(読み)リツ

デジタル大辞泉 「律」の意味・読み・例文・類語

りつ【律】[漢字項目]

[音]リツ(漢) リチ(呉) [訓]のり
学習漢字]6年
〈リツ〉
行動を秩序づけるためのおきて。さだめ。「律令りつりょう格律規律軍律法律不文律
物事の法則。「因果律矛盾律
仏教で、僧の守るべき規則。「律師律宗戒律
ある基準に照らして処置する。「自律他律
音楽の調子。「律動一律韻律音律楽律旋律調律
雅楽などで、陽の調子。「律呂りつりょ
漢詩の一体。「律詩排律
〈リチ〉おきて。きまりに従う。「律儀
[名のり]おと・ただし・ただす
[難読]呂律ろれつ

りつ【律】

古代、中国を中心とする東アジア諸国の刑法典りょうとともに国家の基本法で、刑罰を規定したもの。日本では、天武天皇の時の飛鳥浄御原きよみはら律が最初で、以後、大宝律養老律で完成した。→律令
《〈梵〉vinayaの訳》仏語。
㋐僧尼の守るべき生活規律。
㋑「律蔵」の略。
㋒「律義りつぎ」の略。
㋓「律宗」の略。
楽音の絶対音高をさす。音律。ピッチ
日本および中国音楽の音程の単位。十二律の音の高さの差を表し、一律は洋楽の半音にあたる。
十二律のうち、陽(奇数律)に属する6音。⇔りょ
催馬楽さいばらで、平調ひょうじょうの音を主音とする曲。⇔
律詩りっし」の略。
律旋法」の略。⇔
律調」の略。⇔

りち【律】[漢字項目]

りつ

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精選版 日本国語大辞典 「律」の意味・読み・例文・類語

りつ【律】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 音楽で、音律、楽律の意。また、音調。調子。拍子。りち。
    1. [初出の実例]「然るに鳳皇麒麟亀龍をば、これを四霊と名づけて、その鳴声律(リツ)に叶ひ、備ふる形数に応じ」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)四)
    2. [その他の文献]〔書経‐舜典〕
  3. 特に雅楽で、絶対音高の定まった十二律を陰陽の二種に分けたときの陽の音の称。日本では壱越(いちこつ)、平調(ひょうじょう)、下無(しもむ)、鳧鐘(ふしょう)、鸞鏡(らんけい)、神仙(しんせん)の六音をいう。六律。陰の音は呂(りょ)という。りち。〔漢書‐律歴志上〕
  4. 律旋(りっせん)のこと。りち。
    1. [初出の実例]「をかしげなる和琴の〈略〉りつにいとどよくしらべられたり」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)常夏)
    2. 「御遊ありけるに、呂をはりて律にうつりける時、〈略〉打聞ば呂の調べにて、律の声を引べきやうもなければ」(出典:十訓抄(1252)四)
  5. りっかん(律管)」の略。〔礼記‐月令〕
    1. (イ) のり。おきて。法令。刑法。特に古代、中国を中心とした東アジア諸国の刑法典。令を強制するための刑罰を定めたもの。日本では天武天皇のとき編纂された飛鳥浄御原律(あすかきよみはらりつ)が最初のもので、大宝元年(七〇一)の大宝律、養老二年(七一八)の養老律によって完成する。中国、特に唐律の影響を強く受け、その多くが模倣とされる。
      1. [初出の実例]「流罪以下、減一等、其犯八虐者、不此律」(出典:律(718)名例)
      2. 「人くふ犬をば養ひかふべからず。これみなとがあり。律の禁なり」(出典:徒然草(1331頃)一八三)
      3. [その他の文献]〔爾雅‐釈詁〕
    2. (ロ) のっとるべき物事。手本。模範。
      1. [初出の実例]「学而無文、猶口而不一レ言。然文之入律亦難」(出典:童子問(1707)下)
  6. りっし(律詩)
    1. [初出の実例]「一聯が律(リツ)にも絶句にもならず」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一二)
  7. ( [梵語] vinaya 毘奈耶の訳 ) 仏語。
    1. (イ) 僧尼の守るべき生活規律。
      1. [初出の実例]「臈の次にまかせて座をつらね、律の文によりてことをつたへたり」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
      2. [その他の文献]〔大乗義章‐一〕
    2. (ロ)りつぞう(律蔵)」の略。
      1. [初出の実例]「律即立二十犍度以明戒行」(出典:選択本願念仏集(1198頃))
    3. (ハ)りつぎ(律儀)」の略。〔勝鬘経義疏(611)〕
    4. (ニ)りっしゅう(律宗)」の略。
  8. 弁護士のこと。
    1. [初出の実例]「ヨジシ(貧民窟)のなかで、リツ(弁護士)やシャジ(医者)のところへ行けないヒカワ(貧乏人)相手に」(出典:いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉一)

りち【律】

  1. 〘 名詞 〙りつ(律)
    1. [初出の実例]「をかしげなる和琴のある引き寄せ給ひて、かき鳴らし給へば、りちにいとよくしらべられたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「律」の意味・わかりやすい解説

律(仏教)
りつ

仏教の戒律およびそれを示す書物。サンスクリット語のビナヤvinaya(毘奈耶(びなや)、毘尼(びに)と音写)の訳。調伏(ちょうぶく)ともいう。仏教の出家修行者は男女それぞれ集団生活をしていたが、この集団をサンガsagha(僧伽(そうぎゃ)、僧)といい、律はサンガの規則であり、2種に分かれる。サンガの運営の規則と、修行僧個人の守るべき規則とである。前者を羯磨(こんま)(議決方法の意)とよび、入団許可の規則(具足戒羯磨)、半月1回の集会の規則(布薩(ふさつ)羯磨)など、ほぼ100種(百一羯磨)がある。第二の修行僧の守る規則は、男性(比丘(びく))にほぼ250条(二百五十戒)、女性(比丘尼(びくに))に350条ほど(『四分律』では348であるが、数は不定。俗に比丘尼の五百戒という)ある。この条文を集めたものを『波羅提木叉(はらだいもくしゃ)』といい、『戒経』と訳し、インドの仏教教団でもっとも重要視されたものである。二百五十戒は8節に分かれ、軽重の罪が決められている。もっとも重罪を波羅夷(はらい)といい、貞潔の破棄・盗み・殺人・大妄語(だいもうご)の4条で、これを破るとサンガから追放される。比丘尼の条文では波羅夷は8条ある。

 律は釈迦(しゃか)の制定した規則が母胎となり、それに解釈が付加され整備されて、仏滅100年ごろまでに聖典の形にまとめられ、さらに紀元前1世紀に書写され、書物になった。これを律蔵という。セイロンスリランカ)に伝わった『パーリ律』(ビナヤピタカVinaya-Piaka)、紀元後5世紀に中国に伝わった『十誦(じゅうじゅう)律』『四分(しぶん)律』『五分律』『摩訶僧祇(まかそうぎ)律』、さらに7世紀に義浄(ぎじょう)によって伝えられた『根本説一切有部(せついっさいうぶ)律』(チベット訳もある)がある。これらはそれぞれの部派仏教で伝持された律蔵であるので、細部には違いがあるが、大綱は合致しており、スリランカ、ミャンマー(ビルマ)、タイなどでは、現在もこの律蔵で教団の秩序を維持している。

 律は強制的な規則であるが、修行僧はこれを自発的に守るので、これを戒といい、律と合して戒律ともいう。在家信者はサンガをつくらないから律はなく、五戒などの戒だけがある。大乗仏教徒も最初は在家教団であったが、のちに出家教団もでき、部派仏教の律蔵を採用して教団の規則とした。中国仏教や日本の律宗は『四分律』を所依として一宗をたてている。

[平川 彰]


律(律令制)
りつ

令(りょう)と並び律令制国家の基本法典の一つ。ほぼ刑法にあたる。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「律」の意味・わかりやすい解説

律 (りつ)

中国や日本の音楽用語。音の高さ,およびその規定。楽律ともいう。中国では古来国家体制の変革とともに度量衡の改定が行われ,その規準として音律を定め,その音律を出すことのできる律管の長さや容積を度量衡の規準としたために音律が重視され,音律の意味で単に〈律〉とも称した。たとえば十二律という語は,理論的に無限に存在する音の中から1オクターブ内の12の音律を取り出した場合の総称として用いられた。また,十二律の奇数番目の6音律(黄鐘(こうしよう),太簇(たいそう)/(たいぞく),姑洗(こせん),蕤賓(すいひん),夷則(いそく),無射(むしや)/(ぶえき))を律といい,残りの6音律を呂(りよ)という。なお法律用語の律については〈律令格式〉の項を参照。
律呂 →
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「律」の意味・わかりやすい解説


りつ

中国,日本の音楽理論用語。 (1) 中国,日本の古典的音楽理論における楽律のこと。つまりオクターブ内の諸音の高さの算定法,あるいは諸音と標準音との音程関係を規定する理論。オクターブ内を 12の絶対音高に分ける十二律が一般的。 (2) 十二律のうち奇数番目にあって陽性をもつと考えられていた6律をいい,陰性の (りょ) に対する。 (3) 音の高さ,特に旋律構成音の高さをいう。 (4) 音程の意味にも用いる。音程の単位語として,半音を1律,全音を2律というように用いられる。非常に広い音程に対してはあまり用いられない。 (5) 音階の種類の名称で,雅楽や声明 (しょうみょう) などで三分損益法によって生じる普通の音階を呂の音階というのに対して,それと異なる日本独自のものを律の音階,律旋などという。両者の中間的なものを半律半呂ともいい,現在の呂旋といわれるものに相当する。雅楽・唐楽では六調子を律と呂に分け,平調 (ひょうぢょう) ,黄鐘 (おうしき) 調,盤渉 (ばんしき) 調は律の音階に属するとされているが,現行の雅楽にはこの理論をそのままあてはめることはできない。 (6) 催馬楽 (さいばら) などの楽曲分類法として,2分した結果呂でないものを律という。


りつ

唐律を母法とする日本の古代法典の一つ。刑法および官吏懲戒法に相当する。日本における律の編纂は,『飛鳥浄御原律』 (→飛鳥浄御原律令 ) に始るといわれているが,その存在には疑いもある。確実に存在した律は,大宝1 (701) 年に成った『大宝律』 (→大宝律令 ) であり,今日その全編が亡佚しているが,その内容は,『令集解 (りょうのしゅうげ) 』所引の古記,『律集解』逸文所引の古答からうかがいうる。『養老律』 (→養老律令 ) は養老年間 (717~724) に編纂され,天平宝字1 (757) 年に施行された。条文数はおよそ 500条,総則にあたる「名例律」,ならびに各論にあたる「衛禁律」以下 12編から成るが,そのうち,今日に伝えられているものは,「職制」「賊盗」の2律と,「名例」「衛禁」「闘訟」の一部のみである。ただし,平安時代以降室町時代以前の諸書には,この律の逸文を載録しているものが多く,それによりこの律の多くの条文が復元されている。 (→律令格式 )  


りつ
vinaya

仏教の僧尼が,仏道を修行するうえで守るべき規範や,違反したときに受ける罰則を定めたもの (→戒律 ) 。これを集成したものを律蔵と呼ぶ。セイロン上座部の伝えたパーリ律,漢訳の『四分律』『五分律』『十誦律』『摩訶僧祇律』などが現存する。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「律」の解説


りつ

古代の法。律令のうちの律。今日の刑法にあたるもので,犯罪と刑罰を規定した法。中国では早くから発達し,隋・唐時代には高度で体系的な法として大成された。日本では7世紀後半から導入をめざしたが,条文の改変はわずかで,結果として中国と大差のない法典となった。日本最初の律は浄御原(きよみはら)律といわれてきたが,制定施行説・非施行説・未完成説・唐律代用説など諸説あって明らかでない。その後は大宝律・養老律が作成・頒行された。ただし,実際に律にもとづいて犯罪と刑罰が処断されたかどうかは疑問が多い。大宝律は全巻が散逸,養老律も全10巻のうち3巻を伝えるのみだが,逸文の収集によって,今日では大宝律のごく一部と養老律のかなりの部分を知ることができる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「律」の解説


りつ

律令制における基本法で,現在の刑法にあたる
701年の大宝律,718年の養老律がある。令に比べると唐制の模倣が強い。大宝律6巻を改修した養老律10巻も大部分は伝わらず,一部しかわからない。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【十二律】より

…中国,朝鮮,日本の音楽理論用語。互いに半音の音程をもってオクターブ内に収められた12個の音律をいう。中国では古く周代から行われ,漢代以後その算定法が確立した。…

【度量衡】より

…なお衡と類縁の文字で権(けん)というのもあるが,これは,はかりそのものではなく,分銅のほうを指す。これら4文字をさまざまに組み合わせた語が古くから用いられており,例えば度量という語は,人の心の広さを指すのに用いられ,また他方では度量衡,度量権衡などの語と同義的にも用いられて,〈長さ,面積,体積,質量をはかること,これらの量をはかるための道具や基準,また,それらにかかわる法律的,行政的な制度ないし公共的な協約〉を指すものと解されてきている。 これらの語の出典として,中国の史書や古典のうち《書経》《国語》《礼記(らいき)》《周礼(しゆらい)》《史記》などもあげられるが,この種の書では,度量衡を正しく定めることの政治的な意義が強調されている場合が多いようである。…

【律管】より

…中国で古来,音の高さを示すために考案された管で,または律呂(りつりよ)と呼んだ。起源に関しては,黄帝(こうてい)が伶倫に命じて竹で十二律を作らせたという伝説がある。…

※「律」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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