巧み(読み)タクミ

デジタル大辞泉 「巧み」の意味・読み・例文・類語

たくみ【巧み/工/匠】

《動詞「巧む」の連用形から》
[名]
細工師大工など、手先や道具を使って物を作る職人工匠。「飛騨の―」
技巧意匠。「―を凝らす」
美しいものを作りだすわざやはたらき。
「霊妙不可思議な自然の―」〈里見弴多情仏心
はかりごと。くわだて。たくらみ。
おれ男児をとこなりや汚い―を腹には持たぬ」〈露伴五重塔
[形動][文][ナリ](巧み)物事手際よく、じょうずに成し遂げるさま。「―に難関を切り抜ける」「馬を操るのが―な人」
[類語]上手うまい巧妙絶妙老巧賢い達者器用得手素晴らしい素敵すてき見事みごと立派最高卓抜秀逸結構目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ上出来上上物の見事結構尽くめ何より・申し分が無い・言う事無し天晴れナイスワンダフル・目の覚めるよう・目に染みる冴える水際立つ敏腕辣腕特技専売特許得意売り物十八番おはこお家芸お株お手の物堪能巧者得手物多才潰しが利くくする腕が立つ腕利き腕こき腕っこき手練てだれ手利き名人達人名手妙手エキスパート巨星巨匠名匠名工大家たいか権威第一人者泰斗たいと耆宿きしゅく大御所おおごしょオーソリティープロ専門家スペシャリスト玄人くろうと本職ゼネラリストセミプロプロフェッショナル達者腕達者仕事師遣り手素人しろうと離れ玄人はだし神業かみわざベテランソムリエスキルドワーカーマイスタープロパー巧手怪腕凄腕腕達者

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「巧み」の意味・読み・例文・類語

たくみ【工・匠・巧】

  1. ( 動詞「たくむ(工)」の連用形の名詞化 )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. [ 一 ] 人についていう。
      1. 手や道具を用いて物を作り出すことを業とする人。細工師。工匠。職人。「こだくみ(木工)」「かなだくみ(金工)」など。
        1. [初出の実例]「即ち、石凝姥(いしこりとめ)を以て冶工(タクミ)と為て、天香山の金(かね)を採て以て日矛(ひほこ)を作(つく)らしむ」(出典日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
      2. 特に木材で物を作る職人。こだくみ。大工(だいく)
        1. [初出の実例]「我が命も 長くもがと 言ひし倶彌(タクミ)はや」(出典:日本書紀(720)雄略六年二月・歌謡)
        2. 「工(たくみ)ども裏板(うらいた)どもをいとうるはしくかなかきて」(出典:大鏡(12C前)二)
    2. [ 二 ] 事柄についていう。
      1. もっぱら行なう仕事。
        1. [初出の実例]「明くれは物思ふ事をたくみにてわりなく胸を知る人ぞなき」(出典:散木奇歌集(1128頃)恋上)
      2. いろいろ思いめぐらして、見つけ出したよい方法。工夫。趣向。手段。
        1. [初出の実例]「哥は作りたてたる風情、たくみはゆゆしけれど」(出典:無名抄(1211頃))
      3. はかりごと。たくらみ。計略。策謀。
        1. [初出の実例]「さては我をすかしやりてまをとこにころさせんたくみなりとて」(出典:平仮名古活字三巻本宝物集(1179頃)下)
        2. 「石碑になぞらへ大星の工(タクミ)をよそに知らせしは」(出典:浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)五)
      4. 美しくしつらうこと。また、美しくしつらえるもの。
        1. [初出の実例]「均綵の濃淡(ちょうたむ)は敬君も其の巧(タクミ)に逾(こ)ゆること能はず」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)九)
      5. 芸術や芸術的雰囲気(ふんいき)をさしていう。
        1. [初出の実例]「消えはてにけり吾恋は 芸術(タクミ)諸共(もろとも)消えにけり」(出典:落梅集(1901)〈島崎藤村幻境)
  3. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 工・巧 ) てぎわよくすぐれているさま。できばえのすぐれているさま。上手(じょうず)であるさま。巧妙。器用。また、現代ではずるがしこい意をこめていう場合もある。
    1. [初出の実例]「天鈿女(あまのうすめの)命、〈略〉天石窟戸(あまのいはやと)の前に立(た)たして、巧(タクミ)に作俳優(わさをき)す」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    2. 「ふんやのやすひでは、ことばたくみにて、そのさま身におはず」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android