忝い(読み)カタジケナイ

デジタル大辞泉 「忝い」の意味・読み・例文・類語

かたじけな・い【×忝い/辱い】

[形][文]かたじけな・し[ク]
もったいない。恐れ多い。「―・いお言葉」
身に受けた恩恵などに対して、感謝の念でいっぱいであるさま。身にすぎて、ありがたい。「ご好意のほどまことに―・く存じます」
恥ずかしい。面目ない。
百姓おほみたからおもへらくも恥づかし―・し」〈続紀宣命・五四詔〉
[派生]かたじけながる[動ラ五]かたじけなさ[名]
[類語]有り難いもったいない恐れ多いうれしい恐縮幸甚謝る謝するわびわび言平謝り陳謝謝罪多謝わびる恐懼恐れ入る痛み入る心苦しい身に余る過分かしこまる畏れる謹むしゃちほこばる固くなる縮こまる小さくなるまじめ腐る身の縮む思い畏怖

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精選版 日本国語大辞典 「忝い」の意味・読み・例文・類語

かたじけな・い【忝・辱】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かたじけな・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 高貴なものに対して下賤なことを恐れ屈する気持を表わす )
  2. 高貴なものが、いやしいものに接していることがもったいない。おそれ多い。恐縮だ。申しわけない。
    1. [初出の実例]「今者(いま)、天神之孫(みこ)(カタジケナク)吾処(あがもと)に臨(いでま)す。中心(こころ)欣慶(よろこび)、何の日か忘れむ」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    2. 「忝なく、きたなげなる所に、年月をへて物し給事、きはまりたるかしこまりと申」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. 尊ぶべきものと比べて恥ずかしい。わが身が面目ない。
    1. [初出の実例]「天の下の百姓(おほみたから)の思へらまくも恥づかし、賀多自気奈(カタジケナシ)」(出典:続日本紀‐宝亀三年(772)五月二七日・宣命)
  4. 分に過ぎた恩恵や好意、親切を受けて、ありがたくうれしい。もったいない。
    1. [初出の実例]「『さて、かかる物をなん給ひて侍る』とて、帯を見せ奉り給ふ。これはさ聞く御帯也。いとかたじけなくたまはせためるは」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    2. 「身にあまるまでの御心ざしの、よろづにかたじけなきに、人げなき恥ぢをかくしつつまじらひ給ふめりつるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)

忝いの語誌

( 1 )源氏物語」では、上位者への恐縮や感謝の気持を表わすが、「かしこし」ほど畏敬の念は強くない。狂言では、「ありがたい」がより敬意の高い語として用いられるようになる。
( 2 )「浪花聞書」によれば、近世大坂では、「ありがたい」という言い方はあまりなく、「かたじけない」を上位者に対して使っていたが、江戸では下位者に対してだけ使われたという。

忝いの派生語

かたじけな‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

忝いの派生語

かたじけな‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

忝いの派生語

かたじけな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かたじゅけな・い【忝】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙 ( 「かたじゅうけない」とも ) 「かたじけない(忝)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「うるしいうるしい、かたぢうけない」(出典:歌舞伎・いとなみ六方(1674頃)五)

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