忌避剤(読み)キヒザイ

デジタル大辞泉 「忌避剤」の意味・読み・例文・類語

きひ‐ざい【忌避剤】

有害動物の嫌う成分を用い、害虫害獣などが近寄らないようにする薬剤

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精選版 日本国語大辞典 「忌避剤」の意味・読み・例文・類語

きひ‐ざい【忌避剤】

  1. 〘 名詞 〙 昆虫鳥獣を、臭いや味などの化学的刺激によって農作物から遠ざけるための薬剤。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「忌避剤」の意味・わかりやすい解説

忌避剤
きひざい

好ましくない虫や獣を近づけないことを目的に用いる薬剤で、リペレントrepellentともいう。カ、アブ、ブユ(ブヨ)、ノミ、ナンキンムシ、ダニ、サシバエなどの虫刺されの予防に用いられるものに、ジエチルアミド・ジ-N-プロピルイソシンコメロネート、2・3・4・5-ビス(Δ2-ブチレン)テトラヒドロフルフラール、イソシンコメロン酸ジノルマルプロピル、N-オクチル-ビシクロヘプテン・ジカルボキシイミドなどがあり、これらを含有するスプレー、ローションクリームが市販されている。顔、首すじ、腕、足など皮膚の露出部に塗布または噴霧する。そのほか、衣服の袖(そで)口、裾(すそ)などの内側にしみ込ませて使用することもある。

 ネズミや野兎(やと)に対する忌避剤にはβ-ナフトールやシクロヘキシミドがある。これらの作用は味覚忌避であり、ネズミや野兎がかじって初めて効果を発揮するもので、電線やガスホース、家具などには有効であるが、単に通路にしている所では効果が期待できない。シクロヘキシミドを0.2%含有するスプレーが市販されている。

[幸保文治・村田道雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「忌避剤」の意味・わかりやすい解説

忌避剤 (きひざい)
repellent

有害動物に忌避行動をとらせる薬剤。カ,シラミ,ダニなどの衛生害虫の忌避剤として,ジメチルフタレート,2-エチル-1,3-ヘキサンジオール,NN-ジエチル-m-トルイルアミドなどが知られている。果樹に害を与える吸汁性のヤガの忌避剤にはテトラヒドロチオフェンが,果樹や木材の幹を加害するネズミ,ノウサギなどの忌避剤にはβ-ナフトール,クレオソート,抗生物質のシクロヘキシミドや殺菌剤のチラムが用いられる。また,果樹やイネを加害する鳥類悪臭によって忌避させる薬剤として,ジアリルジスルフィドが開発され,スズメを赤い色で忌避させるために酸化第二鉄なども用いられる。
忌避物質
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「忌避剤」の意味・わかりやすい解説

忌避剤
きひざい
repellent

昆虫,動物が忌避する薬剤。対象動物の臭覚や味覚による趨化性を利用したもので,獣類,鳥類を対象としたものが多い。昆虫を対象としたものはカ,シラミ,ダニなど人畜の吸血昆虫に対するもので,皮膚に塗布するか,衣類にしみこませて用いられる。 NN-diethyl-m-toluamideがこの目的のため広く実用化されている。獣類に対するものでは,特異な刺激臭をもつクレオソート,βナフトールがあり,ノウサギ,ノネズミ,イノシシなどに効果がある。鳥類に対するものでは,酸化第二鉄 (ベンガラ) があり,籾種に塗布したり,稲,麦に散布することによりスズメの食害防止に使用されているほかに,ジアリルジスルフィド,テトラヒドロチオフェンなどの特異な臭気をもつ薬剤があり,水田,果樹園のスズメ,カラス,ムクドリなどの被害防止に有効である。

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百科事典マイペディア 「忌避剤」の意味・わかりやすい解説

忌避剤【きひざい】

昆虫や小動物を寄せつけない作用をもつ薬剤。昆虫忌避剤が最も一般的で,ジエチルトルアミド,ジメチルフタレートなどを主剤としたローションやクリームを,人体の露出した皮膚に直接,あるいはエーロゾルで塗る。カ,ブユなどの刺咬防止に数時間有効。衣類を忌避剤の希釈液に浸し,かわかして着用すると長期間有効。
→関連項目農薬ブユ防虫剤

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栄養・生化学辞典 「忌避剤」の解説

忌避剤

 殺虫剤と異なり,害虫を追いやる作用のある薬剤.ジメチルフタレート,ジブチルフタレートなど.

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世界大百科事典(旧版)内の忌避剤の言及

【忌避物質】より

…生物体がつくる物質のうち,動物の摂食行動や産卵行動を抑制する働きをもつもの。特に昆虫の産卵場所の選択,食物選択において,その物質が含まれる生物を避けるように作用する物質を指して使われることが多い。昆虫は,成虫期の産卵場所の選択と,幼生期の発育のための食物選択において,特定の寄主を正しく選ぶ必要がある。成虫がある一定の寄主を選んで産卵することを保証されている機構として,寄主に含まれる産卵刺激物質(誘引物質)があるが,さらに寄主以外の植物,昆虫に含まれる忌避物質が産卵行動を阻害することによっていっそう強化されている。…

※「忌避剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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