翻訳|despotism
1人または複数の支配者による絶対的かつ恣意的な統治。支配者と被治者とは完全に断絶しており,被治者の政治過程への関与は否定される。独裁政治とは,被治者の政治過程への関与の有無によって区別される。古代オリエント世界においては,通常,君主の地位は世襲され,君主は単に政治的な権力を独占していただけではなく,神の子あるいは神の化身として,神格化されていた。古代ギリシアのポリスにおける自由の観念は,このようなオリエント的専制政治との差異の意識に基づいて成立したのである。伝統的政体論において最も危険で堕落した体制とみなされた僭主政治,すなわち支配者が不法にその地位につき,あるいは権力を濫用してみずからの利益のみを追求する政治は,専制政治の一つと考えられる。また,帝政ローマ期に皇帝がみずからの手に権力を集中し,皇帝崇拝を要求するにいたる過程は,オリエント的専制政治の導入とみることもできよう。西欧においては,古典古代の都市国家が政治社会の原型としてイメージされていたから,専制政治という語自体,非難の意味を強く含んでおり,祖国イタリア統一の目的達成のために,伝統的価値に拘束されない強力な君主の出現を望んだマキアベリや,社会契約によって成立した国家の意思を君主の意思に体現せしめたホッブズの思想は,専制政治の弁証として非難の対象とされた。絶対王政下にあって,モンテスキューは,政体を,民主制,君主制,専制政治の三つに分類し,専制政治を,ただ1人が,法もなく規範もなく,万事を自分の意思と恣意によって導くものと定義し,原理的に腐敗したものとして批判した。一方,啓蒙哲学者の一部は,人間の知的・精神的発展の推進者として君主の指導に期待し,啓蒙専制君主と呼ばれるロシアのエカチェリナ2世やプロイセンのフリードリヒ2世らは,〈公共の福祉〉をうたい,啓蒙主義とそれに伴う科学技術の発展を積極的に援助して,自国の強化を図った。
執筆者:吉岡 知哉
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支配者が大多数の被支配者の政治的関与を許さずに恣意(しい)的統治を行う政治体制をいう。古代ギリシアの僭主(せんしゅ)政治をはじめ前近代的社会においては一般的にみられた。社会的成熟度が低いために被支配者の団結が弱く、支配者に対抗できないことが専制政治を成立させる条件となった。近代における専制政治は絶対王制であるが、政治権力を宗教的権威から切り離し、国家=国王が世俗社会における主権を獲得したわけで、人民に対する多様な権力が一元化されたことを意味する。人民的基盤をもち、危機的状況の事態収拾のために一時的かつ例外的に特定の個人あるいは集団が集中的に権力を掌握する独裁とは区別される場合が多い。
[大谷博愛]
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…しかしながら,そのような意味での君主の専制支配がすべて絶対王政なのではない。すなわち,君主の専制支配は,広く古代から現代までさまざまなかたちで見られ,一般に専制政治ないし専制主義despotismと呼ばれているのであり,これに対して歴史的な用語としての絶対王政は,中世封建社会が解体して近代市民社会が形成される過渡期という特定の時期において,一定の歴史的諸条件のもとで生み出された強力な国王の支配する体制を指し,したがって絶対王政は,広義の専制政治一般とは区別された特定の歴史的性格をもっている。
[形成過程]
絶対王政の形成の端緒は,中世末期における封建的支配者層の衰退に乗じた王権の伸張であった。…
…広義には,他人の意見を聞きいれず一人でものごとを決める意で,企業内(〈社長の独裁〉)や集団内(〈町内会長の独裁〉)で用いられることがあるが,それは政治用語から派生した比喩的用法である。類語として専制政治despotism,オートクラシーautocracy,暴政・僭主政tyrannyなどがあり,日本語の独裁はこれらの意味を含み,despotism,autocracy,tyranny等も独裁と訳される場合がある。政治学用語としては,専制政治が少数者の恣意にもとづく政治であるのに対して独裁は大衆の支持ないし参加を背景にもつものとして,オートクラシーが立憲制や権力分立に対置される統治方法概念であるのに対して独裁は自由主義や民主主義と対置される体制概念であるとして,また,僭主政がアリストテレスなどにおいて君主政に対比され,その堕落形態とされるのに対して独裁は古代ローマに発し現代にいたるさまざまな政治体制に適用可能であるとして,区別される場合がある。…
※「専制政治」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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