精選版 日本国語大辞典 「平衡」の意味・読み・例文・類語
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物体(あるいは物質)の状態が時間の経過とともに変化しないで一定であるとき、この物体は平衡にある、または平衡状態にあるという。つり合いともいう。
外部から完全に孤立した物体、換言すれば外部からの作用をまったく受けない物体が終始平衡状態にあることは明らかである。物体が初めから複数個ある場合には物体系(体系ともいう)として考える。外部からの作用がある場合には、その作用を及ぼす物体を物体系のなかに取り込んで考えることもある。平衡は、力学的平衡、熱(的)平衡、化学(的)平衡に分けて議論されるが、力学的平衡は「つり合い」の項で、化学平衡については「化学平衡」の項で記述しているので、ここでは主として熱平衡について記述する。
[沢田正三]
物体の状態を表す量、数学的にいえば変数のことを状態変数という。この際、物体の状態を外部から規定する変数は外部変数といわれ、この外部変数のもとで決まる物体の状態を表す変数は内部変数といわれる。たとえば、力学的変数では、力は外部変数であり、体積は内部変数である。
自然界には、「物体系を孤立状態に十分長時間保持すると、物体系の状態変数はそれぞれ時間の経過とともに変わらない一定の値をとる」という経験法則が存在する。この終わりの状態を熱平衡または熱平衡状態という。とくに、物体系がただ二つの物体A、Bからなる場合、この二つの物体が熱平衡にあるときには、物体の熱的状態を規定する熱的外部変数がこの二つの物体で共通になっているのであると考えることは、後述のように、力学的平衡では作用反作用の法則が成り立つことから、まことに自然である。さらに自然界には「物体Aと物体Bとが熱平衡にあり、さらに物体Aと物体Cとも熱平衡にあるときには、物体Bと物体Cとも熱平衡にある」という、三物体間の熱平衡法則がある。結局「熱平衡状態にある物体系を構成する各物体の熱的外部変数はすべて等しい」ということがいえる。この共通の熱的外部変数が、温度というもっとも重要な熱的変数なのである。外部変数と内部変数とはつねに対をなしている。温度という熱的外部変数と対をなす熱的内部変数はエントロピーである。
物体(または物体系)の安定性を示す尺度はその物体の熱力学関数(熱力学的ポテンシャルともいう)である。これは純力学現象におけるポテンシャルエネルギーにあたるものであって、種々の状態変数の組合せに対して種々のものがある。
熱力学によると、物体の熱平衡状態においては、その物体の熱力学関数が最小値をとっている。たとえば、等方性物体が温度一定、圧力一定のもとで熱平衡に達すると、ギブス自由エネルギーという熱力学関数が最小値をとる。物体の熱平衡状態は、要するに最安定状態であって、その物体の普通に実現している状態である。
[沢田正三]
机の上に置かれて静止している物体は、これに働く重力をもって机を押しており、一方、机は抗力をもってこの物体を押している。これらの重力と抗力とはいずれも鉛直線上にあって、前者は下方を、後者は上方を向き、かつ両者の大きさは等しい。この事実は、より一般的には、作用反作用の法則とよばれている。この例で、物体が静止しているのは、物体の状態(例では空間座標)が時間とともに変わらないことであり、すなわち物体は力学的平衡にある。
[沢田正三]
化学的変化の平衡を化学平衡、液相と固相間の変化のような相変化の平衡を相平衡という。化学反応で、可逆反応においておこりうる反応の一方向の速度と、逆方向の反応の速度とがちょうど等しくなって、見かけ上反応がとまったようになることがある。このとき化学平衡の状態になったという。平衡時の成分濃度の比は質量作用の法則に従い、その比は一定の値をとり、平衡定数という。相平衡では、相の境を通しての一方の相から他の相への移行の速度と、その逆方向への移行の速度がつり合ったときに達せられる。
[戸田源治郎・中原勝儼]
『熊井俊彦著『熱力学と化学平衡』(1976・培風館)』▽『H・キャレン著、山本常信・小田恒孝訳『熱力学――平衡状態と不可逆過程の熱物理学入門』上下(1978・吉岡書店)』▽『渡辺啓著『化学平衡の考え方――化学反応はどこまで進むか』(1998・裳華房)』▽『神崎凱・千熊正彦・黒澤隆夫著『化学平衡と分析化学』第2版(2003・広川書店)』
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物体またはいくつかの物体からなる系が,外力あるいは物体間の相互作用のもとに静止している場合,それらは力学的に平衡あるいは釣合いの状態にあるという.平衡状態は安定,中立,不安定の三つに区別される.その区別は,物体を平衡点から微小変化させたときの系の力学的ポテンシャルエネルギーの変化によって示される.図におけるA点,B点,C点はそれぞれ安定,中立,不安定の状態に対応する.熱力学的系は十分長い時間放置すると,巨視的量に変化がなくなって平衡状態に達する.この状態を熱力学的平衡状態,あるいは単に熱平衡状態という.この概念はさらに拡張されて,電磁場を含む系では場の放射吸収についての放射平衡,化学作用する系での化学平衡をも含んでいる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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送り状。船荷証券,海上保険証券などとともに重要な船積み書類の一つで,売買契約の条件を履行したことを売主が買主に証明した書類。取引貨物の明細書ならびに計算書で,手形金額,保険価額算定の基礎となり,輸入貨...
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