尽す（読み）ツクス

デジタル大辞泉

つく・す【尽（く）す】

［動サ五（四）］
１ そのことのために全部を使ってしまう。ある限りを出しきる。「手を―・す」「最善を―・す」
２ その事柄の極にまで達する。成しうるまでする。きわめる。「善美を―・した建築」「ぜいたくの限りを―・す」
３ 果たす。全うする。「本分を―・す」「義務を―・す」
４ 他の者のために精一杯働いたり努力したりする。尽力する。「社会に―・す」「夫に―・す」
５ すべてを表現する。「辛酸は筆舌に―・しがたい」
６ （動詞の連用形に付いて）全部…する。すっかり…してしまう。「書き―・す」「言い―・す」
[可能]つくせる
[類語]励む・奉仕・奉公・寄与・貢献・裨益ひえき・尽力・骨身を惜しまず・粉骨砕身・身を粉こにする・身を削る・骨身を削る・命を捧ささげる・ボランティア・サービス・アフターサービス・ケア・アフターケア・ボランタリー・自発的・公共心・公徳心・犠牲・犠牲的・献身・献身的・捧ささげる・挺身ていしん・捨て石・利他・利他心・志願・慈善・篤志・有志・殉ずる・篤志家

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

つく・す【尽・竭・殫】

1. 〘 他動詞 サ行五（四） 〙 ( 「つきる（尽）」の他動詞形 )
2. ① つきるようにする。
   1. (イ) なくする。終わりにする。
      1. [初出の実例]「大土は採りつくすとも世の中の尽(つくし)得ぬ物は恋にしありけり」(出典：万葉集（８Ｃ後）一一・二四四二)
      2. 「我等が命を尽(ツクサ)むと欲(おも)ひてするにあらずあらむや」(出典：地蔵十輪経元慶七年点（883）四)
   2. (ロ) あるかぎり出す。全部出しきる。つきるまでする。
      1. [初出の実例]「うはへなき妹にもあるかもかくばかり人の心を尽(つくさ)く思へば」(出典：万葉集（８Ｃ後）四・六九二)
      2. 「鈴虫の声のかぎりをつくしてもながき夜あかずふるなみだ哉」(出典：源氏物語（1001‐14頃）桐壺)
3. ② その極まで達する。できるかぎりする。きわめる。
   1. [初出の実例]「永く苦海を竭(ツクシ)て罪を消除し」(出典：西大寺本金光明最勝王経平安初期点（830頃）五)
   2. 「凞々たる歓楽を罄(ツ)くさんが為めのみ」(出典：春窓綺話（1884）〈高田早苗・<著者>坪内逍遙・<著者>天野為之訳〉一)
4. ③ ( 動詞の連用形に付いて ) 十分にする、すっかりする、余すところなくするの意を添える。「言いつくす」「書きつくす」など。
   1. [初出の実例]「Yomi(ヨミ) tçucusu(ツクス)。モノヲ cuitçucusu(クイツクス)」(出典：日葡辞書（1603‐04）)
   2. 「マッチの焔を石油の中に落したるが、忽満室の火となり、遂にその町を類焼し尽しぬ」(出典：日本読本（1887）〈新保磐次〉五)
5. ④ ( 「力を尽くす」などを略した表現で ) 他のもののために働く。人のために力を出す。
   1. [初出の実例]「個人が国家に対して竭すべきの義務あるが如く」(出典：真善美日本人（1891）〈三宅雪嶺〉国民論派〈陸実〉)
6. ⑤ ( 「意を尽くす」などを略した表現で ) 十分に表現する。くわしく述べる。
   1. [初出の実例]「口でさへつくされぬ筆には中々まはらぬと」(出典：浄瑠璃・傾城反魂香（1708頃）中)
7. ⑥ 心をよせる。熱をあげる。
   1. [初出の実例]「地の女中にはしゃれたる奥様、旦那様のつくさるる相肩の太夫がな、見にござるであらふと」(出典：浮世草子・傾城歌三味線（1732）二)
8. ⑦ ( 「あんだらつくす」「阿呆(あほう)をつくす」「馬鹿をつくす」などの略から ) 「言う」「する」の意の俗語となる。
   1. (イ) 「言う」をののしっていう語。ぬかす。ほざく。〔評判記・色道大鏡（1678）〕
      1. [初出の実例]「大(おほ)ふうな事、つくしやがって」(出典：洒落本・色深睡夢（1826）下)
   2. (ロ) 「する」をののしっていう語。しやがる。しくさる。
      1. [初出の実例]「起請をとりかはすからは偽りは申さないと存じ、つくす程にける程に」(出典：浄瑠璃・心中二枚絵草紙（1706頃）上)

出典　精選版 日本国語大辞典