専売(読み)せんばい

精選版 日本国語大辞典 「専売」の意味・読み・例文・類語

せん‐ばい【専売】

〘名〙
① 他の自由競争をさしとめ、特定者だけがその利益を独占すること。
(イ) 他人には売らせずに自分だけで売ること。一手販売。独占販売。また、新発明品などについて、国家が認めたその権利。特許。パテント
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初「書を著し事物を発明する者には官許を以て専売の利を与へ」
(ロ) 特に、国家が主として収入を得る目的をもって、特定の物品の生産・販売を独占すること。日本では、タバコ・塩およびアルコール(アルコール分九〇度以上)の三物品がその対象とされていたが、タバコについては昭和六〇年(一九八五)、塩については平成八年(一九九六)、残ったアルコールも同一二年に廃止。
※台湾総督府令第三十二号‐明治三四年(1901)六月一日「樟脳及樟脳油専売の事務を取扱はしむる為支局を設置し」
② 顕著な特色をもち、他には真似などのできない技術や事柄など。他に比較して最も特色としているもの。特技。おはこ。専売特許
文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三「耶蘇の宗門は必ずしも正者専売の場所に非ず」
[語誌](1)幕末から明治初期にかけては、現在でいう「特許」の意の英語 patent と、「独占販売」の意である monopoly 両方の訳語として用いられていた。
(2)明治四年(一八七一)に「新発明品専売免許規則」が発布され、その頃から patent には「専売免許」のちに「専売特許」が訳として当てられるようになり、「専売」はもっぱら monopoly の訳語として定着していく。

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デジタル大辞泉 「専売」の意味・読み・例文・類語

せん‐ばい【専売】

[名](スル)
他には売らせず、一手に販売すること。「当社が専売する輸入食品」「新聞の専売店」
主として財政上の目的で、国が特定の物品の販売を独占すること。
専売特許2」に同じ。
「耶蘇の宗門は必ずしも正者―の場所に非ず」〈福沢文明論之概略
[類語]公売密売量販多売直販直売即売売る販売発売押し売り売却身売り通信販売セールスセールリリースひさぐ売り払う売り捌く売り付ける売り込む売り急ぐ売り切れる売り渡す売り飛ばす・売り繋ぐ・売り歩く売り出す売れる払い下げる卸す

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改訂新版 世界大百科事典 「専売」の意味・わかりやすい解説

専売 (せんばい)

国あるいはその他の公権力が,なんらかの行政的な目的をもって,特定物品の生産あるいは販売を独占することをいう。専売は,その目的により,財政専売または収益専売と,行政専売または非収益専売とに分けることができる。前者は,政府等が特定の物品を独占的に生産・販売することによって財政収入を得ることを目的とするもので,タバコ,火酒(アルコール度の高い酒)などの専売がこれに当たる。この場合には,国民はその物品の購入に際して,政府の決定した価格による対価の支払を強制されるため,実質的には消費税を課したのと変わらない結果になる。後者は,社会政策,公衆衛生,治安維持,産業保護などの公益的な目的をもって行われるものであって,塩,アルコール,麻薬等の専売がこれである。

 日本においては,塩およびアルコールについて専売制度がとられている。また,アヘンについても,法律上専売の語は用いられていないが,国の独占権が定められており,実質的には専売であるといってよい。現在,塩の専売は日本たばこ産業株式会社にゆだねられている一方,アルコールの専売は通商産業省の所管で,その経理はアルコール専売事業特別会計で行われている。また,アヘンについては厚生省の所管であり,その経理はあへん特別会計によって行われている。

 専売制度の歴史は,古代エジプトにまでさかのぼることができるともいわれているが,それが急速に発達をしたのは絶対王政のもとにおいてである。日本においても,江戸時代中期,幕府は米,箔,石灰,薬用ニンジン,銅などについて専売を実施し,また諸藩においても,会津の蠟,長州の紙,仙台の塩などについて早くから専売が行われていた(〈藩専売制〉の項参照)。しかし,これらの専売は,絶対君主や藩主が,財政収入を目的として,商人資本による流通独占に権力的に介入し,その利潤の一部を収奪するという形のもので,政府自体が資本家的経営者として独占的販売を行う近代資本主義的な専売制度とは本質的に異なっている。近代資本主義の専売でも,その初期に当たる18~19世紀のフランス,オーストリアなどのタバコ専売は,このような絶対君主制下の商業資本的独占の性格が強いといわれている。現行の専売制度は,ほぼ第1次大戦を契機として誕生した。これは,戦争等による財政需要の増大と専売物品についての産業基盤の確立,生産,資本の集中という背景が整いはじめたためである。この時期に,日本を含め,イタリア,ドイツ,スウェーデン等の諸国がいっせいに専売制度をとり入れている。

 日本におけるタバコの専売は,1898年に,日清戦争後の財政需要の増大に伴って,葉タバコの専売が実施されたのが最初である。その後,日露戦争の戦費調達のため1904年に専売の範囲を製品の製造販売にまで拡大し1985年3月まで続いた。なお,当時は大蔵省の直営事業であったが,49年6月以降は日本専売公社が生産卸売を担当し,公社以外の者が同種あるいは類似の事業を行うことは禁止されている。塩についても,タバコと同様,1905年に戦費調達を目的として専売制度が導入された。しかし,その後,その生活必需品としての性格上価格をなるべく据え置くようにしたため,益金はなく,価格統制,生産者保護を目的とする行政専売に転換することとなった。また,アルコールの専売は,37年,戦時体制下の燃料自給策の一環として始められたが,今日では,産業界への良質アルコールの供給や,アルコールが不正に飲料として使用されることを防止するのを主目的としている。アヘンの専売は,54年から,公衆衛生ならびに治安維持の目的をもって実施されている。なお,このほかにも,産業保護の目的をもって,ショウノウおよびショウノウ油の専売が1902年から実施されていたが,62年に廃止された。

 専売物品が国民の日常生活に密接な関係を有するものであるかぎり,その価格の決定は,財政需要と国民の消費能力とを勘案し,民主的な手続をもって決定されなければならない。このため,財政法3条により,専売物品の価格の決定は,法律または国会の議決に基づいて行われるべきこととされている。85年のたばこ専売制の廃止までは,たとえば製造タバコについては,製造たばこ定価法により,種類ごと,等級別の最高価格が定められており,品目ごとの小売価格は,たばこ専売法により,日本専売公社大蔵大臣の認可を経て定めることとされていた。

 専売が財政専売を目的とするならば,専売によって得られる益金は,一定の手続によって国庫に納付されなければならない。この国庫に納付される益金を専売納付金という。たばこ専売制の廃止前の制度では,日本専売公社は,毎事業年度の決算上の総利益から総損失を控除した金額から,当該事業年度における積立金として積み立てるべき一定の金額をさらに差し引いた金額を,翌年の5月31日までに国庫すなわち国の一般会計に納付しなければならなかった。1984年度予算でみるとこの専売納付金の金額は1021億円で,一般会計歳入全体の2.0%を占めていた。また,タバコについては,1954年から,地方税としてたばこ税が設けられていたため,日本専売公社は小売価格の28.4%に相当する道府県たばこ消費税および市町村たばこ消費税を地方公共団体に納付していた。したがって,このたばこ消費税も広義の専売納付金と考えて差支えない。なお,アルコールの専売については,法律上専売納付金という概念はないが,決算上益金を生じた場合には,当該利益を生じた年度の一般会計の歳入に納付することとされている。

 1984年8月には,タバコの輸入自由化と,日本専売公社の特殊会社化を主要な柱とする,いわゆる専売改革法案が公布され,85年4月から新たに専売公社に代わって,日本たばこ産業株式会社が発足した。これにより,明治以来約80年続いたタバコの専売は廃止されることとなった。
執筆者:

中国では漢代以後,専売を榷(かく)の字であらわす,榷茶,榷塩,榷酒(酤(こ))などはすべて,茶,塩,酒の専売のことである。榷の原義は堅い丸木橋で,一人一方通行,つまり利益独占を意味する。中国の専売法はほとんどすべて国家財政の必要上から実施されたが,前2世紀末の漢代の最初の専売,8世紀半ばからの唐のそれと,10世紀の宋に至って完成する専売法とではやや相違がある。前2者はどちらかといえば王朝の財政危機を打開する対策として行われたのに対し,宋以後の専売は国家の財政的基盤として,制度的にも高度に整備されていた。

 ひとくちに専売といっても,中国ではいくつかの基本形があった。国家が生産,販売のすべてをみずからの手でやる禁榷法(官運官銷(しよう))と,生産,集荷までは国家が行い販売は商人にまかす通商法(官督商銷)は,塩,茶などの主要専売に歴代みられる。通商法の場合でも専売品の売りさばき地を厳重に指定するものとしないものの相違がある。また,特定の対象物を専売に指定し,高額の課税をしつつも,商人の運搬,販売にゆだねるケースも少なくなく,とくに宋以後の1000年間はそれらが混合して複雑な様相を呈する。専売法実施の前提としては,一部奢侈(しやし)品を除いて,対象となる物貨の生産,流通,消費が相当量に達してかつ安定し,それらを統轄できる国家の機構が必要となる。この意味では漢代の専売はまだ不安定であり,中国における本格的な専売は諸条件のそろった宋代に始まるともいえる。

 宋からのちの中国では歳入は両税などの直接税(租入)と,商税,専売益金を柱とする間接税(課入・課利)に分けられる。後者は貨幣で徴収されるところに特色があり,新しく成立した君主独裁制を支える官僚,軍隊の俸給の貨幣部分がそれでまかなわれた。したがって専売法は宋以後の諸王朝の財政的な裏付けであったということができる。実例をあげれば,11世紀初め,商税と専売の酒,塩の歳入は各350万~450万貫で全貨幣歳入2600万貫の半ばに達し,13世紀には,専売の酒と塩だけで,それぞれ1400万貫,2100万貫に達し,歳入の半ばをはるかに超している。

 専売品のなかで歴代最も重要なものはである。古くは春秋,戦国時代,山東の斉は管仲の手により,塩を国家統制下にいれ,富強をもたらしたといわれる。鉄とともに中国全土に塩の専売が実施されたのは漢の武帝の前119年(元狩4)である。農具を中心とした鉄器の普及と商品化は生産力を飛躍的に増加させ,同時に食生活を豊かに分化させる。調味料その他用に塩の需要量も著しく増大し,利益を独占する大商人の活動も活発になる。武帝は西域経営などによる財政窮乏の補塡(ほてん)と,大商人の抑圧の両者を念頭に,塩と鉄の専売を断行した。全国35の産塩地に塩官を置き,生産された塩をすべてここに集めて,官の統制のもとに全国に販売させた。なお,鉄の専売は鉱山採掘から溶鉱炉での製鉄,製品化,販売までを官(鉄官)が管理し,その数は48に及ぶ。ただ表立った鉄の専売はこの時代だけで終わる。塩の専売はほぼ前漢一代を通じて継続されたが,後漢以降,分裂の時代に入ると消滅し,山西省の解池など特定産塩地を掌握した独立政権が一部に統制を加えた程度で,唐中期まで推移する。8世紀半ばに再び実施された専売法は節度使の跋扈(ばつこ)により,直接税歳入の減退した唐王朝が,江蘇の産塩地と大運河をからくも確保しつつ,案出したものであった。ここで作られた制度が五代,宋と継承発展する。

 宋以後の塩専売の特色は塩の販売地を政府が決定する行塩地(銷塩区)が設定された点で,塩の販売証(引)には必ず売りさばき地域が指定されていた。行塩地は政府の都合で変更され,とりわけ江西,湖南など内陸非産塩地の人民は粗悪で高価な塩を買わされ苦しんだ。明・清時代も塩は専売の中心であったが,法制そのものは時代的変化がある。明初は北辺への軍糧納入と塩法を組み合わせた開中法が採用され,それがくずれると特許商人に一定額の塩引を請け負わせる綱法が行われる。そして有力商人が塩の販売権のみか生産者まで直接支配する方向に進み,特定の塩商の力が大きくなりすぎた。清末1831年(道光11),塩税を納入すればだれでも塩商となれる票法が断行されたが,十分な効果はあがらなかった。

 塩に次ぐ専売品にがある。飲茶の風習が庶民段階に及んだ唐中期以後,課税,専売の動きがあらわれ,宋初からそれが実施された。ただ,茶の場合,西北方諸民族への貿易品という性格もあり,塩と異なった部分もみられる。たとえば四川の茶は,青海地方の青唐族から馬を買い入れる茶馬貿易に使うため,時期によって政府が恣意(しい)的に自由販売,専売を交互採用することや,西北辺防の軍駐屯への糧秣(りようまつ)の補給を商人にやらせ,その代価として茶の販売許可書(茶引)を支給することもあった。宋初は茶も,禁榷と通商法があり,園戸と呼ばれる生産者の管理もみられるが,大勢としては通商法が主流で,南宋になると,事実上は政府が全国の茶の総額にみあう専売税を特許商人から徴収する形に移行する。明・清もこれをうけ,名は専売ではあるが,塩のように売りさばき地指定,生産監督もなく,現実には多様な品目が市場で商品化されていた。

 酒の場合も専売税額の歳入における比率は高いが,主として都市を中心とした製造,販売の段階で特別の酒税を徴収する形式が普通であった。なお特殊な専売品として宋代には明礬(みようばん)と宝玉や香薬,元代の竹などが知られる。唐までは官営が多かった上級絹織物など衣服の染色も,宋では民間に広がり,媒染剤としての明礬の需要も増大する。明礬はほかに皮革,製紙業や飲料水の清浄にも消費される。産地が安徽省の一部と山西省に限定される明礬に対し宋王朝は生産,販売を統制した。しかしこれも南宋以降はしだいに自由商品化される。南海貿易を市舶司を通して国家管理下においた宋では,数多くの輸入品でもとくに瑇瑁(たいまい),象牙,犀角,珊瑚(さんご),瑪瑙(めのう),乳香など10種を榷貨に指定していた。また元初にはとくに河南,陝西の竹園を官営し,竹を専売扱いしたが,一時的に終わった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「専売」の意味・わかりやすい解説

専売
せんばい
state monopoly 英語
monopole publique フランス語
Staatsmonopol ドイツ語

国家による特定財の独占的製造および販売をいう。専売は、その目的によって行政専売(公益専売)と財政専売とに分けることができる。行政専売は、社会政策、産業保護、治安の維持、公衆衛生などを目的に実施されるものであり、火薬、麻薬、アルコールなどの専売がこれにあたる。これに対して財政専売は、財政収入を獲得することを目的とするもので、塩、たばこ、茶、綿花などの専売がこれにあたる。この場合には、国民がその物品を購入するに際しては、国が定めた価格に従って対価を支払わざるをえないので、実質的には消費税を課されたのと同じになる。

 専売の起源は、古代エジプトのパピルスの専売にまでさかのぼれるとされる。中国では、漢の武帝の紀元前119年に、当時民間で盛んに行われていた手工業の中心的地位を占める塩業と製鉄業を国家の権力的管理下に移し、その商業的収益を国家財政の財源とした。その後、唐時代の8世紀なかばには専売法が制定された。この専売法は、両税法とともに、唐朝の財政的基盤をなすもので、同法に基づく塩の専売収入は、やがて国家歳入の半分を占めるようになった。同じころには茶の専売も実施され、これらの専売制度は次の宋(そう)代にも受け継がれていった。たばこの専売は、イギリスによって植民地時代のアメリカで実施され、プロシア時代のドイツにおいても専売の対象とされていた。さらに19世紀初頭には、エジプトのムハンマド・アリーによって綿花の専売が実施されている。

 近代的な専売は、1810年に始まるフランスのたばこの専売や、1834年からのオーストリアのたばこの専売などの少数の例外を除けば、19世紀末葉から20世紀初頭にかけて実施されるに至ったものである。この時期には、各国とも国家経費の膨張が著しく、それに対処するため税収の増大が図られ、嗜好(しこう)品をはじめとする各種商品に対する課税が、専売という形式で実施されたからである。

[林 正寿]

日本の専売

日本においても、江戸時代には幕府が鉄、銅、薬用ニンジン、生糸、茶、たばこなど多くの商品の専売を行い、また諸藩でも、紙、漆、蝋(ろう)など領内の特産物の専売を実施して財政収入を図っていた。

 しかし、近代的専売制度が実施されるようになったのは明治30年代以降で、たばこ、塩、アルコールなどが対象とされてきた。

 最初に専売の対象となったのは、たばこであった。日清(にっしん)戦争後の財政需要の増大に対処するため、1898年(明治31)に葉たばこの専売が実施されたのに始まり、1904年には製品の製造、販売にまで専売の範囲が拡大された。たばこの専売は、当初は大蔵省の直営事業として専売局の管理下に行われたが、第二次世界大戦後の1949年(昭和24)6月に日本専売公社が創設されてからは、同公社が担当してきた。しかし、1984年8月に、たばこの輸入自由化と日本専売公社の民営化を柱とする、たばこ事業法などいわゆる専売改革関連五法が成立したのに伴い、1985年3月末でたばこの専売制度は廃止され、同年4月から日本専売公社は日本たばこ産業株式会社として新発足した。

 塩の専売は、1905年(明治38)に日露戦争の戦費調達を目的として始められたものである。しかし、塩の生活必需品としての性格上、その後価格維持に努めたため、しだいに行政専売へと移行した。塩もたばこと同じく、大蔵省専売局の管理下から第二次世界大戦後の1949年に日本専売公社に移管されたが、1985年4月の同公社の民営化に伴って、日本たばこ産業株式会社に専売業務を委託する形がとられた。さらに、規制緩和の要請にこたえるために塩事業法が1997年(平成9)4月1日から施行されたが、同法は塩専売法の廃止、すなわち塩専売制度の廃止を規定するとともに、それに伴う必要措置を講ずる目的で財務大臣は塩需給見通しを策定し、公表することが義務づけられている。また、塩製造業者、塩特定販売業者、塩卸売業者は財務大臣の登録を受けなければならない。財務大臣によって指定された塩事業センターには、生活用塩の供給、塩の備蓄、塩産業の効率化を促進するための塩の製造業者および販売業者への助言および各種援助の提供等の業務を課している。

 アルコール専売は1937年(昭和12)に始まり、たばこや塩とともに大蔵省専売局の管理下にあったが、1942年に商工省の所管となり、1947年に「アルコール専売事業特別会計」が創設され、事業は1982年新エネルギー総合開発機構(1988年新エネルギー・産業技術総合開発機構に組織変更)に移管された。この事業は、当初は戦時体制下の燃料自給国策の一環として発足したが、戦後は、良質アルコールを低廉な価格で安定的に供給して産業の発展に寄与すること、アルコールが不正に飲料として使用されるのを防止して酒税の確保を図ること、などを主目的とするものになった。そして2001年(平成13)4月にアルコール事業法が施行されたのに伴い、アルコール専売法、アルコール専売事業特別会計法は廃止され、アルコールの製造、販売、使用は許可制となった。

 このほか、産業保護を目的に樟脳(しょうのう)の専売が1903年(明治36)から1964年(昭和39)まで実施され、また戦時中の1943~1945年に燃料自給国策の一環として石油の専売が実施されている。なお、アヘンについては、法律上専売の語は用いられていないが、「あへん法」(昭和29年法律第71号)によって国の独占権が定められている。

 専売は独占であるから、高い価格を設定することにより消費を抑制するという社会政策の目的を達成することもできるし、独占利益を得ることもできる。専売から得る国家による独占利益は日本専売公社とアルコール専売事業特別会計からの専売納付金として国の歳入の一部を構成していたが、たばこ、塩の専売制度の廃止とともに専売納付金の額も大幅に減少した。一般会計歳入合計額に占める専売納付金の比率は、戦後一番高かった1948年度の20.06%から、1960年度の7.50%、1970年度3.24%、1980年度1.84%、1990年度(平成2)0.02%と低下し、2001年にはゼロとなった。たばこについては、1985年(昭和60)専売公社の民営化に伴いたばこ消費税に、さらに1989年(平成1)にはたばこ税に改められた。

[林 正寿]

『日本専売公社専売史編集室編『たばこ専売史』全4巻(1963~64・日本専売公社)』『戒野真夫著『たばこ専売事業の展開構造』(1986・明文書房)』『藤本保太著『日本の専売政策』(1990・多賀出版)』

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世界大百科事典(旧版)内の専売の言及

【商人】より

…したがって商人の社会的地位は低かったが,社会にとって不可欠の業務を担う商人の活動まで否定できず,商人は実力をもって社会と経済に大きな影響力を行使しつづけてきた。その一例が専売商人である。 中国の商業,とくに大規模な商業は,政府の専売制度と密接な関係をもっている。…

【鈔法】より

…中国の宋代に発達した専売法。専売の方式には政府機関の手で消費者への販売を行う官売法と商人に販売をまかせる通商法とがあり,通商法では商人に政府発行の手形(塩鈔,茶引(ちやいん)など)を買わせ,手形と引き替えに生産地で専売品と専売許可証とを渡し,所定の地域内で販売させていた。…

【タバコ(煙草)】より


【作物としてのタバコ】

[種類,形状]
 ナス科タバコ属Nicotianaの植物で,通常一年草。タバコ属は現在65種が発見され,多くはニコチン,アナバシンなど数種類のアルカロイドを含んでいる。現在栽培されているのはそれらのうちニコチンを主アルカロイドとするタバコN.tabacum L.(英名tobacco)(イラスト)とマルバタバコN.rustica L.(英名Aztec tobacco)である。後者は旧ソ連など限られた地域にしか栽培されておらず,栽培タバコのほとんどは前者である。…

【たばこ税】より

…1984年までは,旧たばこ専売法(1949年制定)によるたばこ専売制度のもとで日本専売公社がタバコの製造を独占し,その利益を専売納付金として国庫に納付していたが,84年に,たばこ専売制度が廃止され,民営化された。それに伴い,たばこ消費税法が制定され,日本たばこ産業株式会社に国税としてたばこ消費税が課されることになった。さらに,88年消費税法の制定とともに,たばこ消費税法が改正されて,たばこ税法となり,たばこ消費税もたばこ税と改称された。…

【日本専売公社】より

…業務内容は,タバコと塩の買入れ・製造・販売,その生産者・販売者の指導・助成,同専売品の輸出入等であった。タバコ小売定価の約56%が,専売納付金(国の一般会計の歳入に計上される)およびたばこ消費税(都道府県・市町村に納付される)となった。1982年度のタバコ売上高は2兆4704億円(販売総数量は3167億本),専売納付金は7651億円,たばこ消費税は7656億円。…

※「専売」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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