愚かなる妻(読み)おろかなるつま(その他表記)Foolish Wives

改訂新版 世界大百科事典 「愚かなる妻」の意味・わかりやすい解説

愚かなる妻 (おろかなるつま)
Foolish Wives

アメリカ映画。1922年製作。三角関係を心理描写を加えて大胆に描いたメロドラマ《アルプス颪》(原題は《盲目の夫》1918)で監督としてデビューした,俳優出身のハリウッドの異色監督E.vonシュトロハイムの第3作。モンテ・カルロに集まる富裕階級の退廃をリアリズムの手法で痛烈に描き,第1次世界大戦後の社会の新しいモラル,とくに〈女性の権利〉を主張し,ハリウッドの風潮に衝撃をあたえた自作自演の映画である。シュトロハイムの〈自我〉と〈写実〉で貫かれたオリジナル版は,21巻・5時間,あるいは32巻・8時間といわれる伝説的な長尺で,約1/3に再編集されて公開されたが,画期的なサイレント映画の一つであり,また,ハリウッドのもっとも〈ソフィスティケート〉されたサイレント映画ともいわれている。現存する1時間50分のプリントは,イタリアで発見された11巻の断片的なフィルムを,シナリオによって復元したものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の愚かなる妻の言及

【シュトロハイム】より

…19年,処女作《アルプス颪(おろし)》を原作から脚本,美術,監督,主演に至るまですべて一人でやって完成したが,2万5000ドルの製作費が大幅にオーバーして10万ドルもかかり,以後1作ごとに〈金を使いすぎる〉監督という烙印(らくいん)を押されていくことになる。映画も映画づくりも従来のハリウッドにはなかった徹底した〈リアリズム〉で人々を驚かせ,とくに商業主義との妥協を拒絶した結果,どの作品も興行不可能な常識外の長尺となり,《悪魔の合鍵》(1919)に次ぐ《愚かなる妻》(1921)は18巻,《グリード》(1923)は42巻で8時間をこえるというすさまじさであった。いずれもずたずたにカットされ,《愚かなる妻》は2/3以下の10巻に,《グリード》に至っては24巻,18巻と短縮され,最終的には1/4以下の10巻に縮められて公開された。…

※「愚かなる妻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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