屋台(読み)ヤタイ

デジタル大辞泉 「屋台」の意味・読み・例文・類語

や‐たい【屋台/屋体】

道路・広場などで立ち売り商売をするための台を設けた、屋根付きの小さな店。台車をつけたり、自動車を改造したりして移動できるものもいう。屋台店床店とこみせ
祭礼のときなどに、飾り物をしたり、踊り手囃子方はやしかたをのせたりして練り歩く、小屋形の台。もと御神体を祭って持ち運ぶためのもの。山車だし練り物檀尻だんじり。「踊り―」
能・歌舞伎などで、宮殿・社寺・家屋として舞台上にしつらえる作り物や大道具
家・店のつくり。また、家をののしっていう語。
「これの―が三浦屋と申すべいか」〈伎・伊達競阿国戯場
[類語](1露店夜店売店スタンド

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精選版 日本国語大辞典 「屋台」の意味・読み・例文・類語

や‐たい【屋台・屋体・家体】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 小さい家の形をした台。祭礼などの際、中に御神体をまつり、持ち運ぶようにしたもの。また、台車をつけ人形、かざり、囃子方(はやしかた)などをのせてねり歩く道具。特に踊屋台のこと。また、底抜け屋台もある。だし。ねりもの。〔物類称呼(1775)〕
    1. [初出の実例]「やたいを梅の大木にして、囃子方梅の花笠」(出典:咄本・無事志有意(1798)祭り)
  3. 能楽、演劇などで、舞台の上にしつらえた、家屋・宮殿・社殿・仏閣・陣屋にみせる簡素化された建築物。
    1. [初出の実例]「家体(ヤタイ)御簾を明ての面影まことの女井筒も」(出典:浮世草子・男色大鑑(1687)五)
  4. 辻、門前などに屋根をかけて、立売りの商売をする簡単な店。屋台店。とこみせ。また、台車をつけ移動できるように作った、屋根つきの小型の飲食用店舗。
    1. [初出の実例]「やたいの鮓より人のすし」(出典:洒落本・南品傀儡(1791))
  5. 女郎屋。また、その家をののしってもいう。
    1. [初出の実例]「此女郎の客しごくわけのわるき切文をおくりて、ほかの屋台へゆかんとする」(出典:洒落本・蕩子筌枉解(1770)哥舒歌)
  6. 家、店などの作り。かまえ。また、家をののしっていうのにも用いる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「否(いな)といはば公家でも御所でも乗込んで、やたい共に馬足にかけ、微塵にするがサアなんと」(出典:浄瑠璃栬狩剣本地(1714)一)
  7. やたいぼね(屋台骨)」の略。
    1. [初出の実例]「共和国の屋台を現実に揺さぶり憲法を破壊しようとする強烈な力だったのである」(出典:ブウランジェ将軍の悲劇(1935‐36)〈大仏次郎〉ブウランジスムの進軍)

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改訂新版 世界大百科事典 「屋台」の意味・わかりやすい解説

屋台 (やたい)

(1)屋形のついた移動できる台で,祭礼や民俗芸能の引きもの,能の作り物,歌舞伎の大道具などの名称。屋体とも書く。祭礼の引きものには山車(だし),山,鉾(ほこ),地車(だんじり)等があり,これらを総称して屋台ともいう。山車や山,鉾には来臨する神の目印として柱を高くかかげるといい,地車の類には屋形だけで柱がない。民俗芸能では,屋形のついた車に舞台風のものを作り,踊り手や囃子方がその上に乗って歌舞や芝居などを演じる。とくに手踊を中心とするものを踊屋台といい,囃子方が祭囃子などを奏するものに囃子屋台がある。また長野県飯田地方には獅子の胴幕の中に囃子方が入る獅子屋台がある。能の作り物の屋台は宮(みや)ともいい,《邯鄲(かんたん)》《鶴亀》《西王母》などの宮殿として用いられる。
執筆者:(2)〈屋台〉による街頭での商売については〈物売〉の項を参照されたい。

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