日本大百科全書(ニッポニカ) 「小山祐士」の意味・わかりやすい解説
小山祐士
こやまゆうし
(1906―1982)
劇作家。広島県生まれ。慶応義塾大学卒業後、岸田国士(くにお)に師事して、1932年(昭和7)雑誌『劇作』の創刊同人となる。同誌発表の戯曲『十二月』(1933)、『瀬戸内海の子供ら』(1934)が築地(つきじ)座で上演されて好評を得、劇作家として認められた。太平洋戦争中故郷に疎開し、戦後49年(昭和24)上京。俳優座上演の『二人だけの舞踏会』(1956)により岸田演劇賞を受賞。ほかに『黄色い波』(1961)、『泰山木(たいさんぼく)の木の下で』(1962)など。「瀬戸内海の詩人」とよばれ、島々を舞台に、人物の心理を詩情豊かに描いたが、戦後の作には、広島への原爆投下への怒りと戦争・公害の告発を庶民の生活のなかにとらえたものが多い。『小山祐士戯曲全集』により芸術選奨文部大臣賞を受賞。
[藤木宏幸]
『『小山祐士戯曲全集』全5巻(1967~71・テアトロ)』