デジタル大辞泉 「忌避」の意味・読み・例文・類語
き‐ひ【忌避】
1 きらって避けること。「徴兵を
2 訴訟事件に関して、裁判官や裁判所書記官に不公正なことをされるおそれのある場合に、当事者の申し立てにより、その者を事件の職務執行から排除すること。また、そのための申し立てをすること。→回避 →除斥
[類語]敬遠・回避・不可避・忌む・よける・避ける・いなす・
裁判官が事件と特殊な関係にあって、その裁判官が当該の事件について職務の執行をすれば、裁判の公正が妨げられる場合に、当事者の申立てにより、裁判で、その裁判官を当該事件の職務の執行から排除すること。裁判に対する国民の信頼を確保するために設けられた制度である。民事訴訟では、除斥原因以外の公正を妨ぐべき事情、たとえば裁判官が当事者と親友、仇敵(きゅうてき)である(敵対関係にある)とか、事件と経済的利害関係を有するなどの事情のある場合がこれにあたり、刑事訴訟では除斥原因のあるときにも忌避できる。忌避は当事者の申立てに基づき、裁判所の裁判によりなされる。忌避の裁判により初めて忌避の効果が生ずるのであるから、それまでに不公正な手続が進められないよう、忌避の申立てがあれば、原則として訴訟手続は停止される(民事訴訟法26条)。裁判所書記官、鑑定人、通訳人、仲裁人、参与員についても忌避が認められている。なお、刑事裁判において、2009年(平成21)5月から、裁判員制度が施行された。裁判員については、不公平な裁判をすると裁判所が認めた者は裁判員となることができない(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律18条)。このほか、一定の職業にある者は裁判員になれない(同法15条)。除斥原因とほぼ同様の事由に該当する者も、特定の事件について裁判員となることができない(同法17条)。
[本間義信]
法律用語。事件を担当している裁判所職員(裁判官,裁判所書記官)に裁判の公正・公平を疑わしくするような事情がある場合に,当事者(刑事訴訟ではさらに弁護人)からの申立てによって,当該職員を訴訟手続から排除する制度(民事訴訟法24条,刑事訴訟法21条等)。上記の〈事情〉とは,たとえば,裁判官が当事者の一方の親友であることなど,当該職員と事件との間に特殊な関係が存在することである。除斥も同じ目的の制度であるが,法律に定められた事由がある場合に当然に当該職員を排除する制度であるのに対し,忌避はそれを補完する意義をもつ(刑事訴訟では,除斥事由のある職員を当事者の申立てによって排除することも,忌避と呼ぶ)。忌避の申立てに対する裁判は,原則として,当該裁判官を除いた裁判官で構成する裁判所によってなされ,その裁判の確定まで,本来の訴訟手続は,急速を要する行為以外は,停止される。このため,当事者が,ただ訴訟を引き延ばすために,理由もないのに忌避申立てをすることもしばしばみられ,訴訟の病理現象の一つとされている。この場合,刑事訴訟では,忌避を申し立てられた裁判官自身が,申立てを却下することができる(刑事訴訟法24条)。なお,民事訴訟では,このほか,鑑定人および通事(通訳)に,誠実な職務遂行を妨げる事情がある場合にも,忌避が認められている。さらに,仲裁手続において,仲裁人が裁判官の除斥・忌避の事由に相当するとき,または仲裁手続を不当に遅延させたときにも,当事者は訴えを提起して忌避を求めることができる。
執筆者:上原 敏夫
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…裁判官,裁判所書記官等の裁判所の職員が,事件自体または当事者と特別の関係をもつ場合に,当該事件を担当させないようにして,裁判の公正を確保する制度(民事訴訟法23条,27条,非訟事件手続法5条,民事調停法22条,家事審判法4条,刑事訴訟法20,26条)。同じ目的のための類似の制度として,忌避があるが,除斥は,その原因が法律の規定で列挙されていること,および除斥事由があるときは当該裁判所職員は法律上当然に職務を執行できなくなること,の2点において,忌避とは異なる。 除斥原因とされるのは,たとえば,裁判官等が当事者(民事訴訟の原告・被告,刑事訴訟の被疑者など)の親族である場合,裁判官等が事件の証人・鑑定人となった場合,裁判官等が同じ事件につきすでに当該訴訟以前に行われた手続に関与していた場合などである。…
※「忌避」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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