心太(読み)ココロブト

デジタル大辞泉 「心太」の意味・読み・例文・類語

こころ‐ぶと【心太】

[名]
テングサ別名
ダイコンの別名。
ところてん
盂蘭盆うらぼんの夜もすがら、―売ることしかり」〈七十一番職人歌合
[形動ナリ]心がしっかりして動じないさま。大胆であるさま。
大蔵もとより―なれば」〈読・春雨・樊噲上〉

ところ‐てん【心太/瓊脂】

海藻テングサを煮て寒天質をこし、型に流し込んで冷やし固めた食品ところてん突きで突き出してひも状にし、酢醤油二杯酢などをかけて食べる。夏の味覚とされる。 夏》

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精選版 日本国語大辞典 「心太」の意味・読み・例文・類語

ところ‐てん【心太・心天・瓊脂】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 海藻のテングサを煮とかして、その煮汁をこし、型に流して冷やし固めた食品。ところてん突きで突き出し、醤油や酢をかけ、とき辛子や青海苔を添えて食べる。夏には暑気を払い、冬には寒気に堪えるとされた。こころぶと。《 季語・夏 》
    1. 心太<b>①</b>〈伊勢参宮名所図会〉
      心太〈伊勢参宮名所図会〉
    2. [初出の実例]「心太」(出典:頓要集(14C後‐15C前))
    3. 「見て涼しひむろや出るところてん」(出典:俳諧・犬子集(1633)三)
  3. 海藻「てんぐさ(天草)」の異名。〔本朝食鑑(1697)〕
  4. ところてんしき(心太式)」の略。
    1. [初出の実例]「彼がその地位に就いたのは、永い間勤めていたための云わばトコロテン人事であった」(出典:影の車(1961)〈松本清張〉五)

心太の語誌

( 1 )「十巻本和名抄‐九」に、「大凝菜 楊氏漢語抄云大凝菜〈古々呂布度〉本朝式云凝海藻〈古流毛波 俗用心太読与大凝菜同〉」とあるように凝海藻で作った食品を平安時代にはコルモハといい、俗に心太の字をあてて、ココロフトと称していたのである。
( 2 )このココロフトが室町時代にはココロテイとも読まれるようになり、ココロテイが更になまって、いつしかココロテン、さらにはトコロテンとなったと思われる。


こころ‐ぶと【心太】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物てんぐさ(天草)」の異名。〔正倉院文書‐天平宝字四年(760)四月一五日・経所見物注文案〕
    1. [初出の実例]「磯菜摘まん今おひ初むる若布海苔海松布ぎばさひじきこころぶと」(出典:山家集(12C後)下)
  3. 植物「だいこん(大根)」の異名。
  4. ところてん(心太)」の異称。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「心太(ココロフト)のやうなる物を生たりければ、あやしみて、鉢に入て門の榎のまたにさしあげてけり」(出典:米沢本沙石集(1283)五末)
  5. ( 形動 ) 心がしっかりしていて動じないさま。大胆な。
    1. [初出の実例]「誠小者小中間まて心太に成候て、中中不趣候」(出典:毛利家文書‐永祿元年(1558)八月日・毛利元就書状写)

こころ‐てい【心太】

  1. 〘 名詞 〙 ところてん。こころてん。
    1. [初出の実例]「うらぼんのなかばの秋の夜もすがら月にすますや我心てい〈略〉右は、うらぼんのよもすがら、心ぶとうることしかり。心ていきく心地す」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)七一番)

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改訂新版 世界大百科事典 「心太」の意味・わかりやすい解説

心太 (ところてん)

テングサ,イギスオゴノリなどを煮て寒天質を溶出させ,それを凝固させた食品。古くはテングサなどをさして〈こころぶと〉と呼び,心太と書いた。平安京の東西の市には〈心太〉があったが,この店のほかに〈海藻〉〈海菜〉もあったことからすると,この心太店はあるいはテングサ屋ではなくて,現在同様に加工されたところてんを売っていたのかもしれない。《七十一番職人歌合》には女のところてん売が登場し,ところてん突きで突き出している姿が描かれているが,彼女の詠んだ歌には〈こころぶと〉を〈こころてい〉とあり,この〈こころてい〉が変じて〈ところてん〉になったと,荻生徂徠はいっている。ところてんは,めん(麵)状に突き出したものに酢じょうゆ,からしじょうゆ,砂糖みつなどをかけて食べ,あるいはさいの目状に切ってみつ豆の材料とする。成分は99%までが水分で栄養分がないため,美容食としても利用される。なお,ところてんの一種に〈おきゅうと〉がある。昔は〈うけうと〉とも呼んだもので,エゴノリでつくる。博多地方で愛好されているものであるが,貝原益軒はどういう理由によるものか,〈佳品に非ず,食すべからず〉といっている。
寒天
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「心太」の解説

ところてん【心太】

天草(てんぐさ)という海藻を煮溶かし、煮汁をこして型に流し入れ、冷やし固めた食品。ところてん突きで細く麺状に突き出し、からしや青のりを添えて酢じょうゆで食べるのが一般的。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「心太」の解説

心太 (ココロブト)

植物。アブラナ科の越年草,園芸植物,薬用植物。ダイコンの別称

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世界大百科事典(旧版)内の心太の言及

【寒天】より

…テングサなどの熱水抽出液の凝固物であるところてん(心太)を凍結乾燥した海藻加工品。ところてんはすでに奈良時代に食用にされていたが,江戸時代に至り,偶然戸外に捨てたところてんが寒気で凍り乾燥したことが契機となり製造されるようになったため,寒天と名付けられた。…

※「心太」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」