日本大百科全書(ニッポニカ) 「小党分立」の意味・わかりやすい解説
小党分立
しょうとうぶんりつ
政治的利害関心の多様化に対応して、多数の小政党の多様な結合を導き出す状況をとらえて小党分立と表現する。西欧の政党政治においては小党分立が顕在化し、多党制による連立政権を導き出している例があるが、日本においては、小党分立は二大政党制ないし一党優位体制下における異議申し立てを保証する少数派の構造として潜在化している。たとえば、大政党を構成する派閥連合は、二大政党制に底在する小党分立の動向を取り込んだ結果となっている。政党政治において、小党分立は、多数決原理によって招来される大政党結成の趨勢(すうせい)に解消されない基底的動向となっている。
大日本帝国憲法体制下の政党政治において政友会、民政党の政権交代が一時期を画していたが、その場合も複数の労働者・農民の党が衆議院の議席を一定数占めて、普通選挙実施の状況に対応していた。第二次世界大戦後、日本国憲法体制下の最初の総選挙では一人一党を含む新党が250ほども結党され、政党政治の原初形態を提示していた。
日本の議会政治は1889年(明治22)以降の経験を蓄積しているが、そこでは相対的多数派を安定政権として確保する方策として二大政党制が求められるのが常であった。近時、選挙制度として小選挙区制が採用され、二大政党制実現の条件が制度化される事態が生じている。しかし、今日までのところ、日本の政党政治において、二大政党制が安定し、確定された制度となる事態はもたらされていない。逆に、小党分立は、政党制として確定されることはないが、あるいは政権与党に対する少数反対派の存在意義として、または大政党内部における反主流派の存在意義として、とだえることのない党派の理念として継承されている。
[高橋彦博]