うわ‐なり うは‥【後妻】
[1] 〘名〙
① 後にめとった妻。古くは、初めて迎えた妻、本妻に対して次の妻をいい、後には
死別または
離縁した妻のあとに迎えた妻をいう。⇔
前妻(こなみ)。
※古事記(712)中・歌謡「宇波那理(ウハナリ)が 肴(な)乞はさば 柃(いちさかき)実の多けくを 許多(こきだ)ひゑね」
※光悦本謡曲・鉄輪(1488頃)「捶をふりあげうはなりの、かみを手にからまいて」
② (
前妻が後妻を嫉妬するというところから) ねたみ。そねみ。悋気
(りんき)。〔
新撰字鏡(898‐901頃)〕
※俳諧・犬子集(1633)一一「敵よりも猶こはき
女房 うはなりのいかり来にける其気色〈由己〉」
※
随筆・松屋筆記(1818‐45頃)八六「人の怨霊をうはなりとは中古よりいふ詞也」
[2] (嫐) 歌舞伎十八番の一つ。初世市川団十郎作。元祿一二年(
一六九九)江戸中村座の「一心五界玉」の第三番目で
初演。後妻打
(うわなりう)ちの風習の
劇化。以後男一人に女二人の嫉妬の
所作に「嫐」の文字を用いた。
ご‐さい【後妻】
〘名〙 妻と死別もしくは離別した男が、そのあとで結婚した妻。のちぞい。
こうさい。〔
俚言集覧(1797頃)〕
こう‐さい【後妻】
※
浮世草子・
新可笑記(1688)三「一門取持て他国より幸の縁にひかれ、後妻
(コウサイ)をもとめられしに」 〔
史記‐五帝本紀〕
こう‐せい【後妻】
※
色葉字類抄(1177‐81)「後妻 コウセイ ウハナリ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「後妻」の意味・読み・例文・類語
うわ‐なり〔うは‐〕【後=妻】
1 あとに迎えた妻。上代は前妻または本妻以外の妻をいい、のちには再婚の妻をいう。⇔前妻。
「この―こなみ、一日一夜よろづのことを言ひ語らひて」〈大和・一四一〉
2 ねたみ。嫉妬。〈新撰字鏡〉
ご‐さい【後妻】
妻と死別または離婚した男が、そのあとで結婚した妻。後添い。こうさい。⇔先妻。
[類語]後添い・継妻
あと‐め【後▽妻】
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普及版 字通
「後妻」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の後妻の言及
【後妻打ち】より
…前妻が親しい女たちをかたらって後妻を襲い,家財などを打ちこわしらんぼうをはたらくこと。うわなりとは,古語で前妻を意味する〈こなみ〉に対する後妻,次妻に相当し,また第二夫人,妾を指すことも多い。…
【妻】より
…幕府は大名の体面上一度は妻を迎えるよう,1763年(宝暦13)6月布達を出しているので,江戸中期にはめとらない大名が存在したようである。一方,江戸時代前半期にはときどきみられるところの後妻を側妾から昇格させることは,1724年(享保9)7月忌服(きぶく)の問題が煩雑になることを理由に制限を加え,ついで33年4月には昇格を禁止した。【上野 秀治】
[妻と嫁]
妻は嫁とは異なる社会的地位と役割を持つ存在である。…
※「後妻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報