慕う(読み)シタウ

デジタル大辞泉 「慕う」の意味・読み・例文・類語

した・う〔したふ〕【慕う】

[動ワ五(ハ四)]
恋しく思う。懐かしく思う。「兄のように―・う」「遠い祖国を―・う」「灯火を―・って虫が飛んでくる」
離れがたく思ってあとを追う。「飼い主を―・って、どこへでもついて来る」「赤ん坊が母を―・って泣く」
目上の人の人格識見などにひかれる。憧れる。「その徳を―・って人が集まる」
[類語](1恋う偲ぶ愛する思う恋する好くめる焦がれる愛慕する思慕する恋慕する惚れこむれる見惚れる惚れ惚れ一目惚れ懸想けそう目尻を下げる思いを掛ける気がある惚れる惚れっぽい多情浮気移り気気が多い熱し易く冷め易い気移り心移り色気違いマダムキラーレディーキラー好き者助平すけべい漁色女好き男好きプレーボーイ女たらし女殺し好色好色家色好み鼻下長びかちょう手が早いちゃら浮気者艶福艶福家放蕩ほうとう蕩児とうじ遊蕩ゆうとう色魔女狂い男狂い/(2尊敬敬う尊ぶ崇める仰ぐ敬する畏敬崇拝敬愛敬慕敬仰景仰崇敬私淑傾倒心酔心服敬服

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精選版 日本国語大辞典 「慕う」の意味・読み・例文・類語

した・うしたふ【慕】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. あとを追う。
    1. (イ) 恋しく思ってあとを追う。離れがたい思いであとを追う。また、去るものを愛惜する。
      1. [初出の実例]「しらぬひ 筑紫の国に 泣く児なす 斯多比(シタヒ)来まして」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
      2. 「花の散り、月の傾くをしたふならひはさる事なれど」(出典:徒然草(1331頃)一三七)
    2. (ロ) 逃げる者などのあとを追う。追跡する。〔上杉家文書‐(天正六年)(1578)六月三日・上杉定勝自筆古案集・上杉景勝書状写〕
      1. [初出の実例]「但かやうのおちめを見て、わがあとをしたひてうたんと思はれば、かへりて武勇のよはきに似たり」(出典:随筆・戴恩記(1644頃)上)
  3. 恋しく思う。会いたいと思う。離れがたく思う。
    1. [初出の実例]「その時、玉日女命、石を以ちて川を塞(さ)へましければ、え会はずして恋(した)りき。故(かれ)恋山(したひやま)といふ」(出典:出雲風土記(733)仁多)
    2. 「思ひおく人のこころにしたはれて露分くる袖のかへりぬる哉〈西行〉」(出典:新古今和歌集(1205)羇旅・九八八)
  4. 徳やすぐれた行ないを範として、それにならおうとする。範とすべき物事について学ぶ。手本とする。
    1. [初出の実例]「弟子、法師の徳を慕(シタヒ)重むす」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)五)
    2. 「十炷香(じしゅかう)は山口円休に聞覚へ、有職の道者(みちしゃ)にしたひ」(出典:浮世草子西鶴織留(1694)一)
  5. ( 自動詞的に用いる ) 物が離れなくなる。付着する。
    1. [初出の実例]「大角太刀抜き見給ひ、是は刀に血(のり)が慕うてある」(出典:歌舞伎・丹波与作手綱帯(1693)一)
  6. ほしいと思う。
    1. [初出の実例]「小大進所生子息八人。皆女子也。仍慕男子一人之間」(出典:古事談(1212‐15頃)五)

しと・うしとふ【慕】

  1. 〘 他動詞 ハ行四段活用 〙 「したう(慕)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「恨の介思ひけるは、ここにて月日は過ぎじ、御帰りさをしとひなんと思ひ」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上)

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