床ずれ(褥瘡)
とこずれ(じょくそう)
Bed sore (Decubitus)
(皮膚の病気)
持続的な圧迫によって、組織の血流が減少・消失し、虚血状態、低酸素状態になって、組織の壊死が起こった状態です。
寝たきりや麻痺などで体位を変えられない人にできます。腰の仙骨部や足の踵の部分、骨が突出している部分など、圧迫を受ける部分に現れます。栄養不良状態があると創(傷)が治りにくくなり、慢性化しやすくなります。
初めは圧迫を受けた部位が赤くなり、水疱や紫斑が現れます。浅い褥瘡では浅いびらんがみられるのにとどまりますが、深い褥瘡では急性期を過ぎたころに創面が徐々に黒ずんで、壊死組織が明らかになってきます。
このような黒ずんだ壊死がみられる黒色期、さらにこれらが取り除かれると壊死に陥った皮下脂肪や筋肉が汚い黄色を示す黄色期、治癒機転がはたらいて肉芽組織が再生し創面が赤くなる赤色期、創の周囲から上皮が形成されて皮膚がおおわれる白色期の時期があります。
慢性のものでは、創が洞穴状に皮下に拡大するポケットを形成する場合もあります。感染があると悪臭を伴うことがあり、体力が衰えていると褥瘡の感染が全身的な感染を引き起こすこともあるので注意が必要です。
D(深さ)、E(滲出液)、S(大きさ)、I(炎症)、G(肉芽組織)、N(壊死組織)、P(ポケット)の程度を評価するDESIGNツールで褥瘡の状態を判定します。
感染がある場合は細菌培養を行って、どのような菌の感染があるかを調べる場合があります。
深い褥瘡では壊死組織の除去や洗浄を行い、時期に応じた外用薬の処置をします。ポケットを形成するものでは、切開をして露出させる場合があります。消毒は必要ではなく、生理食塩水や水道水で患部を洗浄したあとに外用薬や被覆剤を貼付します。
すぐに医師に相談してください。病巣部に圧迫をかけないように体位交換をたびたび行うなどの注意だけでなく、栄養をつけることも重要です。
堀川 達弥
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
とこずれ【床ずれ bedsore】
褥瘡(じよくそう)の一般名称で,長期臥床中の人の背や腰など,長時間圧迫されている部位にできる壊死性の皮膚障害をいう。病人が長く床に伏していると,長時間圧迫されている部位に血行障害を起こして酸素や栄養が行かないようになり,やがて床ずれが生ずる。まず圧迫されている部位の皮膚が赤くなり,ついで紫色の斑点となり,水疱ができる。さらに進むとただれ,潰瘍となり,痛みを伴う。 床ずれができやすいのは,(1)脳卒中,糖尿病などの慢性疾患や意識障害,運動障害,あるいは骨折など,長期間病床にあって,自発的な動作が阻まれ,体位の変換が困難な状態にある場合,(2)さらに,痛みやかゆみ,圧迫感などの知覚が障害されている場合,(3)全身的な栄養障害,浮腫,糖尿病などによって感染に対する抵抗力が弱まっている場合,(4)多量な汗や頻回な尿・便失禁,また衣類やシーツ類のしわや汚れ,湿気などによる刺激によって皮膚が清潔に保てなかったり,損傷されやすい状態にある場合,などである。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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「床ずれ(褥瘡)」の意味・わかりやすい解説
床ずれ【とこずれ】
褥瘡(じょくそう)とも。長時間一定の部位が圧迫されたことによって生じる皮膚傷害。鬱血(うっけつ)による発赤と疼痛(とうつう)があり,次いで壊疽(えそ)・潰瘍(かいよう)を生じて細菌感染が加わる。局所の血行障害に全身性の栄養障害・神経麻痺(まひ)が加わると生じやすい。予防がもっとも大切で,そのためには体位を変え,局所の清潔,マッサージ,感染予防などが必要。
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