山越(読み)やまごし

精選版 日本国語大辞典 「山越」の意味・読み・例文・類語

やま‐ごし【山越】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 山や峠を越すこと。また、その場所。
    1. [初出の実例]「山越乃(やまごしノ)(かぜ)を時じみ寝る夜おちず家なる妹を懸けて偲ひつ」(出典万葉集(8C後)一・六)
    2. 「彼は〈略〉山越しに此処へ出て来た事がある」(出典:矢島柳堂(1925‐26)〈志賀直哉〉)
  3. 山を隔てること。山の向こう側
    1. [初出の実例]「朝日影にほへる山に照る月の飽かざる君を山越(やまごし)に置きて」(出典:万葉集(8C後)四・四九五)
  4. 蹴鞠(しゅうきく)のわざの一つ。曲鞠(きょくまり)一種
    1. [初出の実例]「桜がさね山越(やまゴシ)などいへる美曲をあそばしける」(出典:浮世草子好色一代女(1686)三)

やま‐ごえ【山越】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 山を越えること。また、その場所。
    1. [初出の実例]「しがの山ごえにてよめる」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・三〇三・詞書)
    2. 「おはしまさん事は、いと、荒き山ごえになん侍れど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
    3. 「伏し目になりながら山越えをしてくるはだしの娘たちと」(出典:出発は遂に訪れず(1962)〈島尾敏雄〉)
  3. 江戸時代関所手形を所持しない者が間道を抜けて関所を通らずに山を越えること。
    1. [初出の実例]「関所を除山越いたし候もの并関所を忍通候御仕置之事」(出典:徳川禁令考‐別巻・棠蔭秘鑑・亨・二〇(1841))

やま‐こえて【山越】

  1. 山を越えて遠くの意で、「遠し」と同音を含む地名「遠津」にかかる。
    1. [初出の実例]「山超而(やまこえて)遠津の浜の岩つつじ吾が来るまでに含(ふふ)みてあり待て」(出典:万葉集(8C後)七・一一八八)

やまこし【山越】

  1. 北海道南西部、渡島(おしま)支庁の郡。渡島半島北部、内浦湾に面する。明治二年(一八六九)胆振(いぶり)国の一郡として成立。大正一一年(一九二二渡島支庁所属となる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山越」の意味・わかりやすい解説

山越
さんえつ
Shan-yue; Shan-yüeh

中国,後漢末から三国時代にかけて現れる異民族。浙江江蘇安徽江西,福建などの山岳地帯に住み,勇猛で長く中国の王朝威令に従わなかったが,江南に国を建てたがついにほぼ威令に服させるのに成功した。三国時代からあとはさほど注意をひく活動をしていない。漢の閩越 (びんえつ) などとの関係ははっきりしないが,三国時代の山越については,もともと山中にいた越人の子孫と,逃亡して山中に入った漢民族とをさすという説がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の山越の言及

【越族】より

…秦から漢にかけて甌越(おうえつ),閩越(びんえつ),南越がそれぞれ甌江,閩江,珠江の下流域に自立したが,漢の武帝に平圧された。山越は三国時代に丹楊(丹陽,江蘇省)を中心に活発に活動した。ソンコイ川流域に南下した駱越(らくえつ)は五代・宋初に独立してベトナム族として栄えた。…

※「山越」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」