精選版 日本国語大辞典 「山水画」の意味・読み・例文・類語
さんすい‐が ‥グヮ【山水画】
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東洋画の画題の一つ。広義には風景画のこと。人物画、花鳥画とともにもっとも多く描かれた。山水、樹木、岩石など自然の景観を描くもので、景物としては人物、楼閣、風俗、鳥獣などをも含み、四季と組み合わされることがある。中国湖南省の洞庭湖(どうていこ)や浙江(せっこう)省の西湖(せいこ)周辺の景勝に取材した「瀟湘八景図(しょうしょうはっけいず)」や「西湖図」なども広くは山水画に含まれるが、普通、山水画とよぶ場合には、単にそうした特定の地を写し出すのみならず、個々の名勝を超えた自然の普遍的な姿を表現しようとしたものが多い。
[榊原 悟]
早くも漢代には、神仙図などの部分として山水が宗教的な象徴の意味を込めて描かれていたが、続く六朝(りくちょう)時代になってその基本理念が確立した。宗炳(そうへい)の『画山水序』がそれで、彼は晩年、遊歴した名山をすべて壁に描き、坐臥(ざが)してこれに向かったといわれ、彼によって山水臥遊の心境の表現を目ざした中国山水画の基本方向が決定づけられた。唐代の呉道玄(ごどうげん)や李思訓(りしくん)・李昭道(しょうどう)父子による「山水の変」いわゆる山水画の革新を経て、やがて北宋(ほくそう)時代になると山水画は全盛を迎え、一時代を画するに至る。李成(りせい)、范寛(はんかん)、許道寧(きょどうねい)、燕文貴(えんぶんき)、董源(とうげん)、巨然(きょねん)らは、咫尺(しせき)に千里の望を収め、山水自然の無窮の広がりを画面に写し取ることに成功する。さらに郭煕(かくき)によって平遠・高遠・深遠の三遠法がくふうされ、これによって自己完結した理想的かつ総合的な山水表現が達成されることになる。続く南宋時代には、詩情の表出を主眼に、対象を限定し、余白との呼応によって自然の広がりと変化を暗示する朝廷の画院画家、馬遠(ばえん)や夏珪(かけい)の辺角構図、残山剰水(ざんざんじょうすい)形式が流行した。一方この時代には、牧谿(もっけい)、玉澗(ぎょくかん)らの画僧も活躍し、作品も鎌倉時代以降日本に伝えられ大いに珍重された。
元代には四大家といわれる呉鎮(ごちん)、黄公望(こうこうぼう)、倪瓚(げいさん)、王蒙(おうもう)らが出て文人山水画を台頭させ、それぞれ個性的な画風を完成する。続く明(みん)代には画院の流れをくむ浙派(せっぱ)と元の四大家の流れをくむ沈周(ちんしゅう)、文徴明(ぶんちょうめい)らの呉派とがあったが、のち董其昌(とうきしょう)の出現によって後者の文人画の系統の優位性が説かれ、四王呉惲(しおうごうん)(王時敏(おうじびん)、王鑑(おうかん)、王翬(おうき)、王原祁(おうげんき)、呉歴(ごれき)、惲格(うんかく))らの活躍とともに、以後は文人画としての南宗画(なんしゅうが)風が盛んとなった。
[榊原 悟]
飛鳥(あすか)時代から山水画の画題はあり、各時代に中国山水画の様式的影響を受けながら制作されてきたが、これとは別に日本固有の四季絵や名所絵の伝統にのっとり、日本の四季の風物を描き込んだ大和絵(やまとえ)の、いわゆる山水屏風(せんずいびょうぶ)も数多く制作されたと推定される。しかし山水画がとりわけ盛行をみるのは、鎌倉時代以後、宋元の水墨山水画が輸入されてからのことで、とくに室町期の五山叢林(そうりん)を中心とする禅宗社会では、山水画は詩画軸という独得の形式によって大いに享受された。周文、雪舟、雪村、三阿弥(さんあみ)(能阿弥、芸阿弥、相阿弥)や小栗宗湛(おぐりそうたん)らはいずれも山水画に本領を発揮、ことに雪舟は、実景描写に腐心することによって、中国画の模倣から脱し、独自の日本的山水画を描くことに成功した。
狩野正信(かのうまさのぶ)、元信(もとのぶ)以降、永徳を経て、桃山時代になると、山水画も他の花鳥画や人物画などと同様著しく装飾的になり、やがて江戸初期の狩野探幽(たんゆう)によって、大和絵との融合から、平明で瀟洒(しょうしゃ)な、まさしく日本画とも称さるべき山水画様式が達成された。また江戸中期以降、池大雅(いけのたいが)、与謝蕪村(よさぶそん)らの南画家が出て、中国明清(みんしん)の南宗画風を学んで鮮新な山水画の世界を開拓した。さらに円山応挙(まるやまおうきょ)は写生を唱え、写実と装飾とを調和させた独自の山水画を描いている。またこの時代は実景描写への関心も大いに高まり、各地の名所、景勝を訪れ、これに取材した「真景図」も数多く制作された。渡辺崋山(かざん)の『四州真景図巻』などがその代表的作例で、これはある意味では、自然の普遍的な姿を表現しようとする山水画の解体とも、また一面では山水画の近世的変質とも称さるべきであり、この「真景図」は、やがてきたるべき近代的「風景画」への第一歩ともなった。そしてここに山水画は、真に創造的な歴史的使命を終えることになる。
[榊原 悟]
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中国,日本の絵画の一部門。自然の風景を題材とするが,近代の風景画と異なり,自然に精神的意義を付加する中国的自然観を反映した絵画。盛唐~元中期の黄金時代には,技法の発達と様式の多様化を生み出し,墨法が進歩して水墨山水画を成立させ,形似に対する写意を唱えた。宋末元初の画僧の主客合一の傑作は,中国山水画が究極的に到達した至高の境地である。
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…すでに明治の後期にそのような動きはあったが,そうした系統の写真家として,1923年に日本で最初の写真芸術論というべき《光と其諧調》を発表した福原信三,野島康三,中山岩太を代表としてあげることができる。日本のアマチュア写真家も西欧と同様に絵画的主題からの影響はまぬがれなかったが,しかしなじみ深い山水画をはじめとする文化的・風土的背景の影響は,日本の地方色として著しい特徴となっている。このため明治期の多くの写真には独特の抒情性が見られ,この主題を助長するために〈ピグメントpigment法〉という写真に顔料を用いる技法が流行した。…
…それに対して現代,つまり張彦遠の同時代の絵画は,錯乱して趣がなく汚いという。その非難の対象となったものは,墨を口に含んで吹きつけて雲を描く吹雲という技法や山水画家の用いる潑墨といった技法で,その理由は線がないということであった。実際このころ,巷間で破墨とか潑墨とか呼ばれる技法が流行したようで,それらは山水樹石を主題としてとりあげ,用墨を重視して用筆すなわち線描を軽視ないしは否定するような傾向があった。…
… 宋代の美術界で主導的な地位を占めたのは絵画であった。六朝の書,唐の詩,宋の画と評されるように,中国絵画史のなかで最高の評価を得た宋代の絵画を特徴づける要因として水墨画の手法のめざましい発達,主導的な題材の道釈人物画から山水画への移行,画家と鑑賞者の両者にみられる文人意識の増大という三つの現象を指摘できる。人物画の分野では唐代に頂点に達した大画面形式の道釈人物は北宋前期の職業的な画家たちによって継承されたものの,形式化し衰退していく傾向をみせたが,北宋末の李公麟が文人趣味にあう白描画風の人物画を再興し,この分野に鑑賞絵画としての新生命を吹き込み,南宋期の禅機画盛行の出発点となった。…
…風景を主なる表現対象とした絵画をいう。絵画もしくは浮彫等の背景に風景を表現することは早くにエジプト,クレタ,アッシリアなどの美術に見られるが,風景のための風景画の独立は西洋ではルネサンス期に初めて成立するに対し,中国ではすでに六朝時代に山水画が描かれ,隋唐より日本へも伝来(例,正倉院御物の琵琶の桿撥(かんぱち)画)し,やまと絵へと摂取されていく。これは西洋の美術が人体表現を主眼とするに対し,中国や日本では人物画も古くよりあるが,自然の崇敬愛好が早くから文学を介して美術の主題とされたことに基づく。…
…この系譜はかなり無茶なもので,李思訓は輪郭線でこまかくかたどって着色を施すいわゆる青緑(金碧)山水を描き,南宋画院はむしろ余白をうまく利用した構図と簡潔で洗練された筆墨法に特色があり,浙派となるとたしかに南宋画院の画風を受け継いでいるものの,そのほかに浙江地方に伝わった粗放な水墨画の伝統や,元代にまず文人画の側から興った復古運動,とくに北宋の李成・郭熙様式に基づく元代李郭様式の影響も強く,系譜自体には一貫性がなく,董其昌らの系譜づけによって浙派の具体的な実相はかえって曖昧になったといえる。 浙派の特色は人物画や花鳥画により顕著にあらわれるが,南宗画の深層に江南の山水画の伝統があったように,北宗画も華北の厳しい風景描写を抜きにしては考えられない。中国の山水画は黄河流域の風景描写を基にして発展を開始したといってよい。…
…ことに成祖長陵の稜恩殿は,当代を代表する建築である。
[絵画]
明代の絵画は,山水画を中心として展開したが,その山水画は,およそ15世紀後半を境として,前後2期に分かれ,前半には浙派が,後半には呉派が流行した。浙派の名は,後にその祖と目された戴進が銭塘(浙江省杭州)の出身であったことから名づけられたものだが,初期には浙江省,福建省出身の画家達がその中心をなしていた。…
※「山水画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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