浜辺に漂着する物のこと。日本の海岸には,季節のおりおり,風や潮にのって,多くの漂着物が流れ着く。とりわけしけのあった翌朝などには,種々のものが流れ着いている。こうした寄物には,流木をはじめ,破船した船の船材,ときには,人間の死体まであるし,また,ある一定の時期に海岸におしよせる魚なども含まれる。かつての浦(うら)の人々にとって,こうした寄物は,建築材や燃料としての貴重な生活財であった。また海のかなたから流れ寄る寄物に対し,これを神聖視することが多かった。それゆえ,これを浜に出て拾うときには,一定のしきたりや作法が伴った。全国の浦々には,寄物を拾う慣行が存在し,これを寄物拾いとか浜あるきなどと呼んでいるが,これを拾うときには,必ず寄物に声をかけたり,その寸法をはかったりするまねをしてから拾うものであるとされてきた。これを怠ると必ずたたりがあると信じられた。寄物に対するこのような観念は,発展して寄神(よりがみ)信仰などになっていく。
→漂着神 →寄船
執筆者:高桑 守史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…潮流や風によって浜に流れ着く漂着物(寄物)を神としてまつる信仰で,寄神ともいう。この信仰の基盤には,寄物は海のかなたのカミからの贈物あるいはカミそのものとする考えがあり,これを拾う際に,話しかけたり,寸法をはかったりするしきたりが各地でみられた。…
※「寄物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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