無色の色素前駆体(カラーフォーマー)を顕色剤で発色させる記録材料の一種。発色を加熱によって実現するカラーフォーマーを感熱色素、筆圧やインパクトプリンターなどの圧力で発色するものを感圧色素という。感熱紙や感圧紙(感圧複写紙)として普及している。感熱紙の用途は、ファクシミリの受信紙などが多かったが、現在では、乗り物の切符、レジのレシートなどの伝票類、カード類などに多用される。感熱色素は機能性色素のなかでもっとも生産量の多い素材の一つとなっている。
カラーフォーマーの代表的な化学構造をラクトン(環状エステル)構造をもつものは無色で、ビスフェノールAのような顕色剤にふれると、右側の発色型に変化する。発色型はラクトン型に水素イオンH+が反応してカルボキシ基-COOHを与えるとする表記が多かった。しかし、日本曹達(ソーダ)の柳田光広(やなぎたみつひろ)(1954― )らの研究によれば発色型のカルボニル基の赤外吸収が1640cm-1に現れるが、この値は-COOHよりも-COO-に近く、右側に示す両性イオン型構造をとると推定されている。発色の色調としては当初は青系統が多かったが、分子設計の手法により黒色が実現されている。感熱紙の応用展開として、顕色剤との反応を可逆的に行うリライタブル感熱記録、ならびに、ジアゾニウム塩とイエロー、マゼンタ、シアンの各カプラー(色素形成剤)との反応を利用したフルカラー感熱記録がある。感熱紙の素材はバインダーとよばれる接合剤とともに1枚の紙に塗布される。
に示す。左側の感圧紙では、類似骨格をもつカラーフォーマーと顕色剤がそれぞれマイクロカプセルに包まれて、2枚の紙の相対する面に塗布される。筆圧等によりカプセルが破れて発色する。従来のカーボン紙にかわる複写方式であるため、ノーカーボン紙ともよばれる。
[時田澄男]
『柳田光広著「感圧・感熱紙用色素」(時田澄男監修『エレクトロニクス用機能性色素』所収・2005・シーエムシー出版)』
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新