幼生でありながら体内で卵が成熟し,単為生殖を行って新個体を生じること。寄生性のタマバエやカンテツの幼生にその例が知られている。扁形動物の吸虫類に属するカンテツのミラキディウム幼生は,水中を泳いでいる間に中間宿主であるモノアラガイの体内に入り,スポロシスト幼生となる。スポロシスト体内の生殖細胞は単為発生してレディア幼生を,レディア幼生の体内でもまた単為発生をして多くのセルカリア幼生を生じる。カンテツの終結宿主は草食動物で,十分な栄養のもとで成体に成長し両性生殖を行う。糞(ふん)とともに排出された受精卵は水中でミラキディウム幼生になるが,いつ再び終結宿主に戻れるかわからない。そこで,かろうじて栄養状態にめぐまれた中間宿主内で,幼生生殖により爆発的に個体数を増やして種の絶滅を防いでいると考えられている。なおネオテニーは,個体発生がある段階で止まり成熟するもので,幼生生殖とは異なる。
執筆者:島田 義也
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雌の体がまだ幼生であるのに、生殖細胞が成熟し母体内で発生を始めることで、単為生殖の一形態である。双翅(そうし)類のタマカでは幼生(幼虫)の時期に体内の卵細胞が発生を始め、7~30匹の幼虫が生じる。この幼虫は母体を食べて成長し、やがて親の体壁を食い破って外に出る。同じことを何代か繰り返したのち変態して成虫となる。扁形(へんけい)動物吸虫類の肝蛭(かんてつ)も幼生生殖を行う。卵から孵化(ふか)したミラシジウムという幼生がモノアラガイ(中間宿主)の体内に入り、スポロシストという幼生になる。スポロシストは幼生生殖によって多数のレジアという第二の幼生を生じる。このレジアはさらにその体内にセルカリアという第三の幼生を生じる(スポロシストからセルカリアが生じる場合もある)。セルカリアは中間宿主である貝から泳ぎ出して水辺の草に付着し、ウシなどに食べられてその肝臓内で成熟する。
[内堀雅行]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…幼形成熟pedogenesisともいう。動物が幼形を保ったまま性的成熟に達し生殖を行う現象。…
…動物が幼形を保ったまま性的成熟に達し生殖を行う現象。生殖器官に比べからだの発育が相対的に遅れるために起こるもので,幼生生殖とは異なる。メキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum(アホロートルaxolotlと呼ばれる)は原産地のメキシコの泉や湖ではえらをもち,変態しない状態で生殖するが,1865年にパリの植物園で飼われた個体が変態し,水がとぼしいなどの環境では変態して陸に上がることが知られた。…
※「幼生生殖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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