遭難による漂着船,漂流船の船体,もしくはその積載物。おもに中世に入ってみられる語。寄船はしばしば貴重な財であったから,その取得をめぐって紛争の起こることが多い。発見者,救出者が慣習的にその取得の権利を有したが,新補地頭は海業得分の一つとして寄船の取得権を公認されている。また紛争回避の意味もあってか,社寺に寄進される例が多い。筑前宗像大社が平安時代以来,永年にわたって本社・末社70余社の造営をすべて寄船によってまかなっていたのは中世においていかに船舶の遭難が多く,寄物の経済価値がいかに高かったかを示す好例である。室町後期の《廻船式目》および《今川仮名目録》など中世の法は,寄船に乗員の生存する場合または船主の明らかな場合の無断押収を禁じ,無主物である場合のみ,その取得を認めた。しかし現実には欲にからんで不法押収の海賊行為が日常的な現象であった。近世に入り幕藩はそれらの不法行為を厳しく規制するとともに,発見者,救出者に一定の権利を保証して,問題の解決を図った。
→寄物
執筆者:新城 常三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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