出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
諸家の系図を集成したもので,姓氏家系を調べるのには欠くことのできない重要な史料である。洞院公定(とういんきんさだ)(1340-99)著。内題には《新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集》とあるが,普通《尊卑分脈》の名で呼ばれ,また《大系図》とも称される。公定以後の書継ぎが多く,全体の体裁も不統一で,その原形や成立の由来は明らかでない。今日伝わる写本には収める氏に出入りがあり,公定の編纂したものが,どのような氏までを含めたものであったかわからないが,後に多くの氏の系図も集められるようになったので,《大系図》の名が生まれたのであろう。写本のうち,前田家所蔵林家訂正本がもっとも善本と思われるが,同じく前田家の脇坂本,宮内庁書陵部所蔵谷森本も比較的善本で,藤原,源,平,橘,菅原,中臣(なかとみ),大江,高階(たかしな),清原,中原,小槻(おづき),和気(わけ),丹波,賀茂,安倍,紀,多治比,物部(もののべ),坂上,蘇我,小野などの氏を収め,もっとも内容が多い。活字本には《故実叢書》本12冊,《新訂増補国史大系》本4冊があり,それぞれ索引を付している。
執筆者:皆川 完一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
正しくは「編纂本朝(へんさんほんちょう)尊卑分明図」といい、また「諸家大系図」ともいう。南北朝時代に洞院公定(とういんきんさだ)が企画し、猶子(ゆうし)の満季(みつすえ)、その子の実煕(さねひろ)ら洞院家代々の人々が継続編纂した諸家の系図の集大成で、氏によっては室町期の人物まで収められている。源(みなもと)・平(たいら)・橘(たちばな)・藤原その他主要な諸氏系譜を類別にまとめている。室町期を通じて、増補・改訂が行われ、さらにそれらが転写されて、異本が流布するとともに巻の序列もまちまちになった。流布本には、30巻本、20巻本、14巻本など種々ある。系図のなかの個人の履歴に関する注記には、他の史料にみられない史実が記されていることがあり、姓氏家系の研究のみならず、歴史研究のための史料価値も高い。前田家所蔵脇坂(わきざか)本を底本として『新訂増補国史大系』に所収。
[新井孝重]
藤原氏・橘氏・源氏・平氏その他の諸氏の系図集。10巻。南北朝後期,洞院公定(とういんきんさだ)編。のちの手も多く加わって,室町時代以降の系図も収録されたが,当初存在した帝皇系図や諸道系図は失われるなど,原形は不明な点が多い。原題は「新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集」。各巻ごとに,本文の前に目録や略系図などをおくのがもとの形態とされる。伝本による差異も大きいが,「新訂増補国史大系」に,林家訂正本を底本として諸本・諸記録で校訂・収録され,利用に便利。成立時期がおよそ明らかな点,網羅的に収録して注記などの情報が豊富な点で,系図集として最も史料的価値が高く,とくに藤原氏の部分が貴重。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…奈良時代後半から平安時代にかけて,系譜官撰の影響もあり,皇室をはじめ諸家には系図が多く編纂所蔵されていたと考えられる。室町時代にそれら堂上公家,諸道の家,上級武家の系譜を私的に集大成したものが,洞院公定の《尊卑分脈》である。誤りも多いが貴重な史料である。…
※「尊卑分脈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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