精選版 日本国語大辞典 「小」の意味・読み・例文・類語
ちいさ・い ちひさい【小】
① 空間を占める体積・容積・面積・身長などが小である。小形である。
※伊勢物語(10C前)六九「ちひさき童をさきに立てて」
※枕(10C終)一五一「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」
② 年齢が少ない。成熟していない。幼い。
※あらくれ(1915)〈徳田秋声〉一「稚(チヒサ)いをりから善く外へ出て」
③ 音量が比較的に小である。音、声などが低い。
※順徳院御琵琶合(1220)「音勢もとよりはちいさくなりたれども」
※風立ちぬ(1936‐38)〈堀辰雄〉風立ちぬ「小さく叫んだ」
④ 抽象的なものごとについて、その程度、度合、価値などが比較的に小である。
(イ) 事柄の価値や重要性が乏しい。些細である。
※天草版金句集(1593)「Chijsai(チイサイ) アヤマリヲ ヤメネバ、ノチニワ ヲウキナ アヤマリト ナル」
(ハ) 卑下した状態にある。身を縮める思いでいる。また、つつましやかである。→ちいさくなる。
(ニ) 単位が下である。こまかい。
※人情本・春色恵の花(1836)二「ちひさき金を二つばかり」
(ホ) 数量や程度がわずかである。
ちいさ‐げ
〘形動〙
ちいさ‐さ
〘名〙
こ【小】
〘接頭〙 名詞や用言の上に付いて、小さい、わずかな、などの意味を加える。
① 名詞の上に付いて、その物が、小さい、細かい、などの意を表わす。親愛の情の意を含むこともある。「小島」「小山」「小屋」「小石」など。
※古事記(712)下・歌謡「宮人の 脚結(あゆひ)の古(コ)鈴 落ちにきと 宮人とよむ 里人もゆめ」
② 名詞の上に付いて、その量がわずかであることを示す。いささかの。「小降り」「小銭」「小人数」など。
※万葉(8C後)一一・二四五六「ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ」
③ 人、あるいは生き物を表わす名詞の上に付いて、年若なものであることを表わす。若い。後輩の。幼い。「小冠者」「小犬」「小童」など。
※源氏(1001‐14頃)乙女「小侍従やさぶらふ」
④ 数量を表わす名詞、数詞の上に付いて、その数量にはわずかに及ばないが、ほぼそれに近い意を表わす。およそ。ほぼ。「小半時」「小一時間」「小一里」など。
※北野天満宮目代日記‐目代昭世引付・天正一三年(1585)正月「十四日の小四つ時まで待候へ共」
⑤ 名詞の上に付いて、下の述語の表わす動作・状態の量や程度の小さいことを表現する。人体の一部を示す名詞に付くことが多い。すこし。ちょっと。「小首をかしげる」「小当たりに当たる」など。
※宇治拾遺(1221頃)一五「袖うちおろして、こつばきはきてゐたりけり」
※四河入海(17C前)二〇「くいくいと小腹が立て」
⑥ 動詞・形容詞・形容動詞・副詞などの上に付いて、その動作・状態の量や程度が小さいことを表わす。すこし。なんとなく。「小ざっぱり」「小高い」など。
※古事記(712)下・歌謡「大和の この高市(たけち)に 古(コ)高る 市の高処(つかさ)」
⑦ 名詞や用言などの上に付いて、軽んじたり、やや馬鹿にしたような意味を表わす。なまはんかな。「小せがれ」「小憎らしい」など。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)酈陸朱劉叔孫第一三「堅儒は小餓鬼めがと云やうな心ぞ」
⑧ 名詞や用言の上に付いて、ほとんど意味を加えることなく、語調を整えたり、強めたりするために添える。「こ甘い」「小しゃく」など。
しょう セウ【小】
[1] 〘名〙
① 形の小さいこと。また、長さ、幅、広さ、重さなどの程度が少ないこと。また、そのもの。⇔大。
※菅家文草(900頃)四・北溟章「挙レ小将レ均大、惟鵬自対レ蜩」
※露団々(1889)〈幸田露伴〉八「小(セウ)を捨て大を取り給ふは、当然の事に付き」 〔孟子‐梁恵王・下〕
② =しょう(小)の月
※米沢本沙石集(1283)五末「長能卿の三月の小なりける年、名歌よみてこそ侍れとて」
※破戒(1906)〈島崎藤村〉一六「今月は君、小だらう。二十九、三十と、十一月も最早二日しか無いね」
③ 大刀の「大」に対して小刀をいう。脇差。
※咄本・鹿の巻筆(1686)四「我が所在は刀脇差なれば、大小と判じた」
④ 田積の一単位。太閤検地以前の一反三六〇歩(約一二アール)時代はその三分の一の一二〇歩、太閤検地により一反三〇〇歩(約一〇アール)となってからは一〇〇歩(約三・三アール)の面積をいう。
※正長元年記(1428)九月二七日「田地之一段三百六十歩、巨細令二存知一者希也〈略〉小と云ふは、一段の三分の一を云也」
⑤ 能楽で小鼓(こつづみ)のこと。
[2] 〘語素〙
① 名詞の上に付いて、規模の小さいもの、程度が大したことのないものを表わす。
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「我邦の政事家は主義の小(セウ)異同を争ひ」
② 人名の上に付けて、父子関係のうちの、子であることを表わす。「小デュマ」「小ヤコブ」など。
ちっちゃ・い【小】
〘形口〙 「ちいさい(小)」の変化した語。
① =ちいさい(小)①
※咄本・滑稽即興噺(1794)五「とさんとさんあのちっちゃい唐子が壺わってゐるゑんまは何ぢゃ」
② =ちいさい(小)②
※不如帰(1898‐99)〈徳富蘆花〉下「卿(おまへ)が幼少(チッチャ)かった頃、よく阿爺(おとうさん)に負さって」
ちいさ ちひさ【小】
(形容詞「ちいさい」の語幹から。→ちいさな)
[1] 〘形動〙 小さいさま。
※人情本・春色恵の花(1836)二「ちいさなる声にて」
[2] 幼児。
※浄瑠璃・いろは蔵三組盃(1773)二「ドレドレちいさよ。小さ刀伯父におこせと引たくれば」
ちっさ・い【小】
〘形口〙 「ちいさい(小)」の変化した語。
※雑俳・西国船(1702)「はいらする・をどりのいろにちッさい子」
※十三夜(1895)〈樋口一葉〉下「お内儀さんも御健勝(おまめ)か、小児(チッサイ)のも出来てか」
ちさ・い【小】
〘形口〙 ちさ・し 〘形ク〙 「ちいさい(小)」の変化した語。
※経信母集(11C中か)「ちさき家」
※童謡・こんこん小山の(1921)〈北原白秋〉「こんこん小山のお月さま、ついたち二日はまだ小(チ)さい」
ちっこ・い【小】
〘形口〙 =ちいさい(小)
※石川五右衛門の生立(1920)〈上司小剣〉一三「あんな小ッこいもんが色事も存じまへんでへうし」
ちいさい ちひさい【小】
〘名〙 幼児。幼年。
※浮世草子・傾城歌三味線(1732)二「お幼児(チヒサイ)を介抱してしんぜましや」
ちいちゃ・い ちひちゃい【小】
〘形口〙 「ちいさい(小)」の変化した語。
※団栗(1905)〈寺田寅彦〉「大きい団栗、ちいちゃい団栗、みいんな利口な団栗ちゃん」
ちいさ・し ちひさし【小】
〘形ク〙 ⇒ちいさい(小)
ちさ・し【小】
〘形ク〙 ⇒ちさい(小)
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