国民の必任義務とされた兵役を免れるための合法・非合法の行為。絶対的平和主義などの信条にもとづく良心的兵役拒否と,その他の動機にもとづく徴兵忌避とがあった。前者は日露戦争以来,少数であったが一部のキリスト教徒の間に出現し,徴兵を拒否して懲役に服する道を選んだ。合法的徴兵忌避は,初期の徴兵令が戸主とその後継者,代人料を払った者,外国在住者などを免役としたため,名目だけの養子縁組,代人料支払,外国渡航などの方法が行われた。また北海道,沖縄県は日清戦争(1894-95)後まで徴兵令が施行されなかったので本籍地をこれらの地方に移し,さらに朝鮮植民地化(1910)後数年は朝鮮移住者に対する徴兵令違反の裁判権がなかったことを利用するなどのことも行われた。兵役義務を事実上短期間で終わらせるための特権的制度,中等学校以上の卒業生に対する1年志願兵=幹部候補生制,師範学校卒業生に対する短期現役兵制(6週間現役兵,1年現役兵)も利用された。非合法の徴兵忌避で多かったのは徴兵検査を受けずに逃亡し所在不明となることであったが,約18年間発見されずに逃亡しつづけなければ,刑事罰と優先的徴兵という二重の罰を科せられた。徴兵検査に合格しないための詐病・自傷も多かった。兵役法では徴兵忌避に3年以下の懲役が科せられた。平時には徴兵検査合格者中から抽選で徴集されたので,全国各地でくじ逃れの神仏が信仰を集めた。
執筆者:大江 志乃夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新