山はふつう群がり集まって広い地域を占め,いわゆる〈山地mountains〉を形成しているが,その中でおもな山稜が長く脈状に連なっている場合を山脈という。山脈が並行していくつも重なっている部分を山系mountain system,cordilleraという。実際に固有名詞を付して呼ぶ場合には,山脈,山系,山地は,しばしば混同して用いられている。
日本では第2次大戦後地図類に載せる自然地域名称の基準が1954年に地理調査所(現在の国土地理院)で決められたとき,中国山地,四国山地,九州山地,養老山地,関東山地のように〈山地〉と統一的に呼ばれ,一方で,飛驒山脈,赤石山脈,木曾山脈,紀伊山脈などは従来の慣用に従って〈山脈〉の名がそのまま生かされた。結果としてこの基準によっても山地と山脈の使い分けが明りょうになったとはいい難い。土地の質や環境を問題とする立場からは〈山地〉が用いやすく,山の成り立ちや地質構造との関連でとらえる場合には〈山脈〉〈山系〉が役に立つ。
山脈はその平面的な特色を地図上でとらえ得るが,概して円弧状を呈するものが多く〈弧状山脈〉として扱われる。現在地球上にある大山脈は第三紀中葉以降現在にいたるまで続いている造山運動(〈アルプス造山〉という)の影響をうけた地帯に限られ,環太平洋造山帯およびアルプス・ヒマラヤ造山帯の二つがそのおもな地帯である。これら造山帯は弧状山脈が連鎖して連なり,造山運動に伴って生ずる火山活動,地震活動が頻発し,造山帯の位置は火山帯,地震帯と一致する場合が多い。弧状山脈は安定陸塊を縁取る位置や二つの安定陸塊に挟まれた位置,あるいは海洋プレートと安定陸塊との間にあるので,基本的な造山の型は,かつて陸塊縁辺の沈降地域であった地向斜の堆積物が,プレートや陸塊の移動により,横圧力をうけて隆起し山脈を形成してきたものであろう。
環太平洋造山帯の場合はアメリカ大陸側に,アンデス山脈,シエラ・マドレ山脈,ロッキー山脈,アラスカ山脈が連続して大陸の西側を縁取って分布し,北側から西側にかけてはアジア大陸との間に縁海を挟みながら,アレウト列島,千島列島,日本列島,フィリピン群島などと相次いで連鎖する弧状列島となる。弧状列島は弧状山脈の半ば海面下に没した形であり,弧形の連鎖がみごとであるため,とくに花綵(かさい)/(はなづな)列島と呼ばれている。
アパラチア山脈,ウラル山脈,スカンジナビア山脈など中起伏の山脈は,カレドニア造山(古生代前半)またはバリスカン(ヘルシニア)造山(古生代末)によって地層が褶曲をうけ山脈を形成したが,その後の削剝で,小起伏面となり,アルプス造山の時期に全体的に撓曲隆起して再び起伏を生じ山地になった。アパラチア山脈の場合は褶曲構造に支配された北東-南西方向の低い山脈がいくつも並走しているが,これは褶曲軸に平行して分布する硬岩が削剝の結果,山稜として残留したためである。断層地塊山地の場合は丹沢山塊,六甲山塊などのように〈山塊〉と呼ぶこともあるが,地塊山地でも主山稜の連続性がよく,これに着目するときは木曾山脈,鈴鹿山脈というように山脈と呼ばれる。
執筆者:式 正英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
連続して脈状に一定の方向に連なる山地をいう。世界における大山脈は、台地や高原と異なり、特定の地帯に分布している。環太平洋造山帯やアルプス‐ヒマラヤ造山帯の山脈群はその例である。この両造山帯の分布と大陸の配置関係は、プレートテクトニクス説で説明されている。世界の各地の山脈は、成因、形成の時代、形や位置などを指標にして区分されている。
[有井琢磨]
この区分による山脈として、褶曲(しゅうきょく)山脈と断層山脈がある。褶曲山脈は、山脈の地質構造が褶曲作用で形成されたものである。世界の大山脈は褶曲運動を主体とする地殻運動で生じたものである。褶曲によって生じた尾根を背斜、谷を向斜とよんでいる。陸上では絶えず侵食作用が働いているので、褶曲の構造が完全に地形に現れている山脈は、ほとんど存在していない。フランスとスイスの間にあるジュラ山脈は、褶曲構造と山脈の起伏が比較的一致した例として知られている。侵食作用を受けて褶曲の背斜部が谷になり、向斜部が尾根になるような場合が多い。ヨーロッパのアルプス山脈・ピレネー山脈・ウラル山脈、北アメリカのアパラチア山脈・ロッキー山脈などでは、山脈の地形と複雑な褶曲構造の関係がよく調査されている。
断層運動で形成された山脈を、断層山脈とよんでいる。この山脈は、断層変位で生じた断層崖(がい)とよばれる急崖で限られている。地塁山脈は、山脈の両側(またはその周縁)が断層崖で限られた山脈である。日本には地塁山脈の発達が良好であり、本州の木曽(きそ)・赤石・鈴鹿(すずか)などの山脈はその適例である。傾動地塊山脈は、山脈の一方の側が断層崖、他の側は傾いた山地斜面からなる地形である。アメリカのシエラ・ネバダ山脈はその典型として知られる。
[有井琢磨]
古生代に生じた山脈(パレイデンPaläiden)、中生代から新生代にかけて生じた山脈など、形成された地質時代によって山脈を区分することがある。前者の例としてヨーロッパのカレドニア山脈・ヘルシニア(バリスカン)山脈、後者の例として環太平洋造山帯およびアルプス‐ヒマラヤ造山帯の山脈などがあげられる。
[有井琢磨]
円弧状の一部をなすように配列する山脈を弧状山脈という。日本列島を含むアジア大陸周縁部には、この地形の発達が著しい。対曲・連鎖・平行・雁行(がんこう)・分岐などの諸型がある。主分水嶺(ぶんすいれい)の位置にある山脈を脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)といい、この典型的な例はロッキー山脈である。
[有井琢磨]
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