日本大百科全書(ニッポニカ) 「弁道話」の意味・わかりやすい解説
弁道話
べんどうわ
鎌倉時代の仏書。道元撰(どうげんせん)。一巻。道元が宋(そう)(中国)から帰国した4年後の1231年(寛喜3)32歳のとき、京都深草の安養院(あんよういん)閑居中に寂円(じゃくえん)、懐奘(えじょう)、了然尼(りょうねんに)その他の僧俗に示した法語。本書において、天童如浄(てんどうにょじょう)に参学して正伝(しょうでん)し転開した仏法は、坐禅(ざぜん)の一行(いちぎょう)を正門(しょうもん)とし、その坐禅は万人が等しく成仏(じょうぶつ)(真実の覚者)しうる安楽の法門であり、修(坐禅修行)のほかに証(悟り)はない修証一如(しゅしょういちにょ)の行(ぎょう)であると述べ、18段の設問自答を通して坐禅の宗教の本義を説いた。なお本書には、現行流布本への修訂の跡かたを示す草稿の謄写本があり、現在、岩手県奥州(おうしゅう)市の正法(しょうぼう)寺に秘蔵されている。
[河村孝道]
『永平正法眼蔵蒐書大成刊行会編『辨道話』(『永平正法眼蔵蒐書大成 4巻』所収・1979・大修館書店)』▽『鏡島元隆他編『日本古典文学大系81 正法眼蔵・正法眼蔵随聞記』(1965・岩波書店)』▽『衛藤即応著『正法眼蔵序説』(1959・岩波書店)』▽『河村孝道校注『正法眼蔵 下』(春秋社・草稿・修訂2本収録)』