精選版 日本国語大辞典 「彼処」の意味・読み・例文・類語
あそ‐こ【彼処】
(イ) あの場所。また、漠然とした場所や方向をさし、「ここ」と対比して用い、「あちこち」の意にもなる。
※平家(13C前)一「あそこに追ひかけ、ここに追っつめ」
※あさぢが露(13C後)「あそこに燈台かしこに屏風など置きてありくを」
(ロ) 両者が了解し合える特定の場所をぼかしていう。例の所。
※夢を植える(1975‐76)〈清岡卓行〉バス停留所「そのかわり、あそこは、しだいに、痛いほど勃起してくる」
かし‐こ【彼処】
〘代名〙
① 他称。話し手、聞き手の両者から離れた場所を指し示す(遠称)。あそこ。
※伊勢物語(10C前)九六「かしこより人おこせば」
※平家(13C前)一〇「ここにたたかひ、かしこにあらそひ」
② 他称。話の中で語られた場所を指し示す。そこ。
あす‐こ【彼処】
〘代名〙
① 他称。話し手、聞き手両者から離れた場所を指し示す(遠称)。あそこ。
※洒落本・廻覧奇談深淵情(1803)其四「あすこに見へるのは面(めん)かねへ」
② 両者が了解し合える、特定の場所を指していう。例の所。
あし‐こ【彼処】
〘代名〙 他称。話し手、聞き手両者から離れた場所を指し示す(遠称)。あそこ。かしこ。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「あしこに待ちわたりなむとするを」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「あしこに籠りなむのち、また人には見え知らるべきにもあらず」
あ‐こ【彼処】
〘代名〙 他称。話し手、聞き手両者から離れた場所を指し示す。あそこ。
※物類称呼(1775)五「あそこここといふを〈略〉京にてあこと云」
あっそ‐こ【彼処】
〘代名〙 「あそこ(彼処)」の変化した語。
※三体詩幻雲抄(1527)五「あっそこに青々と見へたは枝歟葉歟」
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