海洋の下層または海底をおもな生活の場とする魚類の総称。表層魚または浮き魚に対して用いられる語で、底生魚ともいう。ホシザメ、アブラツノザメ、ある種のアナゴ類、エソ類、タイ類、アマダイ類、タチウオ、ニベ・グチ類、タラ類、ホウボウ類、ヒラメ・カレイ類、アンコウ類などが代表的な種類である。底魚は体が扁平(へんぺい)もしくは丸いものが多く、典型的な紡錘形は少ない。体色は赤色、褐色、黒色または黄色みを帯び、浮き魚のように青緑色のものは少ない。
底魚は、底生性の小魚、エビ・カニ類、貝類、多毛類(ゴカイ、イソメなど)、棘皮(きょくひ)類(ウニ、ヒトデなど)などを食べる。比較的運動力のある餌(えさ)を食べる底魚は、口が大きく、歯が発達している。しかし、多毛類を主食とするものでは、口が小さくて歯も退化し、腸が長い。たとえば魚食性のヒラメ、カラスガレイ、アブラガレイなどは大口であるのに対し、おもに多毛類を食べるマコガレイ、メイタガレイ、ヤナギムシガレイなどは小口である。一般に底魚は定着性で遊泳速度が遅く、大きな回遊はしない。しかし、マダイ、アブラツノザメ、タラ類、ヒラメなど大形の底魚は、産卵、越冬のために比較的大きい海域を回遊する。たとえば、東シナ海のマダイは越冬のため3か月で直線距離にして約400キロメートルも移動する。
底魚は底引網、定置網、釣りなどによって漁獲される。肉は白身で味が淡泊であり、刺身、鍋(なべ)物、練り製品の材料とする。なお底魚漁場の開発と利用などを目的に、一般社団法人日本トロール底魚協会(JOFA:Japan Overseas Fishing Association)が設立されている。
[落合 明・尼岡邦夫]
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