ふ‐ご【封戸】
〘名〙 (「ふこ」とも)
令制の封祿の
中核となるもの。
諸国の
一定の
課戸(かこ)を指定し、その戸の出す租の二分の一、庸・調の
全部および
仕丁(じちょう)の
労役を封主が
収取する
制度。また、その指定された課戸。のち天平一一年(
七三九)以降は租も全給となった。これら租・庸・調は封戸所在の国郡の責任で中央へ運送される。
支給対象は
皇族、三位以上の官人、大臣・
大納言および五位以上で
勲功ある者などであったが、
社寺にも支給された。支給理由により
位封・
職封・
功封などに分類できる。
食封(じきふ)。封戸
(ほうこ)。〔
令義解(718)〕
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デジタル大辞泉
「封戸」の意味・読み・例文・類語
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封戸【ふこ】
律令制で貴族・社寺に俸禄として支給した戸。封戸の租税が収入となる給与制度を食封(じきふ)という。大化改新で従来の私有民を廃止するにあたり中国の封戸制にならい,私有民の代りに公民の一部を割いて封戸として給付。初めは封主(受給者)が封戸から租税を直接に徴収したが,天武朝ごろから国司らを通じて間接に徴収することとなった。大宝令では四品(しほん)以上の皇族と従三位(じゅさんみ)以上の貴族への品封(ほんぷ)・位封(いふ),大納言以上への職封(しきふ),功臣への功封,社寺への別勅封(べつちょくふ)などがあり,封戸の租の半額と調・庸の全額および仕丁(しちょう)が支給された。平安中期以後,律令制の解体に伴って,封戸は再び私有化し,荘園成立の一因となった。→大宝律令
→関連項目有封社|部曲|国分寺(歴史)|寺社領|部|保|俸禄
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封戸
ふこ
大宝令(たいほうりょう)や養老(ようろう)令で定められていた貴族に対する給与制度の一つ。特定数の公民の戸を支給するもので、三位(さんみ)以上に支給される位封(いふ)、大納言(だいなごん)以上の官職に支給される職封(しきふ)とが中心である。そのほか功績によって支給される功封(こうふ)があった。また寺は封戸の支給にあずからないのが一般原則で、別に勅があればかりに支給することができたが、支給期間は5年を限ることになっていた。封戸はそこからの調(ちょう)と庸(よう)および田租の半分が支給されることになっていた。封戸の制度は中国で南北朝以来整備されてきた食封(じきふ)(封戸)の制度をまねたもので、『日本書紀』は646年(大化2)から始まったとしている。封戸は公民を前提としていたので、公民制の後退とともに衰退した。
[鬼頭清明]
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ふこ【封戸】
日本古代の給与制度の一つである食封(じきふ)によって指定された戸を,封戸という。646年(大化2)のいわゆる大化改新の詔の中で,それまでの貴族等のもっていた私有地,私有民を廃止し,かわりに大夫以上に食封を支給することにしたことがみえる。しかし,当時このような法令が発布されたかどうかは疑問視されており,たとえ発布されたとしても実施された可能性は少ない。むしろ封戸の制度は壬申の乱後,天武天皇の時代に,全国的に人々を公民として支配するようになって後,公民の一部をさいて貴族,寺院等に封戸を支給する制度が順次整備されていったらしい。
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封戸
ふこ
「ふご」とも。律令制において,食封(じきふ)支給のため封主にわりあてた公戸。賦役令(ぶやくりょう)に,封戸には課戸をあて,その全調庸と,田租の半分を封主に支給せよと規定する。残りの田租は官納とされたが,739年(天平11)全給となった。課戸ごとに戸口数が異なり,徴収される封物量が一定でないため,705年(慶雲2)1戸を4丁と定め,さらに747年には50戸のうち20戸は5丁と中男1人,30戸は6丁と中男1人とし,租は1戸40束として定額化が図られた。
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封戸
ふこ
律令時代,上級貴族,神社,仏寺などの封禄 (ほうろく) である食封 (じきふ) にあてられた課戸。令制では,この課戸から出される田租の2分の1と調庸の全部を封主に給することに定められた。のち田租もすべて給されることとなった。平安時代初期の貴族の有力な収入源。律令制衰退につれて消滅。
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封戸
ふこ
律令制下,貴族や寺社に与えられた食封 (じきふ) の戸
職封・位封などがある。貴族の重要な経済基盤であったが,平安中期から封戸に当てられた郷が固定化し,多くは荘園に変わった。
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世界大百科事典内の封戸の言及
【有封社】より
…正しくは〈うふのやしろ〉と読む。古く封戸(ふこ)を有した神社のこと。封戸は国家より施入され,租,庸,調,雑役をその神社に納め,神戸(かんべ),神封戸とも呼ばれた。…
※「封戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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