小人(読み)こびと

精選版 日本国語大辞典 「小人」の意味・読み・例文・類語

こ‐びと【小人】

〘名〙
背丈のきわめて短小な人。一寸法師などの類。想像上のものについてもいう。侏儒(しゅじゅ)。こびっちょ。〔和漢三才図会(1712)〕
武家の、雑用を務めた小者。普通、中間(ちゅうげん)より下級
信長公記(1598)首「其時、織田勝左衛門御小人のぐちう杉若、働きよく候に依て」
江戸時代幕府諸藩職名小人頭(こびとがしら)に属して雑役に従事したもの。幕府の小人は、一五俵、一人扶持(ぶち)、その数四五〇~五〇〇人ぐらいで、それを三組に分け、各組に頭一人、組頭二人を置いた。小者。

ちいさ‐ご ちひさ‥【小人】

〘名〙 背の低い人。こびと。
塵袋(1264‐88頃)一「ちゐさこの国と云ふ事は実にありや〈略〉東荒に少人国あり人の長(たけ)九寸」 〔書言字考節用集(1717)〕

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デジタル大辞泉 「小人」の意味・読み・例文・類語

しょう‐にん〔セウ‐〕【小人】

子供入場料運賃などで小学生以下のものをいう。→大人だいにん中人ちゅうにん
[類語]子供小児しょうに児童学童わらべ・わらんべわらわ童子どうじ幼子おさなご幼童ちびっこわっぱこわっぱ小僧餓鬼がき少年

しょう‐じん〔セウ‐〕【小人】

幼少の人。子供。しょうにん。⇔大人たいじん
身長の低い人。また、からだが並みはずれて小さい人。
度量品性に欠けている人。小人物。「小人の腹は満ち易し」⇔大人たいじん
身分の低い人。
「―の家の女つつしみて身をもて」〈十訓抄・五〉
男色相手をする少年。若衆わかしゅ
「―のもてあそび七百二十五人」〈浮・一代男・一〉
[類語]匹夫小物小人物鼠輩

こ‐びと【小人】

背丈が非常に低い人。侏儒しゅじゅ
物語などに登場する、からだが小さい想像上の人物。
武家で、雑役に従った身分の低い人。
江戸時代、幕府・諸藩の職名。雑役に従事した役。小者。

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百科事典マイペディア 「小人」の意味・わかりやすい解説

小人【こびと】

(1)小人症。医学的には身体,特に身長の異常に小さい場合をいう。小人症は平均身長より標準偏差にして3以上小さい場合をいい,体質性のもの(ピグミーなど)のほか,内分泌異常や骨疾患によるもの,遺伝性のものが多く,幼児期の栄養失調,腎疾患,先天性心臓病なども原因となる。脳下垂体性小人症は脳下垂体前葉の成長ホルモン欠乏によるもので,小児様顔貌(がんぼう),性器発育不全を伴うが知能は正常である。甲状腺ホルモンの不足によるものは,クレチン病という。原発性卵巣形成不全(ターナー症候群)では,外見上の小人症以外の異常を認めないが,性染色体Xが欠けている。性早熟性小人症は性ホルモンの異常分泌亢進により骨端線閉鎖が早く,身長は小さい。またダウン症候群も発育障害を伴う。小人症の原因となる骨疾患には,軟骨異栄養症とくる病がある。前者は胴は普通で四肢が短く,手関節,足関節骨は正常で,特異の形態を示す。原因の明らかな小人症には,その治療を行うが,発育期を過ぎたもの,知能障害に対する効果は少ない。(2)世界各地の民間伝承,神話などに登場する,体が非常に小さく,しばしば超自然的な能力をもった存在。侏儒(しゅじゅ)ともいう。神的存在であったり,異民族のイメージであったり,精霊や霊魂がその形をとると信じられていたり,さまざまである。ヨーロッパの妖精や日本の一寸法師桃太郎などの〈小さ子〉など,いずれも〈小さい〉という一般的には負の部分を,別世界や特殊な能力と結びつけ,日常的な〈ふつうのサイズ〉の生活を再確認するための役割を担わされているといえる。宮廷やサーカスにおける道化としての小人も,こうした小人観を前提としている。→巨人
→関連項目オベロンカシン=ベック病

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小人」の意味・わかりやすい解説

小人
こびと

江戸幕府の職制。小者ともいう。黒鍬者(くろくわのもの)、中間(ちゅうげん)、駕籠(かご)者、掃除者とともに五役と一括される軽輩。早くも天正(てんしょう)年間(1573~92)にその存在が認められる。諸女中、奥役人の出入りの供奉(ぐぶ)、口番、御使また用品の運搬などを職務とした。その数450人ないし500余人(役高15俵一人扶持(ぶち)、御目見(おめみえ)以下、羽織袴(はおりはかま)役、譜代(ふだい)席。ただし三河以来の由緒をもつ18家は世禄(せろく)35俵二人扶持~32俵一人扶持)に及び、それが3組に分かたれ、各組に頭1人(目付支配、役高80俵、御目見以下、上下(かみしも)役)が置かれた。幕末には本郷金助(ほんごうきんすけ)町と湯島切通(ゆしまきりどおし)の吏庁に分属した。諸藩にも同様のものがみられた。

[北原章男]

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世界大百科事典 第2版 「小人」の意味・わかりやすい解説

こびと【小人】

江戸幕府,諸藩の職名。江戸幕府では黒鍬者,中間(ちゆうげん),駕籠者,掃除者とともに五役と称される軽輩で,諸女中,奥役人の出入りに供し,口番,御使または用品の運搬などの雑役に従事した。その数450人ないし500余人に及び,役高15俵一人扶持,御目見以下,羽織袴役,譜代席であった(三河以来の由緒をもつ18家は家禄35俵二人扶持~32俵一人扶持)。3組に分けられ,各組に頭1人(役高80俵,御目見以下,上下役,目付支配)がおかれた。

しょうじん【小人 xiǎo rén】

中国において,〈君子〉の反対語。身分の低い者,小者。召使い,奴僕(ぬぼく)をさす語。《論語》陽貨篇には〈女子と小人とは養い難し〉とある。また,才徳のそなわった〈君子〉に対し,品性いやしい人,欲ぶかく性根のひねくれたつまらぬ人物,すなわち小人物をいう。日本では,幼少または少年をさす。おとな(成人)の対,しょうにん(小人)。さらに,男色の相手の少年,背の低い人,こびと(小人)をもさす。【戸川 芳郎】

こびと【小人 dwarf】

侏儒ともいう。世界各地の神話や民間伝承に登場する,異常に小さな体をもち,そのためにかえって超人的な霊能を発揮するとされる存在。巨人が物理的な力において人間にまさる反面,しばしば知力に欠けると物語られるのとは対照的に,小人は物理的な力では人間に劣るが知力ではまさると性格づけられることが多い。小人伝説には,次のような類型が見られる。(1)いたずらのために矮人化されて天界を追放された神的存在。(2)太古の人類の生き残りとしての小人伝説。

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普及版 字通 「小人」の読み・字形・画数・意味

【小人】しよう(せう)じん

身分の低い者。また、学徳のない者。〔論語、為政〕君子はにして比(特定の者だけに親しむ)せず、小人は比してせず。

字通「小」の項目を見る

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世界大百科事典内の小人の言及

【アイリス】より

…丈がやや低く,ジャーマン・アイリスの名のもととなったドイツアヤメI.germanica L.(英名German iris)も起源不明の雑種である。ビアディッド・アイリス群に属する野生種は約40種あり,園芸上40cm以下をドワーフdwarfと呼び,ナンキンアヤメI.pumila L.もこの群に含まれる。(3)ビアドレス・アイリス群(外花被片にひげ状突起のないもの) (a)ルイジアナ・アイリス類Louisiana irises アメリカのミシシッピ川流域に自生するチャショウブI.fulva Ker‐Gawl.(英名copper iris)など5種とそれらの天然交雑種や多数の園芸品種があり,花色が豊富で,花はカキツバタやハナショウブに似る。…

【矮星】より

…半径の比較的小さい星。巨星の反義語。太陽に代表される主系列星と,それよりも半径の小さい星を矮星という。主系列星の半径はその星の質量によって異なるが,2×1010cm~1×1012cmの範囲にある。主系列星よりも半径の小さい星を同じ光度の主系列星に比べると,その表面温度はより高く,その色はより青い。そのような星の典型的なものは白色矮星で,その半径は109cm程度しかない。準矮星は主系列星と白色矮星の中間的なものであり,ウォルフ=ライエ星や惑星状星雲の中心星も矮星である。…

【北欧神話】より

…男はアスクAskr,女はエンブラEmblaと呼ばれ,これから人類が発した。ユミルの肉の中にうごめく蛆虫から神々は小人dvergrをつくった。小人は地中や岩の間に住み,姿は小さく醜いが,鍛冶に長じ,よい武器やみごとな装飾品をつくる。…

【御広敷番】より

…責任者は番頭で留守居支配,200石高,役料200俵,人数は9人,交代制で昼夜詰切りで勤務した。番頭の支配下に御広敷添番,同並,御広敷伊賀者,御広敷進上番,御広敷小人,御広敷小仕事之者などが所属する。御広敷御門の長屋中に伊賀者・添番の詰所,小人部屋があり,玄関を入ると番頭部屋・添番詰所があり,玄関正面の奥に伊賀者番所があって,この番所が厳重な板戸を隔てて御殿向に続き,ここが御広敷からの御錠口となっていた。…

【小者】より

…一般には若年の者,身体の小柄な者のことをいうが,鎌倉・室町・戦国時代には,武家に仕えて雑務を担当する軽輩のことをいい,〈小人(こびと)〉とも称している。朝廷,公家の場合の小舎人(こどねり)に相当するといわれる。…

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