必須アミノ酸(読み)ヒッスアミノサン

デジタル大辞泉 「必須アミノ酸」の意味・読み・例文・類語

ひっす‐アミノさん【必須アミノ酸】

動物の成長や生命維持に必要であるが、体内で合成されないため、食物から摂取しなければならないアミノ酸。人間の場合、成人ではリシンリジン)・トリプトファンイソロイシンロイシンメチオニンフェニルアラニントレオニンスレオニン)・バリンの8種。幼児では、合成の少ないヒスチジンも必須アミノ酸に加えられる。不可欠アミノ酸。

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精選版 日本国語大辞典 「必須アミノ酸」の意味・読み・例文・類語

ひっす‐アミノさん【必須アミノ酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( アミノは[英語] amino ) 動物が生命を維持するために必要なアミノ酸のうち、体内で合成できないか、または合成しにくいために、食物中からとり入れなければならないもの。人間では成人で八種、小児で一〇種があげられている。イソロイシン・ロイシン・リジン・フェニルアラニン・メチオニン・スレオニン・トリプトファン・バリンおよびアルギニン・ヒスチジン。不可欠アミノ酸。

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改訂新版 世界大百科事典 「必須アミノ酸」の意味・わかりやすい解説

必須アミノ酸 (ひっすアミノさん)
essential amino acid

不可欠アミノ酸ともいう。アミノ酸のうち動物の体内では合成ができないか,きわめて合成しにくく,外から食物として取り入れなければならないアミノ酸をいう。独立栄養生物である植物や細菌類では,みずから必要なアミノ酸のすべてを生合成できる。ネズミの詳しい成長実験では,次の10種の必須アミノ酸が確認されている。バリン,ロイシン,イソロイシン,トレオニン,フェニルアラニン,トリプトファン,メチオニン,リシン,ヒスチジン,アルギニンである。このうちアルギニンは動物によってある程度合成されるが,成長期の必要にこたえられるほど合成できない。ヒトの場合,ヒスチジンは成人では可欠アミノ酸であるが,幼児には成長促進の働きがある。この点からヒトではアルギニン,ヒスチジンを除いた8種のアミノ酸を必須とすることができる。それ以外のアミノ酸はそれ相応の炭素骨格さえあれば,グルタミン酸アスパラギン酸などの窒素源からアミノ基を転移させて生体内で合成することができる。必須アミノ酸はすべてL-型が有効であるが,リシン,トレオニン以外はD-型も有効である。これはD-アミノ酸オキシダーゼによってケイ酸となり,アミノ基転移酵素によってL-型に変わりうるからである。また,相応するα-ケト酸,α-ヒドロキシ酸で代替できるものも多い。また,鳥類では別にグリシンが不可欠であるといわれる。無脊椎動物についての研究は少ないので,脊椎動物の必須アミノ酸がそのまま適用されるかどうか不明である。

 必須アミノ酸以外のアミノ酸は,肝臓のほか筋肉,腎臓,腸などで合成および分解される。なお,分枝アミノ酸であるバリン,イソロイシン,ロイシンは脳と筋肉で分解され,その他の必須アミノ酸は主として肝臓で分解される。
アミノ酸
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「必須アミノ酸」の意味・わかりやすい解説

必須アミノ酸
ひっすあみのさん

食品タンパク質の構成アミノ酸は約20種あり、そのうち栄養上とくに重要なアミノ酸を必須アミノ酸、または不可欠アミノ酸とよぶ。必須アミノ酸はどの1種が欠けても、発育、成長、体の維持に影響し、成長を停止したり、窒素平衡をマイナスにする。必須アミノ酸は体内でまったく合成されないか、合成されても非常にわずかであるため、食事からかならず摂取しなければならないアミノ酸である。

 必須アミノ酸はイソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種である。またシスチンはメチオニンの一部を、チロシンはフェニルアラニンの一部を代替できるので、メチオニン+シスチン、フェニルアラニン+チロシンの合計量を計算する。食品タンパク質の栄養価は必須アミノ酸の量によって決まってくる。必要量に対してもっとも不足する必須アミノ酸を第一制限アミノ酸とよび、二番目に不足するアミノ酸を第二制限アミノ酸とよぶ。リジン、メチオニン、トリプトファン、トレオニンの4種の必須アミノ酸が制限アミノ酸になることが多い。

 必須アミノ酸以外のアミノ酸を非必須アミノ酸とよぶ。非必須アミノ酸は体内で合成されるので、かならず食事からとらなければならないものではないが、必須アミノ酸のみの場合より非必須アミノ酸を加えたほうが成長もよいので、不必要なアミノ酸という意味ではない。アルギニン、グルタミン酸などがその代表である。

[宮崎基嘉]

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化学辞典 第2版 「必須アミノ酸」の解説

必須アミノ酸
ヒッスアミノサン
essential amino acid

不可欠アミノ酸,必要アミノ酸ともいう.タンパク質を構成しているアミノ酸は約20種類であるが,このなかで外から摂取しなければ生育不可能なものと体内で合成できるものとがある.摂取が必要な一群のアミノ酸を必須アミノ酸という.生物体によって異なり,ヒトではイソロイシン,ロイシン,リシン,メチオニン,フェニルアラニン,トレオニン,トリプトファン,バリンの8種類で,ネズミではヒスチジン,アルギニンが加わり,トリではグルタミン酸も必要だといわれる.必須アミノ酸は体内で十分量をほかの化合物から合成できないものであり,一つでも欠けていると,体重の保持あるいは成長に大きく影響し,栄養失調になる.

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百科事典マイペディア 「必須アミノ酸」の意味・わかりやすい解説

必須アミノ酸【ひっすアミノさん】

不可欠アミノ酸とも。動物が自分の体内では合成できず,食物として摂取しなければならないアミノ酸。動物によって異なり,人間の場合成人ではロイシン,イソロイシン,バリン,スレオニン,リジン,メチオニン,フェニルアラニン,トリプトファンの8種で,幼児の場合はこれにヒスチジンが加わる。ネズミなどでは別にアルギニンを,鳥類ではグリシンを必要とする。必須アミノ酸以外のアミノ酸は,肝臓,筋肉,腎臓,腸などで分解・合成される。植物では必要な全アミノ酸が合成可能。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「必須アミノ酸」の意味・わかりやすい解説

必須アミノ酸
ひっすアミノさん
essential amino acid

不可欠アミノ酸ともいう。他のアミノ酸から体内において生合成できないか,合成速度が極度に遅くて必要を満たせないアミノ酸をいい,動物の種によって多少異なる。成人ではロイシン,イソロイシン,バリン,トレオニン,リジン,メチオニン,フェニルアラニン,トリプトファンの8種。幼児ではほかにヒスチジンとアルギニンが加わる。必須アミノ酸は栄養として摂取する必要があり,これらの含有量は蛋白質の栄養価の目安となる。これらを含まない蛋白質ばかりの偏食は,障害を生じることがある。

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栄養・生化学辞典 「必須アミノ酸」の解説

必須アミノ酸

 不可欠アミノ酸ともいう.タンパク質合成に使われるアミノ酸で,体内で合成できないため食事から摂取する必要のあるアミノ酸.ヒトではロイシン,イソロイシン,リシン,トレオニン,トリプトファン,バリン,ヒスチジン,メチオニン,フェニルアラニンの9種類.チロシンはフェニルアラニンからのみ合成され,シスチンはメチオニンからのみ合成されるので必須アミノ酸に準じて扱われることがある.

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世界大百科事典(旧版)内の必須アミノ酸の言及

【アミノ酸】より

…ヒトはタンパク質を構成するアミノ酸20種のうち10種(Arg,Ile,Trp,Thr,Val,His,Phe,Met,Lys,Leu)を十分量合成できず,食物として摂取しなければならない。これを必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)という。高等植物は20種のアミノ酸全部を合成でき,微生物は種により合成能力がまちまちである。…

【栄養】より

…このような栄養型を独立栄養(無機栄養,自栄養)という。これに対して動物の多くはきわめて限られた合成能力しかもたず,エネルギー源として炭水化物,脂肪,タンパク質などの高分子化合物を必要とするうえに,体を構成するタンパク質の材料である20余種のアミノ酸のうちの約10種(必須アミノ酸),補酵素などの構成成分として必要なビタミン類,不飽和脂肪酸なども要求し,それらのものを食物として摂食する必要がある。このような栄養型を従属栄養(有機栄養,異栄養)という。…

※「必須アミノ酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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