精選版 日本国語大辞典 「形態論」の意味・読み・例文・類語
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〔1〕伝統文法では、形態論は、語形の変化とその構成を記述する部門として、統語論、音韻論とともに文法の三大部門をなす。〔2〕構造言語学では、形態素の種類とその配列を分析する部門とされている。
語を形態素に分析する場合、(1)すべて形態素の付加とみる立場を項目配列方式、(2)形態素を構成する音素に変化を認める立場を項目過程方式という。英語の動詞keep/ki:p/の過去形/kept/kept/「保持した」において、/ki:p/の異形態/kep-/に過去の形態素の異形態/t/が付加されたとすれば(1)の方式であり、/ki:p/の母音/i:/が/e/に変化したうえで/t/が付加されたと考えれば(2)の方式にたっている。なお、(3)/kept/を分解しないで、一つの語としてそのまま過去形と認め、これが現在形の/ki:p/と時制の対立をなしていると考える語・語形変化の方式がある。
英語のdogs[dɔg-z],cats[kæt-s]はそれぞれ複数の犬と猫を表すが、これらの語尾[z]と[s]は名詞が複数形になったとき付加される変化語尾であるから屈折語尾とよばれる。これに対し、doggy[dɔg-i]「犬のような」、cattish[kæt-iʃ]「猫のような」に現れる語尾[i]や[iʃ]は名詞を形容詞に変える働きがある。しかも、これらの語尾は特定の名詞としか結合しない。こうしたものを派生語尾という。語形変化をなすとき、屈折語尾もしくは派生語尾は、中核をなす語幹stemの形態素に添加されるので接辞affixという。接辞には次の3種がある。
(1)un-kind「不親切な」におけるun-は語頭部の前に付加されるので接頭辞prefixである。
(2)boy-sの複数語尾-sのように語幹部の後ろにくるものが接尾辞suffixで、
(3)フィリピンのタガログ語の動詞b-in-ása「読まれた」では、受動を表す-in-という要素が語幹b-ásaのなかへ押し込まれているので、挿入辞もしくは接中辞infixという。
語の構造をみると、boyやcatのような語は自由形式の形態素のみでできているが、boy-sやcatt-ishのような語では自由形式に結合形式の形態素が組み合わさっている。また、re-ceive「受ける」のような語では、接頭辞のre-も語幹部の-ceiveもともに結合形式の形態素である。なお、boy-friend「男友達」は、二つの自由形式の形態素が結び付いた合成語である。
英語のun-friend-ly「不親切な」は三つの形態素からなる語であるが、friend-ly「親切な」という語はあっても、un-friendという語はないので、unfriendlyはまずunとfriendlyという二つの要素に分解される。これを直接構成素に分析するという。続いて、friendlyはfriendとlyという直接構成素に分けられる。このように形態素の結合は、順次後ろから付加されるものではなく、ある構造をなして結び付いているのである。
生成文法では、形態論は語彙(ごい)論に組み替えられている。語彙論では、語を統語面と音韻面および意味の面で記述する方法が研究されている。英語の動詞giveは/ɡiv/という音素表示をもち、統語的には、動詞に属し、「~を~に与える」というように直接目的語と間接目的語をとる文法構造に用いられる。意味的には、「ある対象物がある者から他の者へと所有移動する」という意味構造のなかで解釈される。なお、現在形give/ɡiv/が過去形gave/ɡeiv/に変化するのは、母音の/i/を/ei/に変える形態音素的音韻規則が働いていると考えられている。
[小泉 保]
『小泉保著『教養のための言語学コース』(1984・大修館書店)』
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…ある範疇に属する単語は,その範疇特有の屈折(つまり,音形の一部がそのあらわれる位置によって交替する現象)を示すことがあるので,各範疇ごとの屈折の状態と性格を解明する必要がある。このように,単語に関係する研究分野は,従来,〈形態論〉と呼ばれてきた。 次に,単語それ自体に関することを除き,単語から文にいたる過程を研究する分野を従来から〈構文論〉〈統語論〉などと呼んでいる(本事典では〈シンタクス〉の項を参照されたい)。…
…(1)音韻論 音素,アクセントなどから文字あるいは単語がどのように構成されるかについての理論であり,音声処理においては基礎となる。(2)形態論 文字から単語が構成される枠組みについての理論であり,日本語のベタ書きテキストから単語を切り出す形態素解析の基礎となる。(3)統語論 単語から文が構成される枠組みについての理論。…
…が,文法と意味(論)の境界の画定が難しい上,一般に機能語の用法は(すべて)文法の問題だという把握が根強いようなので,これに従って,(3)も掲げた次第である。
[文法の下位区分]
学問としての文法は,しばしば〈シンタクスsyntax〉(統語論,構文論とも)と,〈形態論morphology〉(語形論,語論とも)とに下位区分される。 シンタクスは,単語が連結して文をなす上でのきまり・規則性・原理の研究,すなわち冒頭の(1)(および(3)のうち(1)にかかわること)についての研究である。…
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