精選版 日本国語大辞典 「幾何学」の意味・読み・例文・類語
きか‐がく【幾何学】
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数学は代数学、幾何学および解析学に大別されるが、そのなかでも幾何学はもっとも古くから発達した学問で、図形の研究を目的とする。
[立花俊一]
古代エジプトではナイル川が定期的に氾濫(はんらん)し、奥地の肥えた土を下流に運んでそこを肥沃(ひよく)にする一方、耕地の境界を破壊した。洪水のあとの土地を再配分するために土地測量術が発達したが、これが幾何学の始まりといわれている。幾何学を意味するギリシア語のgeōmetríaがgeō(土地)とmetron(測量具)とからなっているのはこのためである。エジプトで生まれた幾何学は海を渡ってギリシアに輸入され、抽象的な思考に秀でていたギリシア人の手によって、しだいに理論的体系をもつ学問に成長していった。ピタゴラス(前500ころ)、ユークリッド(前300ころ)、アルキメデス(前250ころ)、アポロニウス(前230ころ)らが活躍したが、なかでも、それまでの幾何学の知識を集大成して一つの論理体系にまとめあげたのがユークリッドであった。13巻からなるユークリッドの『幾何学原本』(『ストイケイア』)は、定義と五つの公理をもとに厳密な推論を積み上げる方法をとっている。『原本』から発達した幾何学は今日ユークリッド幾何学とよばれ、現在でももっとも応用の広い数学の部門であり、またその厳密な論証の進め方は以後の数学の模範となった。
[立花俊一]
その後、幾何学の暗黒時代を迎えるが、ルネサンス期イタリアで開花した造形美術は幾何学と深くかかわっている。遠近関係を配慮した絵画の描出法である遠近法、すなわち透視画法がそうである。フランスのデザルグやパスカルは、この透視画法の考え方を発展させて、射影と切断で不変な性質を研究する幾何学、すなわち射影幾何学を創始した。これは、19世紀前半のポンスレやメビウスの総合的な研究によって、当時の幾何学界を風靡(ふうび)することになる。なお、製図などに用いられる画法幾何学はフランス人モンジュが始めたもので、19世紀末には現在の形をなすに至る。他方、代数学を使って図形を研究する道が開けてきた。それは、16世紀における座標の導入である。点を座標で表し、点と点の関係を実数の関数関係に置き直して図形を研究する解析幾何学は、デカルト、フェルマーに始まる。解析幾何学の方法論は、17世紀になってニュートン、ライプニッツの微積分の発見を促しただけでなく、逆に微積分を図形の研究手段として利用することを可能にし、微分幾何学へとつながる。とくに、ガウスは曲面上の微分幾何学で本質的な貢献をし、この仕事がリーマンによるn次元多様体の概念を生み出した。多様体の幾何学は、のちにリーマン幾何学とよばれる分野を含む広大な幾何学に発展していく。
[立花俊一]
一方、ユークリッドの『原本』の第五公理、いわゆる平行線公理「1直線外の1点を通ってちょうど1本の平行線が、存在する」が、他の四つの公理から本当に独立であろうかという疑いを多くの人が抱いていた。これは、1830年前後の非ユークリッド幾何学の発見・創始という意外な結末にたどり着いた。つまり、第五公理を「1直線外の1点を通って少なくとも2本の平行線が存在する」に置き換えても、矛盾のない幾何学の体系ができることを示したのである。それはロバチェフスキーとボヤイによりそれぞれ独立に発見され、現在、双曲幾何学とよばれている。古来、幾何学は一つと信じられていたのに、非ユークリッド幾何学や射影幾何学が出現したことは、幾何学に対する反省を大きく促すことになった。クラインはエルランゲン目録(1872)において、幾何学が多数存在しうる理由を明らかにした。彼は、集合(空間)とその変換の群が与えられたときに、部分集合(図形)の性質のうち群の作用で不変なものを研究することこそが幾何学であると認識した。たとえば、計量のある平面と等長変換群を与えられたときの幾何学が、ユークリッド幾何学にほかならない。すると、出発点の変換群をその部分群に置き換えるとまた別の幾何学が得られることになる。したがって、部分群をさまざまに変えることに対応して多数の幾何学が得られることにもなる。射影空間内に一つ図形(直線や二次曲線)を固定し、射影変換のうちでその図形を不変にするものがつくる群を考えると、ユークリッド幾何学や非ユークリッド幾何学を統一的に論ずることができる。以上述べてきた幾何学は、その源をユークリッドの『原本』やアポロニウスによる円錐(えんすい)曲線論などのギリシア数学に求めることができる。
[立花俊一]
これらとはまったく別の幾何学の流れが18世紀のオイラーから発する。オイラーが解いた一筆書きの問題や閉多面体に関するオイラーの公式は、図形の連続的変形によって変わらない性質を研究したものである。19世紀、ポアンカレはこのような研究が解析学にとっても重要であることを認めて、これを基礎づけた。これは位相幾何学(トポロジー)とよばれるようになった。位相幾何学は、複雑な図形を基本的な図形から積み木のように構成されたものとして研究したり、対象の間の関係を群や環などの代数的な量に移し換えて調べたりする学問であり、数学の他分野への応用も広い。
[立花俊一]
『矢野健太郎著『幾何学の歴史』(1973・日本放送出版協会)』▽『寺阪英孝著『非ユークリッド幾何の世界』(1977・講談社)』
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