尊卑分脈(読み)ソンピブンミャク

デジタル大辞泉 「尊卑分脈」の意味・読み・例文・類語

そんぴぶんみゃく【尊卑分脈】

南北朝時代系図洞院公定とういんきんさだ洞院家の人々の編。後人の加除訂正のため、異本ごとに巻数配列が異なる。など諸氏の系図を集大成したもの。諸家大系図。

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精選版 日本国語大辞典 「尊卑分脈」の意味・読み・例文・類語

そんぴぶんみゃく【尊卑分脈】

  1. 南北朝時代に編纂された系譜集。原題「新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集」。巻数不定。洞院公定(とういんきんさだ)ら洞院家の人々の編。後人による補訂部分も多い。源・平・藤・橘その他代表的諸氏の系図を集成したもの。注記や主要人物の略伝などを添える。批判の余地はあるが、信頼度は高く、史料的価値が高い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尊卑分脈」の意味・わかりやすい解説

尊卑分脈
そんぴぶんみゃく

正称は『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』。南北朝時代に成立した諸家の系図の集大成。洞院 (とういん) 公定編。江戸時代には『諸家大系図』の書名で出版された。公定が編纂してからのちも,洞院満季,その子実煕ら洞院家数代が系図の編纂に関与している。多くの増補訂正が行われたために,原形態を推測することが不可能に近いが,およそ次のような内容が考えられる。書名の「尊卑」が示すように,一般の貴族を卑とし,天皇を尊と解釈して,現行本にはない天皇家系図がほかにあったらしいこと。注の文章中に『神祇道系図』『社官系図』などの文字があるから,別に神祇道,四道 (紀伝,明経,明法,算) ,医陰 (医道,陰陽道) ,楽所 (舞人,鳳笙,竜笛,篳篥) を職掌とする家の系図もあったらしいこと。皇別の諸氏が源氏平氏橘氏の順で配列され,これに神別の藤原氏の諸流が配列されていたらしいこと。現行のものでは,藤原氏を中心にして大半がその系図で占められている。まず北家の摂関家,次に北家藤原冬嗣以降に分れた子孫諸流,次に冬嗣以前に分れた支流を配列し,以下南家式家京家の順である。また現行本にある菅原氏系図は諸道系図の四道のうち紀伝道の一部,清原氏系図は同じく明経道の一部,小槻氏系図は同じく算道の一部であろうと思われる。皇別諸氏の系図でも,平氏系図を欠くものや,増補記事の詳疎の差があるなど一様ではない。その後,この系図を筆写した人々には,甘露寺親長三条西実隆,中御門宣胤 (1442~1525) など一流の貴族が多く,彼らの学識によって種々の加筆校訂がみられたものと思われる。大部のため,転々書写されていくうちに種々の異本が生じたものであろう。現行の写本では 30冊,20冊,18冊などといろいろである。古代から中世の貴族の家系を調べるうえで不可欠のもの。『国史大系』所収。

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改訂新版 世界大百科事典 「尊卑分脈」の意味・わかりやすい解説

尊卑分脈 (そんぴぶんみゃく)

諸家の系図を集成したもので,姓氏家系を調べるのには欠くことのできない重要な史料である。洞院公定(とういんきんさだ)(1340-99)著。内題には《新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集》とあるが,普通《尊卑分脈》の名で呼ばれ,また《大系図》とも称される。公定以後の書継ぎが多く,全体の体裁も不統一で,その原形や成立の由来は明らかでない。今日伝わる写本には収める氏に出入りがあり,公定の編纂したものが,どのような氏までを含めたものであったかわからないが,後に多くの氏の系図も集められるようになったので,《大系図》の名が生まれたのであろう。写本のうち,前田家所蔵林家訂正本がもっとも善本と思われるが,同じく前田家の脇坂本,宮内庁書陵部所蔵谷森本も比較的善本で,藤原,源,平,橘,菅原,中臣(なかとみ),大江,高階(たかしな),清原,中原,小槻(おづき),和気(わけ),丹波,賀茂,安倍,紀,多治比,物部(もののべ),坂上,蘇我,小野などの氏を収め,もっとも内容が多い。活字本には《故実叢書》本12冊,《新訂増補国史大系》本4冊があり,それぞれ索引を付している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尊卑分脈」の意味・わかりやすい解説

尊卑分脈
そんぴぶんみゃく

正しくは「編纂本朝(へんさんほんちょう)尊卑分明図」といい、また「諸家大系図」ともいう。南北朝時代に洞院公定(とういんきんさだ)が企画し、猶子(ゆうし)の満季(みつすえ)、その子の実煕(さねひろ)ら洞院家代々の人々が継続編纂した諸家の系図の集大成で、氏によっては室町期の人物まで収められている。源(みなもと)・平(たいら)・橘(たちばな)・藤原その他主要な諸氏系譜を類別にまとめている。室町期を通じて、増補・改訂が行われ、さらにそれらが転写されて、異本が流布するとともに巻の序列もまちまちになった。流布本には、30巻本、20巻本、14巻本など種々ある。系図のなかの個人の履歴に関する注記には、他の史料にみられない史実が記されていることがあり、姓氏家系の研究のみならず、歴史研究のための史料価値も高い。前田家所蔵脇坂(わきざか)本を底本として『新訂増補国史大系』に所収。

[新井孝重]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「尊卑分脈」の解説

尊卑分脈
そんぴぶんみゃく

藤原氏・橘氏・源氏・平氏その他の諸氏の系図集。10巻。南北朝後期,洞院公定(とういんきんさだ)編。のちの手も多く加わって,室町時代以降の系図も収録されたが,当初存在した帝皇系図や諸道系図は失われるなど,原形は不明な点が多い。原題は「新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集」。各巻ごとに,本文の前に目録や略系図などをおくのがもとの形態とされる。伝本による差異も大きいが,「新訂増補国史大系」に,林家訂正本を底本として諸本・諸記録で校訂・収録され,利用に便利。成立時期がおよそ明らかな点,網羅的に収録して注記などの情報が豊富な点で,系図集として最も史料的価値が高く,とくに藤原氏の部分が貴重。

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百科事典マイペディア 「尊卑分脈」の意味・わかりやすい解説

尊卑分脈【そんぴぶんみゃく】

源氏・平氏・藤原氏・橘氏など主要な諸氏の系図。10巻。1376年成立。南北朝時代末,洞院公定(とういんきんさだ)〔1340-1399〕の編著で,現存する伝本はさらに後人が加筆したものである。諸氏系図のうち最も信用できるもの。
→関連項目系図田仲荘

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旺文社日本史事典 三訂版 「尊卑分脈」の解説

尊卑分脈
そんぴぶんみゃく

南北朝末期,左大臣洞院公定 (とういんきんさだ) が,源・平・藤・橘をはじめ主要諸氏の系図を集成したもの
その後も多くの人に加除・訂正・増補されたが,日本の系図中,質量ともにすぐれ,家系調査には不可欠の史料。

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世界大百科事典(旧版)内の尊卑分脈の言及

【系図】より

…奈良時代後半から平安時代にかけて,系譜官撰の影響もあり,皇室をはじめ諸家には系図が多く編纂所蔵されていたと考えられる。室町時代にそれら堂上公家,諸道の家,上級武家の系譜を私的に集大成したものが,洞院公定の《尊卑分脈》である。誤りも多いが貴重な史料である。…

※「尊卑分脈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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