形象埴輪(読み)ケイショウハニワ

デジタル大辞泉 「形象埴輪」の意味・読み・例文・類語

けいしょう‐はにわ〔ケイシヤウ‐〕【形象×埴輪】

家・人物動物・盾などをかたどった埴輪の総称。

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精選版 日本国語大辞典 「形象埴輪」の意味・読み・例文・類語

けいしょう‐はにわケイシャウ‥【形象埴輪】

  1. 〘 名詞 〙 円筒埴輪に対して、物の形をした埴輪。家形埴輪器財埴輪動物埴輪人物埴輪など形によって大別される。

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改訂新版 世界大百科事典 「形象埴輪」の意味・わかりやすい解説

形象埴輪 (けいしょうはにわ)

古墳の外表各所に列置した素焼きの土製品を埴輪と総称するが,考古学用語としては,これをさらに円筒埴輪と形象埴輪とに大別する。その場合の形象埴輪とは,各種の人工物や自然物の形態をかたどった埴輪の意味である。さらにその対象によって細分すると,人工物をかたどったものに家形(いえがた)埴輪,器財埴輪があり,自然物をかたどったものに動物埴輪,人物埴輪がある。

 形象埴輪の起源について,《日本書紀》には,垂仁天皇の時に野見宿禰(のみのすくね)が人馬および種々(くさぐさ)のものの形の埴輪を作って陵墓に立て,殉死に代えたことにはじまると記している。しかし考古学的研究によると,形象埴輪としては器財埴輪や家形埴輪が先行して4世紀にあらわれ,鳥形埴輪がこれにつづき,馬形埴輪や人物埴輪はおくれて5世紀以降に出現したことが判明している。また,日本における形象埴輪の使用を,中国漢代に盛行した明器泥象(めいきでいしよう)の影響と考えようとした学者もあったが,中国の明器が墓中に納置するのにたいして,日本の形象埴輪は外部に露出して立てる相違があって,簡単に同一視することはできない。近時,秦始皇陵から大量の兵馬俑(へいばよう)が出土して,中国にも墳墓の外部に用いる人馬の土製品があることが判明したが,日本の形象埴輪とは数百年の年代のへだたりがあるので,ただちに関係があるとはいえない。

 4,5世紀の家形埴輪は,かなり忠実に家屋の形をかたどろうとしたので,もとの家屋の用途によって,住居と倉庫とに分けることができる。住居の埴輪は,屋根を切妻造りか入母屋(いりもや)造りとし,棟に勝男木(かつおぎ)を並べたさまを表現するものが多く,四方の壁面には入口と窓とを配置している。住居の床の表現に2種あって,地表からただちに入口に通じる構造のものと,床下に柱列をあらわした高床の構造を示すものとがある。高床の住居は,特殊な宮殿をかたどったものであろう。倉庫の埴輪は,屋根を四注造りか切妻造りにし,まれに片流(かたながれ)造りのものもあるが,棟に勝男木を並べることはなく,壁面には1ヵ所に入口を開くのみで,窓を作らない。倉庫は高床の構造をふつうとするので,小型に作った低床の倉庫を納屋(なや)と呼び分ける人もあるが,便宜的な処置である。ただし,6,7世紀の家形埴輪では,平面形にくらべて高さを誇張して作り,壁面に窓を表さないまま,入母屋造りの棟に勝男木を並べなどして,家屋の象徴に変化したものが多くなった。

 器財埴輪として代表的なものに,盾形,靫(ゆき)形,甲(よろい)形,蓋(きぬがさ)形などがある。盾形,靫形は円筒の前面に盾,靫の形を表したもので,背面は円筒埴輪と同じ〈たが〉をもつ形に作っている。甲形,蓋形は低い円筒形の台の上に甲,蓋の形をのせて作る。甲形は草摺くさずり)をそなえた短甲をかたどるが,さらに肩甲(かたよろい)を加え,冑(かぶと)をそえることもある。蓋形には上部に装飾的な十字飾をそえたものが多い。6,7世紀の器財埴輪になると,小型にした盾,靫などを細い円筒形の上半部に作るように変化した。同様にして大刀(たち)や翳(さしば)の形を作ったものもある。

 動物埴輪には鳥形と馬形,犬形などがある。鳥形は雁などの水鳥と鶏とがあるが,そのどちらが早くはじまったかは明らかでない。はじめは低い円筒を台とし,のちにはしだいに台を高くした。馬形,犬形などの四足獣をかたどったものは,すべて4本の細い円筒を2列に並べた上に胴をのせて作り,同じ方法で鹿,猪,牛などをかたどったものもある。なお馬形(馬形埴輪)は鞍,鐙(あぶみ),三繫(さんがい)などを着装した飾馬(かざりうま)の姿を表すものが多く,馬具用法を知る参考になる。

 人物埴輪は男女の立像にはじまり,のちに座像も作った。男女を区別するため髪形を作り分け,衣服の表現も相違する。また男子の場合には,平装,武装の相違を表すほか,農夫,馬丁などと識別できる姿もある。はじめは男女ともに円筒の上部に上半身像を作りたしていたが,しだいに男子立像は両足まで表現するようになった。女子の立像には下半身を表現したものは少ない。ただし,男女ともに座像の場合には足先まで作ったものがある。手の表現は左右に垂れる静的なもののほか,両手で土器をささげたり,片手を大刀の把(つか)にかけたり,太鼓を打つなどの動作を表現することに努力をはらった作品もある。

 形象埴輪はすべて中空に作ることを特色とする。中空に作るためにも,成形後に除去しうる心棒などは使わなかった。円筒を台として粘土紐を巻き上げたり,板状にのばした粘土板を組み合わせて造形したのである。作品の重量を軽減するためか,家形埴輪の屋根の上半部を分離成形したり,男子埴輪を上半身と下半身とに分離成形して,焼成後に組み合わせることも,一部の地域では試みている。焼成後に赤色,白色などの顔料で彩色することもあった。
埴輪
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「形象埴輪」の意味・わかりやすい解説

形象埴輪
けいしょうはにわ

円筒埴輪以外の生物や物をかたどった埴輪の総称。人物埴輪、動物埴輪、器財埴輪、家形埴輪などに分けられる。古く、家形埴輪が4世紀代に出現し、盾(たて)形埴輪、鶏(にわとり)形埴輪などがそれに続き、5世紀に人物埴輪が加わった。

[橋本博文]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「形象埴輪」の解説

形象埴輪
けいしょうはにわ

埴輪(はにわ)

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旺文社日本史事典 三訂版 「形象埴輪」の解説

形象埴輪
けいしょうはにわ

埴輪の一種。家・動物・人物などをかたどった埴輪の総称。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「形象埴輪」の意味・わかりやすい解説

形象埴輪
けいしょうはにわ

埴輪」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の形象埴輪の言及

【埴輪】より

…表飾として古墳に樹立した土製品の一種。円筒埴輪形象埴輪とに大別する。円筒埴輪は筒形を呈し,外面に箍(たが)状の突帯を巡らせ,突帯間に孔をうがつ。…

※「形象埴輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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