
  2. 迫り近づくこと。押しよせること。
    1. [初出の実例]「ふりぬれど杉はしるしは有ぬべし波のよせなき松が浦島〈慈円〉」(出典:千五百番歌合(1202‐03頃)一三九四番)
  3. ひと所に集めること。多く他の語に添えて用いる。「人寄せ」「季寄せ」など。
  4. 気持をそちらに傾けること。頼ったり、信任したり、後援したりすること。
    1. [初出の実例]「受領の家などにも、所につけたるおぼえわづらはしきものにしたれば、したり顔に、わが心地もいとよせありて」(出典:枕草子(10C終)一八七)
  5. うしろだてとなって世話をする人。後見。
    1. [初出の実例]「無品親王の外戚のよせなきにてはただよはさじ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  6. 縁。ゆかり。ちなみ。
    1. [初出の実例]「毎年八ケ度神馬、為氏長者之云云。非其寄哉」(出典高野山文書‐(弘安四年)(1281)八月二日・御室令旨)
  7. 歌論で、縁語のこと。
    1. [初出の実例]「歌にはよせあるがよき事 衣には、たつ、なか、うら。舟には、さす、わたる。橋には、わたす、たゆ」(出典:詠歌一体(1275頃))
  8. 子細。わけ。いわれ。
    1. [初出の実例]「させることのよせなけれども、女院の御所など借り申す、故実なりとぞ」(出典:徒然草(1331頃)一五六)
  9. 囲碁、将棋の終盤戦。詰め寄せて勝負を決めること。囲碁では侵分、収束、また、段階によって大寄せ、小寄せなどの用語も用いられる。
    1. [初出の実例]「碁で言うなら、よせの段階で」(出典:検事霧島三郎(1964)〈高木彬光〉二二)
  10. ゴルフでアプローチをいう。
  11. 小さい木を地に立てて銭を投げ、その木の近くに寄せるのを競う遊び。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
  12. ( 寄席 ) ( 「よせせき」または「よせば」の略 ) 落語・講談・漫才浪曲・手品・音曲などの大衆芸能を上演する場所。江戸初期から辻咄講釈などが葦簀(よしず)張りの小屋で行なわれたが、後、咄家(はなしか)の自宅や貸席で行なわれるようになり、江戸に常設の演芸場ができたのは、寛政年間(一七八九‐一八〇一)という。ひとよせせき。よせせき。よせば。せき。席亭。
    1. [初出の実例]「今朝糀町の万長が内に用があったから寄たらば寄(ヨセ)がはじまっていやしたっけ」(出典:洒落本・大通契語(1800))
  13. 歌舞伎下座音楽の一つ。人物の登場する時に大小鼓を打ちはやすもの。〔戯場訓蒙図彙(1803)〕
  14. よせしき(寄敷)」の略。
  15. 歌舞伎用語。劇場が混雑した時、太鼓を打って観客に前に詰めるよう知らせること。
    1. [初出の実例]「『前がまばらで後が込ます。太鼓に続て前へ前へ』 是をよせといふ也」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の寄せの言及

【将棋】より

…多く後手方で使う。 舟囲い王を左側に寄せ,舟に乗ったような形。 穴熊左右どちらかの香を1段進め,そのあとへ王を入れ金銀で囲うもの(図15)。…

※「寄せ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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