弁顕密二教論(読み)べんけんみつにきょうろん

精選版 日本国語大辞典 「弁顕密二教論」の意味・読み・例文・類語

べんけんみつにきょうろんベンケンミツニケウロン【弁顕密二教論】

  1. 平安初期の仏教書。二巻。空海著。顕教密教とを四つ観点から比較考察し、密教の優越性を説いたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弁顕密二教論」の意味・わかりやすい解説

弁顕密二教論
べんけんみつにきょうろん

仏教書。二巻。空海の著作。顕教(けんぎょう)と密教との区別を明らかにしたもの。(1)『五秘密経』、(2)『瑜祇(ゆぎ)経』、(3)『分別聖位(しょうい)経』、(4)『大日経』、(5)『楞伽(りょうが)経』の五経と、(1)『菩提(ぼだい)心論』、(2)『大智度(だいちど)論』、(3)『釈摩訶衍(しゃくまかえん)論』の三論を典拠にして密教の特色を指摘する。このほか、『六波羅蜜(ろくはらみつ)経』『守護経』なども引用する。空海によれば、密教の特色は四つある。(1)仏身。密教は法身(ほっしん)が説法する。(2)教法。密教は悟りの境地を説く。(3)成仏(じょうぶつ)。密教は即身(そくしん)成仏を説く。(4)教益(きょうやく)。密教はいかなる者をも救う。

宮坂宥勝

『勝又俊教編『弘法大師著作全集1』(1968・山喜房仏書林)』

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世界大百科事典(旧版)内の弁顕密二教論の言及

【空海】より

…814年には日光山の勝道上人のために碑銘を撰し,815年4月には弟子の康守,安行らを東国に派遣し,甲斐,常陸の国司,下野の僧広智,常陸の徳一らに密教経典の書写を勧め,東国地方への布教を企てた。このころ《弁顕密二教論》2巻を著し,816年5月,泰範の去就をめぐって,最澄との間に密教理解の根本的な相違を表明してついに決別した。 同年7月,勅許を得て高野山金剛峯寺を開創したが,819年ころから《広付法伝》2巻,《即身成仏義》《声字実相義》《吽字義(うんじぎ)》《文鏡秘府論》6巻,820年《文筆眼心抄》などを著述して,その思想的立場と教理体系を明らかにした。…

※「弁顕密二教論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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