居杭(読み)イグイ

デジタル大辞泉 「居杭」の意味・読み・例文・類語

いぐい〔ゐぐひ〕【居杭/井杭】

狂言。居杭という者が、清水観音で頭にかぶると姿の消える頭巾ずきんを手に入れ、周囲の人々をからかう。

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精選版 日本国語大辞典 「居杭」の意味・読み・例文・類語

いぐいゐぐひ【居杭・井杭】

  1. 狂言。各流。清水の観世音からたまわった頭巾をかぶったところ姿が見えなくなった居杭(井杭)を探すため、何某算置を呼ぶ。算置がいろいろ占うが、居杭はいたずらを仕掛け、算置と何某とを喧嘩させる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「居杭」の意味・わかりやすい解説

居杭
いぐい

狂言の曲名雑狂言和泉(いずみ)流では『井杭』と書く。お出入りの家でいつも頭をぽんぽんたたかれるのに閉口した居杭(シテ)が、清水(きよみず)の観世音に祈願して頭巾(ずきん)を授かる。この日もいつものようにたたかれるので、さっそく頭巾をかぶると姿が消えてしまう。主人が通りかかった易者居所を占わせると、ことごとく当たるので、居杭はそのつど居所を変え、算木を隠したり、2人の耳を引っ張ったり、いたずらのしほうだい。最後は、さまざまないたずらが互いに相手のせいだとけんかを始めた2人の前に姿を現し、追い込まれる。今日では居杭を子供が演じることが多く、無邪気な童話的世界がいっそう生き生きと楽しいものになっている。類型的な登場人物が多い狂言のなかで、易者が活躍するなど市井の風俗を描いて珍しい。

[油谷光雄]

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